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死神 凛  作者: 真桑瓜
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人面犬


人面犬



                   1



「また来てますよ、あの人」

有名予備校『修琳館』の事務職員安野香澄が、先輩職員多田栄子に耳打ちした。

給湯室から見える応接セットのソファーには、痩せた白髪頭の男が座っていた。

二人がけのソファーの背に蝙蝠のように両手を広げて、目の前に座っている若い人気講師を見据えている。右手には短くなったタバコが紫の煙を立ち上らせていた。

「君の授業の仕方は、邪道だよ」その男は顔に笑みを浮かべながら言った。

「はあ・・・」横田は引き攣った笑いを顔に貼り付けたまま、気の抜けた返事をする。

「あんな奇抜な授業で生徒を集めるやり方は、僕は好きじゃないな」

「しかし、生徒には好評ですし、学業以外でも相談に来る生徒もいる・・・」

「そこだよ!」男はテーブルの灰皿で、タバコを揉み消した。「本来、予備校の講師に求められているのは、志望校への合格、それだけだ!」

横田はわざとらしく壁に掛かった時計を見た。「田隈先生、講義の時間ですのでこれで失礼します」

「お、頑張って来い。また、講師の心得を伝授しに来てやるからな」

「有難うございます。それじゃ・・・」横田は立ち上がると、大袈裟に田隈に一礼して講師控え室を出て行った。


「多田先輩、誰なんですあの人?」安野香澄が訊いた。

「香澄ちゃんは入ったばかりだから知らないわね。貴女と入れ違いに定年で退職した数学の講師田隈准一先生よ」

「へぇ、ここの講師だった人ですか?」

「そう、東大や京大に生徒をたくさん合格させたのが自慢なのよ」

「それで、横田先生にあんなことを」

「でも、生徒にはあまり人気はなかったわねぇ・・・」

「お〜い、栄子ちゃんコーヒーを淹れてくれないか」田隈が給湯室に向かって声を投げてきた。

「は〜い、ただいまぁ!」多田栄子が渋い顔をした。「ほら、まだここの職員のつもりでいるわ」「なんであの人、辞めてまで元の職場に来るのかしら?」

「知らないわ、きっと奥さんにも嫌われてて行くところがないんでしょ」

「迷惑な人!」

「定年後の男って、大抵ああゆうものよ」

「悲しいですね・・・男の人って」



                   2




ある日田隈は、自宅近くの堤防の上を歩いていた。定年になってする事もなく家でゴロゴロしていたら、妻に『掃除するから散歩にでも行って来て!』と言われたのである。

「俺は今まで家族の為に、身を粉にして働いてきたんだぞ。それなのにあんな邪険な言い方はないだろう・・・」

ブツブツ言いながらふと河原の草叢を見ると、枯れススキの陰から茶色の大きな犬が顔を出した。

「ゴールデンレトリバーか?」

田隈が立ち止まって見ていると、犬は草叢から出て全身を現した。日に当たると体毛が本当に金色に輝いて見えた。

「なるほど、それでゴールデンか。しかし、飼い主は何処だ?」

周りを見回してもそれらしい人影はいない。犬は人懐っこい性格らしく、トコトコと歩いて田隈のそばまでやって来た。そして、首を傾げて田隈を見上げた。

「お前、野良か?」田隈はしゃがんで犬の首を確かめた。長い毛に隠れていた首輪が見える。

「なんだ、首輪をしているじゃないか。ご主人様は何処だ?」

犬はまだ田隈を見つめたままだった。

「お前も俺と同じなのか・・・そうだ、いいものをやろう」そう言って田隈は上着のポケットを探ってクッキーを取り出した。昨日喫茶店でコーヒーを飲んだ時、サービスでついて来たものだ。

