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3.未知との遭遇と救われた男の子

後半シリアスあり!

 採取予定の薬草はヒールポーションの材料で支給された皮袋1袋分、質によって報酬金が上乗せされる。名目上ギルドで買い取るということになるので納品対象外の素材や余剰分はなどは普通に買い取ってもらえる。だから目的地が同じクエストを同時進行で受ける人は多い。その分達成失敗の違反金も多くなるのでそれで借金を抱えたり返済のために一時的だが労働奴隷になる人も少なくない。


「っとあったあった。じゃあ楽させてもらうか、[同種探知]。」


 [同種探知]は種類問わず持っているものと同じ物の場所がわかるようになるスキル、あのリーダーとメンバーには役に立たないと言われていたけど使いようによっては索敵にも使えるとまでは気づいてなかった。そもそもさせてもらえないんだけど。あとは反応に従って採取していくだけ。これなら次は2つ3つ同時に受けても問題なさそうだな。




「はぁ〜終わり!」


 場所がわかっても遠かったら時間もかかるよね。一応武器...は持たずに籠手で気絶させてその間に逃げるを繰り返して合間に採取、これが僕の採取クエストの『てんぷれ』。・・・『てんぷれ』?まあいいか。


「それにしても結構深くまできちゃったっぽい...」


 反省点、採取に夢中になって現在地を確かめない。ここら辺は多分Cランク以上推奨かな。早く見つかる前に戻らないと。


「ピィー...」

「ん?鳴き声?あっちか...」


 甲高い鳴き声...敵意はないかな。というか弱ってるねこれ。更に深くに入り込む必要があるのか...[気配察知]はできれば使いたくはないんだけど行くしかないか。[気配察知]は一定範囲内に生き物がいるかどうかわかる索敵にとても便利なスキル、なんだけど結構集中しなきゃいけないから疲れるのが難点。


「えーと...反応なし。もっと奥、反応なし、もっと奥...」


 これを繰り返してやっと反応があったとき、ふと気づくとこの森のどこかにあると言われている樹齢300年は超えているであろう大木があった。そして周りを見渡せば敵意はないが圧倒的な威圧感を放つドラゴン達がこっちを見ていた。・・・死んだ?これ。


「ピィ。」


 足元からあの時の鳴き声がしたので見てみると、手のひらサイズの真っ赤な鳥が横たわっていながらもこっちを見ていた。くっかわ。よく見てみると羽や足などいろんな箇所に怪我があった。


「このままだと可哀想だし、欠陥とは言っても気休めにはなるか。[ヒール]。」


 [ヒール]は回復魔法の初期中の初期にあたる。一応上位の[ハイヒール]、[メガヒール]、[ギガヒール]も使えるがいかんせん魔力量が足りない。これは回復魔法全般に言えるが回復量の目安の一つとして光の強さが変化する。僕の場合ちょっと元気になるだけでろうそくの光ほど。普通なら切り傷や擦り傷を治せるくらいでたいまつぐらいだ。そう、普通なら(・・・・)


「あれ、僕[ヒール]使ったよな?[メガヒール]ぐらいの光出てるんだけど...」


 そう、何故かめっちゃ光った。欠陥と言われてきた僕の回復魔法、しかもただの[ヒール]が『かいちゅうでんとう』...ぐらい光った!・・・あれ?なんかふらふらして...き...  ドサッ


 “条件を達成したのでサブクラス『テイマー』を付与。及びこれにより魔力量が増大、特殊体質の改善、『テイマー』付随スキルが付与されます。”


「うーん...ここは...?」

「あ、あるじ〜やっと目が覚めた!起きないんじゃないか心配したよ?」

「・・・え...?」


 いきなり倒れたところまでは覚えてる。理由はわからないけど[ヒール]に関係があるのは明らか。で、目が覚めたらあんなに小さかった鳥が僕の身長よりも大きくなってしかもその上に僕が寝ている状態。え?天国?すっごい触り心地いいんだけど?


「あるじ?今から説明するから落ち着いて聞いてね?」

「う、うん。」

「まず僕は朱雀。あるじの従魔だよ。あるじが僕に[ヒール]をかけてくれたでしょ?すっごい気持ちよかった!あ、そうじゃなくて、その後にあるじが倒れたまではしってると思うけどあるじって一回も魔物殺してなかったんだね。」

「・・・言われてみれば...」


 僕は武器が嫌いだ。いくら害をなす魔物でも事情があると思ってしまう。そして魔物を平気に殺すのも気分が悪い。大事な何かが消えてしまう気がしたから。だから僕は籠手を選んだ。殺さずに無力化するためには眠らせるか気絶させるしかなかった。パーティメンバーからは非難されたけどこれだけは絶対譲らない。一回でも殺してしまえば後戻りができない嫌な予感もあったから。そのためにたくさん練習した。どこを狙えば一撃で気絶させられるか、受け流すにはどうしたらいいか、攻撃を最低限の動きでどう躱せばいいか、間合いを詰めるためには、いろんなことをこなすために血の滲むような努力をした。でも、最後まで姉さんとリーラしか認めてくれなかった。


「魔物を一回も殺していない、魔物に回復魔法をかける、他にも細かい条件はあるけどそれらも達成済み。これらの条件を達成したからあるじはサブクラス『テイマー』を手に入れて僕が望んであるじの従魔1号になったってわけ。」

「・・・。」


 何も言葉が出てこない。嬉しさ?驚き?悲しみ?自分でも何故かわからない。涙が出てきたにも関わらず不思議と心は暖かかった。


「あるじ?辛かったの?泣きたい時は泣いて、寝たら楽になるよ?自慢の羽だから感触は保証するよ!」

「・・・ひっぐ・・・ありがとう・・・おやすみ...。」


 そうして心地よい羽に包まれ僕は眠りについた。親に抱擁されているような安心感と一緒に。

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