犬はそれを美味しそうに食べた後、田隈を見てワン!と吠えた。

「意地汚いやつだなぁ、もう無いよ」田隈は笑って犬の頭を撫でてやった。

「さて、掃除も終わった頃だ、そろそろ帰るか」田隈は立ち上がり堤防の道を自宅に向かって歩き出す。すると犬が後をついて来た。

「待て!」犬が止まった。「お座り!」犬はよく訓練されているらしく、素直に従った。

「ほう、よく訓練されている」田隈は立ったまま犬の目を見下ろした。「ここで、飼い主が来るまでおとなしく待っていろ」犬はまた首を傾げた、その目が少し寂しげに見えた。




                    3



「お〜い、栄子ちゃんコーヒーのおかわりもらえないかなぁ!」

多田栄子は深い溜息を吐いた。講師陣は皆授業に行ってしまい、残った事務員は明日の共通テストの準備で大忙しなのである。

「先輩、私が行って来ます」安野香澄は栄子に小声で言って席を立つと、栄子がすまなそうに手を合わせた。

「おっ、すまないね・・・君、最近よく見る顔だけど新入職員かい?」

「はい・・・」香澄はなるべくつっけんどんに言って、コーヒーカップを取り上げた。

「名前は?」

「安野です・・・」

「あ、そう。僕は田隈、宜しくね・・・僕の名前知ってるよね?」

「いいえ、存じ上げません」香澄は栄子から聞いていたが、知らないふりをした。

「あ・・・そう」

香澄は新しいコーヒーを淹れる為に給湯室に入った。

「なに、あの人。そんなに有名人なの!」香澄が毒付いた。

香澄がコーヒーを淹れる間も、田隈は何人かの職員に話し掛けていた。


「はい、どうぞ・・・」香澄は田隈の前にコーヒーカップを置いた。

「有難う。ところで君、僕の事を話しておこうかね。僕は三月まで此処にいた数学の講師でね、有名大学にそりゃたくさんの生徒を合格させたもんだ。東大なんか君・・・」

「そんな話聞きたくありません!」香澄の我慢も限界だった。「あなた、みんながあんなに迷惑しているのが分からないんですか?」

「え?」

田隈は、今の今までそんな事一度も考えた事はなかった。自分は人から必要とされていると思っていたのだ。

「いい歳をして、過去の自慢話を退職した職場にしに来るなんて最低です!」

香澄はドン!とテーブルに手を突いて、田隈を睨みつけた。

「い、いや・・・そんなつもりじゃ」田隈はタジタジとなった。

興奮した香澄は、急に目から大粒の涙をボロボロと溢し、さっと身を翻して部屋を出ていった。

場の空気が固まった。

「あ、ぼ、僕も用事を思い出した。・・・じゃ、じゃあ、また来るから」いたたまれなくなった田隈はそそくさと立ち上がり、愛想笑いを浮かべてドアを開けて出て行った。




「ああ、怖かった。全く近頃の若い者は年寄りを敬う事を知らん・・・」田隈は独り言を呟きながら、予備校のビルを出て大通り沿いを東に向かって歩き出した。

暫く歩いて左に曲がると、港へ続く狭い道路に出た。コンテナを積んだトラックがひっきりなしに通っている。

田隈は内心傷付いていた。自分は予備校の為生徒の為に、家庭も顧みず一所懸命働いてきたのだ。それだって家族を養う為だから誰にも文句を言われる筋合いは無い。それなのに・・・

気がつくと埠頭に立っていた。暮れなずむ空にカモメが一羽舞っている。

「ふぅ・・・」田隈は深い溜息を吐いた。家に帰って妻の冷ややかな態度に接すれば余計に落ち込む事は目に見えている。

「このままどこかへ蒸発しちまおうか。そうすれば少しは心配してくれるかも知れない」

「いや、そうじゃない。あの娘の言った通り、俺はみんなに迷惑を掛けていたのかも知れない。俺はこれでも数学の講師だったんだ。もっと理性的に考えなければ」

「よし、帰って妻と話し合おう!」

そう心に決めて、田隈は踵を返して来た道を戻りはじめた。

「おや?」その時田隈は、反対側の歩道に動くものを見つけた。「あの時の犬じゃないか、なぜこんな所に?」

そう思った時、犬がこちらに気づき目と目が合った。犬は千切れるほど尻尾を振りながら、猛ダッシュで田隈目指して駆けて来る。

「あっ!馬鹿、来るな!危ない!」叫ぶと同時に、田隈は道路に飛び出していた。

クラクションがけたたましく鳴り、橙色のスモールライトを点けたトラックが、右目の端に映った・・・






                    5





枯れ草の匂いが田隈を包んでいる。

そっと目を開けるとすっかり枯れてしまったススキの穂が風に揺れていた。

耳を澄ますと水の流れる音も聞こえて来る。

「ここは何処だ?」手に力を入れて身を起す。なんだかバランスが悪い。這うようにしてススキの草叢を出た。

「見覚えのある景色だが・・・」そこは田隈の自宅に近い川の堤防だった。

「なぜこんな所に?」朧げな記憶を辿ってみる。「確か港に続く道であの犬を見かけて・・・あっ!トラック」

田隈は思い出した、犬を抱きかかえた瞬間目の前にトラックのバンパーが迫って・・・「それから急に体が宙に浮いたんだ」

見下ろすと俺と犬が抱き合って空に向かって上昇しているではないか、まるで『フランダースの犬』のネロとパトラッシュのように。

「俺は死んだのか?」遺体はトラックの陰で見えなかったけれど、状況から考えるとそうとしか思えない。「さすが数学の教師だな、論理的な思考だ!」

自画自賛していると、疑問が浮かんだ「すると、あの犬はどこへ行った・・・?」

何気無く、地面に着いた手に目をやった。

「わああぁぁぁぁぁぁっ!なんだこの手は!」

良く見ると、腕は金色の毛で覆われ掌には肉球が付いている。

「そんなはずあるもんか!俺は絶対信じないぞぉ!」




慣れない足取りでやっと家に帰ると、玄関の扉に『忌中』の張り紙がしてあった。黒白の幕の前には折りたたみの長テーブルが置いてあり、修琳館の女子職員が二人受付をしている。栄子と真澄だ。

時折弔問客が訪れるが、教え子の姿は無い。

しめやかな読経の声が流れ、傍目にも寂しい通夜の夜だった。線香の香りが鼻を突く。

「在職中ならもっと沢山の人が来たはずなのに・・・」

田隈はそっと庭に回ってみた、開け放たれた縁側の部屋に喪服姿の妻がいる。

妻は棺の前で項垂れて泣いていた。

「あの棺の中に、俺がいるのか」

独立した長男と一昨年嫁に行った長女は、まだ到着していないようだった。

「あいつら、何をしているんだ!早く帰って来て母さんのそばにいてやらないか!」

飛び出して行って慰めてやりたい衝動に駆られたが、この姿ではどうにもならない。

諦めて、田隈はもう一度玄関に戻った。

「私があんな事を言ったから・・・」香澄が小さく肩を震わせている。

「香澄ちゃんの所為じゃないわ」栄子がそっと囁いた。

「だって・・・」

「田隈さん犬を助けようとしたんだわ。トラックの運転手がそう証言したって警察の人が言ってたじゃない」

「そんな優しい人だなんて知らなかったから・・・私」

「そんなに自分を責めないで」

田隈は思わず口を挟んだ。「そうだ、あんたの所為じゃない、俺は純粋に犬を助けたかっただけなんだ!」

二人が一瞬固まった。二つの顔がゆっくりとこっちを向いた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・!!」

悲鳴を聞きつけて、家の中が騒がしくなった。誰かが慌てて飛び出して来る気配があった。

田隈は犬の本能のままに、反射的に逃げ出した。

人面犬の噂が流れたのは、それから間も無くの事だった。






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田隈がその事を知ったのは、少し後だった。

その事とは、『人面犬とは自分である』と言う事実だ。それまで田隈は、自分は全く犬になってしまったのだと思っていた。

ある晩、田隈はいつもの様に高級レストランの残飯を漁っていた。腹が減っては戦はできぬ、背に腹はかえられないのだ。

幸い、犬の身体は少々古い物、汚い物を食べても腹を壊さない。それに高級レストランの残飯は、田隈が日ごろ食べていたものよりずっと美味かった。

その日もいつものように腹一杯食べて帰りかけていた時、レストランの裏口が開いて従業員が出て来たのである。

「あっ!こらお前か!いつもうちのゴミ箱を荒らしている野良犬は!」従業員は怒鳴りながら、立て掛けてあった箒を持って追いかけて来た。

田隈は腹が一杯で走れない。そこで徐に振り返って言った。「ほっといてくれ!」

従業員は惚けたように立ち止まり、次の瞬間絶叫した。「うわぁ!人面犬だぁぁぁぁぁ!!!」




なんとも奇妙な姿である。犬の体に人間の首、これほどチグハグなものはない。

田隈はカーブミラーに映った自分の姿を見て絶望した。「これなら、犬の姿の方がまだマシだ・・・」

とぼとぼと歩いていると、後ろから声が掛かった。「田隈さん・・・」

振り返ると安野香澄であった。

「あれから、ずっと探していたんですよ。レストランの近くで人面犬を目撃したという噂が立って、時々見に来ていたんです。そしたら悲鳴が聞こえて来て・・・」

「なぜ探していたんだ?」

「一言お詫びが言いたくて・・・」

「なんのお詫びだい?」

「私があんな酷いことを言ったから、田隈さん自殺しようとしてそんな姿に・・・」

「違う違う、君の言ったことは関係ない。そりゃ多少は傷付いたさ、でも・・・むしろ自分の馬鹿さ加減に気づかせてもらって、感謝していたくらいだ」

「嘘です!」

「嘘なんかじゃない!あの日も妻とちゃんと話し合うつもりでいたんだよ。そしたら犬が急に飛び出して来て・・・気がついたらこんな姿になっちゃってたんだ」

「ほ、本当に?」

「本当だよ、嘘なんか言っても仕方が無いじゃないか」

「だったらなぜ成仏しないでこんなところを彷徨っているんです?」

「それは僕にも分からない。きっと、犬と僕の魂が混じり合っちゃって、どこに行ったらいいのか分からなかったんだろうな」

「じゃあ田隈さん、本当は成仏したいんですね?」

「そりゃそうさ、いつまでも残飯漁ってるわけにもいかないからね。それに、もし捕まれば大変な騒ぎになる」

「良かった!じゃあ私と一緒に行きましょう」

「どこに?」

「妙心館です」

「妙心館・・・なんだいそれ?」

「今年入校してきた武本敦君という生徒がいます。彼が通っている武術の道場が、その手の事を扱っているそうなんです」

「その手の事?」

「ええ、妖怪や怪異の事」

「変な道場だなぁ」

「最初はそうじゃなかったそうなんです・・・敦君本人は妖怪を否定しています」

「ふ〜ん・・・で、そこへ行けばなんとかなりそうなのかい?」

「分かりませんが、今はそれしか思い浮かばなくて」

田隈は暫く考えていたが、こうなれば一か八か行くしかない。

「分かった、君のいう通りにするよ」

「良かった、じゃあ明日の夜迎えに来ます。それまで捕まっちゃ駄目ですよ」

「僕はそこの河原のススキの中にいる。来たら声を掛けてくれ」

「了解です。じゃあ・・・」

安野香澄はほっと胸を撫で下ろし、田隈に手を振って帰っていった。



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「ここよ、敦君」香澄は堤防で立ち止まって敦に囁いた。

敦は東京に住む武本源龍という空手家の孫である。福岡の大学を受験する傍、無門平助の所へ稽古に通っていた。否、無門平助に空手を学ぶ為、福岡の大学を志望したのである。

「安野さん、疑う訳じゃないんですが本当に人面犬なんているんですか?」真面目な顔で敦が訊いた。

「疑ってるじゃない。いるわよ、人面犬」

「僕は世の中に不思議な事なんて無い、と思っている人間だから半信半疑なんですよ・・・あ、そうだ、最近道場に綺麗な女の人が出入りしているのは不思議なんですけどね」

「いいわよ、証拠を見せてあげるから」香澄はススキの草叢に向かって田隈を呼んだ。

「田隈さん、安野です。約束通り迎えに来ました!」

草叢がザワザワと鳴って田隈の顔が覗いた。「シッ!大きな声を出さないでくれ。さっき網を持った男が四、五人ウロウロしていたんだよ。きっと僕を捕まえるつもりなんだ。

「えっ!それは大変、急がなくっちゃ!早く出て来てください」

田隈が草叢からのっそり現れた。

「わっ!本当にいるんだ人面犬、驚いたなぁ」敦がつい大声を出した。

「大きな声を出すなと言ってるだろ!・・・安野君、誰だ、その若いのは?」

「あ、ご紹介します、昨日お話しした武本敦君。これから妙心館へ案内してくれます」香澄が小声で囁いた。

「失礼しました。武本敦といいます。これからご案内しますが、これを被ってもらえますか?」敦がフード付きの赤い犬用コートを取り出した。

「返って目立ちはしないかね?」

「これしか無かったんですよ、僕の知り合いが持っているのは」

「顔が見えるよりいいですよ」香澄が言った。

香澄と敦は田隈にコートを着せてフードを被せた。

「じゃあ、行きましょう」

三人、否、二人と一匹は堤防の道を妙心館に向かって歩き出した。

「車があれば良かったんですが・・・」敦が申し訳なさそうに言った。

「遠いのかい?」

「いえ、三十分ほど歩けば着きます」

「いいよ、我慢するさ」

その時。

「待てっ!そこの犬を連れた二人、待つんだ!」手に手に網や袋を持った五人の男が追って来た。

「先に行って・・・」香澄に囁いて敦が振り返った。

「なんの御用ですか?」

「その犬のフードを取ってもらおうか!」

「なぜです?」

「俺達は人面犬を探している。ちょっと確かめさせて貰う」先頭の男が言った。

「うちの犬を疑っているんですか?」

「だから、確かめるだけだって言ってるだろ!」

「お断りします!あなた方にそんな義理はありません」

「なんだとぉ!」

五人の男が敦を圧するように前に出た。

「香澄さん逃げて!」

「敦君!」

「大丈夫です!早く行って!」

香澄と田隈が走り出した。

「お前達は女と犬を追え!」さっきの男が三人に指示した。

三人が香澄と田隈を追って駆けて行った。残った男が敦の背後に回る。

「チッ!人数が多すぎる」敦が唇を噛んだ。

背後の男が不用意に敦に抱きついて来た。間髪を入れず敦の肘鉄が飛ぶ。

鳩尾に肘を喰らった男が、蹲るようにして地面に倒れ込んだ。

「このっ!」正面の男が網の柄で殴りかかって来た。敦が上段受けで受け止めると柄はポッキリと折れてしまった。驚いた男が後退さる。

先に行った三人が異変を察して立ち止まった。

「網だ!投網を使え!こいつを動けなくしろ!」男が怒鳴った。

急いで引き返して来た男達は、敦を遠巻きに囲み、ジリジリと間合いを詰めて来る。

「今だ!」

左右から投網が飛んで来て、敦の躰を拘束した。

「袋を被せてロープで縛るんだ!」

敦は頭から袋を被せられロープでぐるぐる巻きにされて河原に転がされた。

「くそっ!俺をどうする気だ!」敦が吠えた。

「悪く思うな。そのうち誰かが通りがかって助けてくれるさ。俺達ゃ、人面犬を見世物に出して大儲けがしたいだけなんだよ」

「車で追うぞ!」

男の声がして、足音が遠ざかって行った。




「ここはどこだ?」突き当たりで足を止めて田隈が言った。

「さあ、無茶苦茶逃げて来たから私にも見当がつきません」

香澄は辺りを見回したが、見覚えのある景色では無かった。

「どこかの住宅街みたいだけど・・・」

その時、ギリギリ車が通るような細い路地に、軽トラックが一台入って来た。

「あっ!いたぞ、あいつらだ!」トラックの荷台に乗っていた男が叫んだ。

「わっ、見つかった」

「この赤いコートがまずかったんじゃないのか?途中で何人も人に出会ったからな」田隈が言った。

「もう遅いですよ!」

「逃がさんぞ!」荷台の男達が飛び降りた。

「田隈さん!そこの家の庭に飛び込んで下さい!垣根越しに隣に逃げられるはずです!」

「君は?」

「もう無理です!この路地は行き止まりです!」

「いや、僕も残って戦・・・」

「GO!」香澄が勢いよく庭を指さした。

「わっ!」悲しい犬の習性であった。田隈は反射的に指さされた方に駆け出す。

「それでいいのよ・・・さて」香澄は大きく息を吸った。「キャー!誰かぁ!助けてぇ!殺されるぅぅぅ!!」

「よ、よせ!人聞きの悪い。俺たちはただお前に話が聞きたいだけだ!」

周りの家の玄関が開く音がして、人が出てくる気配があった。

「チッ!」男達は荷台に飛び乗った。「引き上げるぞ!」

軽トラはバックして方向を変え、猛スピードで走って行った。

「ふぅ、助かった・・・心臓に悪いわぁ」




田隈は隣の家の垣根の隙間から、猛スピードで走り去る車を見た。

「安野君は乗っていないようだな・・・よし、あいつらの居場所を突き止めよう」

垣根から飛び出し、田隈は全速力で軽トラを追跡した。

荷台の男達は、振り落とされないようにしっかりと荷台にしがみついていて、後ろを振り返る余裕もない。

軽トラは、スピードを緩める気配もなく大通りを北上して行く。

突然、けたたましくサイレンを鳴らして、ビルの影から白バイが飛び出して来た。

「そこの軽トラ、止まりなさい!」警官がマイクで命じた。

軽トラは警告を無視してスピードを上げた。

「コラ!止まらんか!」

荷台の男が、積んであった荷物を白バイに向かって投げつけた。

「わぁぁぁぁぁぁ・・・!!」絶叫と共に白バイは転倒し、数十メートル滑って停止した。


「な、なんて奴等だ!」田隈は激怒した。「よし、懲らしめてやる!」

そう思った途端、田隈のスピードがグンと上がった。「あれ!俺、こんなに早く走れたっけ?」

しかし、今はそんな事考えている時ではない無い。あっという間に軽トラと並走すると一気に追い越した。

その時、コートのフードが風圧で捲れ、田熊の顔を露わにした。

田隈は、運転している男を振り返り、ニッと笑った。

「わぁ!」目の合った男は躰が硬直して急ブレーキを踏んだ。

甲高いブレーキ音を響かせて、軽トラは横転し、中央分離帯に激突した。

車は大破し、黒い煙を上げ始めた。






その頃敦は、下校途中の女子高生の手によって救出されていた。

面目を失った敦は、すっかり意気消沈し妙心館の玄関を開けた。


「ほう、そんな事があったのか。しかし、無事で何よりじゃった」平助が俯いた敦に声を掛けた。「して、その事務員と犬の行方は分からぬのじゃな?」

「はい、方々探して住宅街に逃げ込んだところまでは突き止めたのですが・・・」

「他には?」

「女の悲鳴と、猛スピードで走って行く軽トラを目撃した人はいました」

「ふ〜む・・・」

その時、玄関の開く音がして女の声が聞こえた。「あのぉ、ここに武本敦という人は来ていませんか?」



8





「はい、それからその家の人が警察に電話してくれて、神田町の交番で事情を話しました。あ、さすがに人面犬だとは言えませんでしたが・・・」香澄がその後の経過を語った。

「そこで、ここの場所を聞いたのじゃな?」

「はい、意外と近いのでびっくりしました。あ、お巡りさんがあそこの先生は名人だって言ってましたよ」

「その交番の巡査なら面識がある。以前稽古に来ておったからの」

「で、先生、人面犬の話信じて頂けたでしょうか?」

「どう思う、凛?」

平助が天井を見上げて訊いた。

「あり得る事だと思います」いきなり背後から声がした。

「わっ!びっくりした!」敦が2センチほど飛び上がる。「い、いつの間に入って来たのですか?」

「私も全然気づかなかった!」香澄も目を丸くしている。

凛がにっこり微笑んだ。「最初から聞いていましたよ」

「え、嘘だ!誰もいなかった筈です。いくら僕が鈍くてもそれくらいは分かる」

「敦、お前には話しておらなんだな」平助が言った。

「え、なんのお話です?」

「その女人は死神なんじゃ、人間では無い」

敦は一瞬訳が分からなかった。「し、死神って?」

「死神は死神じゃ、他に言いようはなかろう」

「正確には、元死神ですけど」凛が訂正した。

「じゃから、人間のように気配を感じぬのじゃよ」

「は、はぁ・・・」

人面犬を目の当たりにした敦は、平助の話が嘘だとは言えなかった。

「話を戻しますが・・・」凛が言った。「昔から人面獣身または獣面人身、それにキメラのように沢山の獣が合体した妖怪は存在しました」

「ほう、どんな妖怪じゃ?」

「そうですね、濡れ女、犬神、猫又、中国の虎神、キメラでは韓国の金翅鳥、日本の鵺などがいます、西洋ではペガサスが有名ですね」

「あ、ペガサスなら知っています。そうか、それなら人面犬だって有り得るわけですね」

香澄が納得したように頷いた。

「そうよ、だから死神がいたって不思議はないでしょう、敦君?」凛が敦に微笑んだ。

「う〜ん、そこのところの関係性は良く分かりませんが・・・でも、もしそうだとしたら、この道場にこんな綺麗な人がいる理由が頷けます」

「どうしてじゃ?」

「だって、先生、そろそろお迎えの時期なんでしょう?あ、でもまだ死なないで下さいね、僕、大学に入ったら本格的に先生に空手を習わなくちゃなりませんから」

「失礼なやつじゃ、儂ゃまだ死にゃせんわい!」

「そうじゃないのよ敦さん、これには色々と事情があってね・・・」凛が言いかけた。

その時、ガラガラと玄関の開く音がした。

「たでま戻ってまいりあんした」

「あ、熊さんだ!」敦が言った。

「え、今度は熊?」

「違う違う、人間の熊さんだよ・・・熊さんお帰り!」

「おっ、敦、来とったとね」熊さんがのっそりと入って来た。

「はい、皆さんに頼み事があって・・・」

「まった!」熊さんが敦の話を手で制した。「あとで聞くばい。そいよか、そこの大通りで大事故のあっとりますたい!」

「どんな事故じゃ?」平助が訊いた。

「白バイと軽トラックが横転しておいもした」

「して、怪我人は?」

「さすがに白バイ隊員は訓練されちょりもんで、かすり傷ですたい。ばってん軽トラに乗っておった五人はいけまっせん・・・」

「五人?軽トラに五人か?」

「じゃっど。道路交通法違反たい、そいで白バイに追いかけられたっちゃなかろか?」

「ふむ、有りそうな事じゃ」

「じゃっどん、不思議な事がありもすったい」

「なんじゃ?」

「目撃者ん話じゃと、赤いマントを翻した犬が、一緒に走っておったんじゃそうな」

「それよ!」香澄が大声を出した。

「おお、びっくりした!なんね、お客さんの来ちょったとね?」

「はい、僕の通う予備校の事務員さんで安野香澄さんです。実は、頼みとは安野さんのことで・・・」

「今、仰った大事故と関係があるのではないかと思います!」

「ほんなこつな!」


                     9



「どうやら、間違いなかごたるな」熊さんが腕組みをして言った。

「だけど、どこを探せばいいんだろう?」敦が首を捻る。

「きっと、ススキの草叢に戻ってくると思います」香澄が言った。

「そうね、他に行くところはなさそうね」凛が同意する。

「きっと、目立たんように夜中に戻って来るつもりじゃろう」

「そんなら凛、今夜行ってみようかい」

「はい」

「私も行きます!」香澄が言った。

「気持ちはわかるけど、お家の方が心配するわ。ここは、熊先生と私に任せて」

「じゃっどん、その人面犬、おい達のこつば信用してくるっじゃろうか?」

「僕が一緒に行きます。僕なら面識がありますから」敦が言った。

「おお、そいがよか!」

「こちらにお連れする時の為に、黒い頭巾を持って行きましょう」

「頭巾なんぞあるのかい?」

「それまでに私が縫っておきます」

「凛はなんでんでくっとじゃな」

「はい、これでも一応女ですから・・・」




                   10





「ここです、人面犬が住んでいたのは」正に日付が変わろうという時間帯、敦と熊さん、凛の三人は堤防下の河原に立った。

「敦、呼んでみんね」懐中電灯で枯れ草を照らしながら、熊さんが言った。

「はい・・・人面犬の田隈さ〜ん、いますか?」敦は人に聞かれないよう小声で呼んだ。

暫く待ったが返事が無い。

「もういっぺんじゃ」

「田隈さ〜ん、いませんかぁ・・・」

やっぱり返事は返って来ない。

「どうしちゃったんだろう、戻ってないのかなぁ?」

「しょんなか、もう少し待っちみようたい」

小一時間、三人は河原の草の上に座って田隈を待った。

「やっぱり戻って来ないようですねぇ」敦が諦めかけた時、凛が唇に人差し指を立てた。

「足音が聞こえます、どうやら帰って来たようですね」

耳を澄ますと確かにトットットッと規則正しい足音が聞こえて来る。

堤の上で足音が止まった。「誰だ君達は」

熊さんが声のする方に懐中電灯を向けた。そこには、紛う方なき人面犬がいた。

「わっ、眩しいじゃないか!」

「あっ失礼致しもした!」熊さんが思わず灯を消した。

「まさか昼間の奴らの仲間じゃ・・・」

「田隈さん僕です!」

「おや?聞き覚えのある声だ」田隈が言った。「それじゃあんたらの顔が見えん、灯を点けていいから自分達を照らしなさい」

熊さんが田隈の声に従った。

「それで良い。おお、やはり君は昼間の・・・」

「そうです、武本敦です」

「武本君、安野君は無事か!」

「はい、今頃自宅でぐっすりです」

「良かった、本当に良かった!」

「田隈さん、心配しましたよ」

「それはこっちのセリフだ。君は、投網に掛って身動きが取れなくなっていたからな」

「面目ありません・・・」

「いや、有難かったよ、僕の為に闘ってくれて」

「いえ、そんな・・・」

「そちらのお二人は?」

「は、妙心館の前田行蔵ち言いもす、お見知り置きを」

「おお、安野君が連れていってくれると言っていた、武術道場の」

「そうでごわす」

「私は妙心館にお世話になっている、死神の凛と申します」

「何、死神ですと?」田隈が驚いて凛を見た。

「はい、元・・・ですけれど」

「その元死神さんがなんの用事でここに?」

「こう見えても、私は三途の川では多少の融通が効きます。あなたの成仏のお手伝いが出来ればと思いやって参りました」

「こんな姿になっても、人並に成仏はできるもんですかなぁ?」

「さぁ、私にも確約は出来ません。でも、相談出来る方達ならおられます」

「ほう、それはどなたかな?」

「田隈さん、こんな所では怪しまれます。話は妙心館へ行ってから、と言う事にしませんか?」敦が提案した。

「それもそうだな。では、行くとするか」

「そいがよか。じゃっどんそん前にこれば被って貰いたか」熊さんが懐から黒い布を取り出した。

「それはなんですかな?」田隈が訊いた。

「頭巾です。こん凛が縫いもした」

「そうですか、凛さんありがとう。この赤いコートは早く脱ぎたかったからね、兎に角目立ってしょうがない」

「すみません・・・」敦がすまなそうに頭を下げた。




                     11



「私は愛されたかったのだと思います・・・」

その夜、平助の居室でぐっすり眠った田隈は、翌朝、安野香澄を交えた妙心館の面々の前で切々と語り始めた。

「小さい頃から、人に褒められる為に全力を尽くしました」

「積み木をうまく積み上げると、歓声が上がります」

「言葉を一つ覚えるたびに頭を撫でててもらえました」

「試験でいい成績を取ると好きなものを買って貰えたし、志望の大学に合格した時は、両親は泣いて喜びました」

「私は頑張れば褒めてもらえると思っていたのです」

「ところが、就職した途端その幻想はガラガラと音を立てて崩れていきました」

「どんなに頑張っても褒めて貰えないのです」

「予備校に就職した私は、成績の悪い子を一人でも多く合格させようと躍起になりました」

「その為に自分の時間を割いて、個人指導もしましたし、個人的な悩みも聞いてやりました」

「しかし、合格率はなかなか上がりません。一時は本当に絶望しました」

「でも、ある時私は気付いたのです。成績の悪い子を二流や三流の大学に押し込むより、成績の良い子を志望校に合格させる方が簡単で喜ばれる事に」

「私は方針をシフトしました。成績の悪い子を切り捨てたのです」

「合格率は徐々にアップし、私は有名大学合格請負人になりました」

「そこで初めて褒めて貰えたのです」

「それからの私は全く鼻持ちならない人間だったでしょうね。自分の成果を自慢し、人から評価される事を至上の喜びとしていたからです」

「ところが、定年が近付くにつれ、私の評価にも翳りが見え始めました」

「若い先生が台頭して来て、私のやり方は通用しなくなって行ったのです」

「なんとか巻き返そうと努力しましたが、最新機器を使いこなす先生達にはどうやったって敵いません」

「そうこうしている内に、私は定年を迎えてしまいました」

「毎日同じ時間に起きて、同じバスに乗り、同じ職場で全力を尽くす。そんな生活がある日ぷっつりと途切れたのです」

「定年になったら、あれもしよう、これもしようと思っていたのに、いざ時間が出来ると何もする気が起きません」

「目の前に、手付かずの膨大な時間があると言うのにです」

「私は途方に暮れました。私は自分の為に時間を使うことが出来なくなっていたのです」

「今まで、人の為に時間を使う事が自分の喜びだと思っていました、いや、そう思い込もうとしていたのでしょう」

「気がつけば、あれだけ掛かって来ていた生徒からの相談の電話も、一本もかかって来なくなっていました」

「勿論、家庭のことを顧みなかった報いとして、家庭に私の居場所はありません」

「私の行き場は、長年勤めて来た職場しか無かったのです。あれだけ家族のように接して来た仲間なら、私を受け入れてくれると思っていたのですが・・・」

「しかし、それは間違いでした。職場の仲間は仕事あっての仲間なのです」

「薄々感づいてはいたのです、でも認めたくなかった。それをはっきりと知らしめてくれたのが安野君だったのです」

「私は何をやっていたのでしょう?妻に寂しい思いをさせたままで、毎日昔の職場に入り浸って」

「葬式の時、私の棺の前で泣いている妻を見て愕然としました」

「こんな姿になったのも、天罰なのでしょうね」


語り終えた時、田隈は涙を流している自分に気がついた。

「泣いたのなんて、何年振りでしょう・・・」

「田隈さん・・・私」香澄が唇を振るわせた。

「もう何も言わなくても良い。君の所為ではないよ」

香澄は両手で顔を覆って泣いた。

「田隈さん、日本の社会は貴方のような不幸な人を沢山輩出して来ましたのじゃ。会社という家族的組織の柵に縛られて、本当の家族を蔑ろにしてしもうた」平助が言った。

「じゃっど。やっと自由になった途端、そん自由が今度は自分ば苦しめるなんち、こんな不幸なこつはなか」

「なんだか勉強するのがバカらしくなって来たなぁ」敦が呟いた。

「馬鹿もん!お前はしっかり勉強してこんな世の中を変えにゃならんのじゃ!」平助が大喝した。

「うへぇ!藪蛇だっ・・・」

「何かよい考えはないかの?」平助が凛を見遣った。

「はい、奪衣婆に相談してみましょう。しかし、あの事故で五人の命が奪われました」

「私は地獄へ落ちても構いません」田隈が言った。「ですが、この犬に罪は無い」

「うむ、その通りじゃ」平助が頷いた。

「分かりました。兎に角今から行ってみます」

「よし、おいも行くぞ」熊さんが言った。

「いえ、ここから先は私の仕事です」凛が決然として言った。「人間にできる仕事ではありません」

「じゃっどん・・・」

「餅は餅屋、どうかお任せ下さい」有無を言わせぬ言い方だった。

「むむぅ、そこまで言うとなら・・・悔しかがしょんなか」

凛が立ち上がって田隈を促した。「田隈さん、参りましょう」

「お手数をかけますな」

「田隈さん、お別れですね」目を赤くしたまま香澄が言った。

「世話になったね安野君。呉々も自分を責めるんじゃないよ」

「はい、有難うございます・・・」

「武本君も有難う」

「いえ、お気を付けて」

「凛も気を付けて行くのじゃぞ」平助が言った。

「はい、では行って参ります」

凛と田隈は、連れ立って玄関を出て行った。

「男前な死神さんですね・・・素敵」香澄が呟いた。




                     12




「なんだって?」奪衣婆が呆れて問い返した。「その妙なのを人間と犬に分離出来ないか、だって?」

「はい、このままじゃ、どちらも浮かばれません」

「そりゃそうだけど、出来ない相談だね」

「そこをなんとかお願いします」凛が深く頭を下げた。

「そりゃ、なんとかしてやりたいのは山々だけど、私の管轄外だよ」

「では、誰に相談すればよろしいのですか?」

「う〜ん、どうしてもって言うんなら、閻魔様しかないんじゃないかい」

「でも、この川を渡らなければ、閻魔様に会うことは出来ません」

「じゃあ、十二文持って来な。いいや、犬の分は半額に負けておくとして十五文だ」

「そんなお金ありません!」

「じゃあ、諦めな」

「私・・・婆様を見損なっていましたわ。もっと話の分かる方だと思っていましたのに・・・」

「ふん、いちいち情けを掛けてたんじゃ、奪衣婆なんてやってらんないよ!」

「そうですか、分かりました。もう、お頼みいたしません!」

「どうするつもりだい?」

「この川を、泳いで渡ります!」

「そりゃ駄目だ、この川には地獄の魑魅魍魎がうようよいるんだよ。亭主の舟でなくちゃとても無理さ」

「やってみなければ分かりません!」

凛は、さっさと着物の帯を解き始めた。「田隈さん、よろしいですね?」

「ああ、構わないよ。どうせ私は地獄行きだ」

襦袢一枚になった凛は、三途の川の河岸に立った。

「じゃあ、飛び込みますよ!いち、にの、さ・・・」

「待った!」奪衣婆が叫んだ。

「全く強情な娘だねぇ・・・奪衣婆を脅すなんて前代未聞だよ」奪衣婆は二階に向かって声を掛けた。「お前さん、お客さんだよ、彼岸まで乗せてっておくれ!」

「お〜う!」懸衣翁の野太い声が返ってきた。

「婆様、有難うございます!このご恩は一生・・・」

「いいよ、私ゃ人に感謝されるのが苦手なんだ。その代わり、閻魔様によろしく伝えておくれ。奪衣婆が呉々も宜しく言ってたって」艶っぽい目をして奪衣婆が言った。

「はい、必ず伝えます」

「ここだけの話だけど、い〜い男なんだよねぇ」奪衣婆が小声で囁いた。

「え、誰がですか?」

「閻魔様に決まってるじゃないか・・・いいかい、亭主には内緒だよ」

「まぁ、呆れた!」

「呆れるのはこっちの方さ。ま、いいから早く行きな、舟の準備が出来たみたいだよ」

奪衣婆に礼を言い、凛と田隈は懸衣翁の操る舟で彼岸へと漕ぎ出して行った。

「全く変わった娘だよ。でも、見所はある。私の後釜として育ててみたいもんだね」


出て行く舟を見送りながら、奪衣婆がポツリと呟いた。




                    13






「爺様、有難うございました」舟を降りた凛は、懸衣翁に礼を言った。

「おう、気を付けて行きな。そこの亡者の列に並べばそのうち着くから」渥美清のような顔をして、懸衣翁が言った。

「はい」凛は再び頭を下げた。

舟は向きを変えて流れに乗り、凛は懸衣翁の背中を見送った。「婆様、あんな良い旦那様がいるのに・・・浮気なんかしなけりゃ良いけど」


「なんだか、思ったより賑やかな所だねぇ」辺りを見回して田隈が言った。

「みんな、死にたてのホヤホヤだから元気が良いんですよ」凛が答える。

「あの高層ビルに閻魔様がいるのかい?もっと古風なところを想像していたんだが。これじゃ、新宿丸の内のビル街だ」

その時、列の前方から怒声が聞こえてきた。

「おや?先の方が随分騒がしいね、どうしたんだろう?」田隈が列から逸れて前を見た。

「男達が大勢で言い合いしてますよ」凛も背伸びして様子を窺った。

「ああっ!あれはあいつらではないか!」

「あいつらって?」

「僕を捕まえに来た奴らだよ・・・あぁ、取っ組み合いの喧嘩を始めたぞ、みっともない!」

「知らんふりしておきましょう、どうせ極楽には行けないんだから。あっ!鬼が来ました・・・あ〜あ連れて行かれちゃった。きっと刑が割増ね」

「多少後ろめたい気もするね。僕の所為で死んじゃったんだから」

「自業自得です。田隈さんが気にする事はありません」

「複雑な心境だよ」




ずいぶん待ったような気がしたし、あっという間だったような気もする。ここでは時間の経過が曖昧なのだ。

気が付けば、目の前にあれほど並んでいた亡者の姿はなかった。

「次っ、入れ!」

鬼に促されて大きな扉を通過した。田隈はここでも予想を裏切られた。なんともだだっ広い空間に、大きな机がドンと置いてあるだけで、他にはなんの飾り気もない。ただ、机の上に『閻魔大王』と書かれた黒い三角プレートが置いてあるだけだ。

本来なら浄玻璃の鏡が置いてある筈だが、代わりにテレビのような機械が置いてあった。

その机の向こうに、中国皇帝のような服を着て役者のような男が座っていた。

「次はお前か?なんとも面妖な姿だな」顔に似合わぬ顎髭を扱きながら男が言った。

「あ・・貴方が閻魔大王様ですか?」恐る恐る田隈が尋ねた。

「そうだ」

「もっと恐ろしいお顔を想像していました・・・」

「ワハハハハハハ、確かに、私の前任者はいつも鹿爪らしい顔をしていたがな」

閻魔は磊落に笑った。

「またお目にかかりました、閻魔様」背後から凛が慇懃に礼をした。

「おお、634号か、その者に気を取られて気付かなかった。確かあの時は地蔵の姿で会うたのだったな?」

「はい、賽の河原でお会い致しました」

「どうじゃ、その後人間界での修行は進んでおるか?」

「お陰様で、妙心館の皆様に助けられて恙無く暮らしております」

「それは何よりじゃ。して、今日は何か?その、犬の姿をした人間の付き添いで来たのか?」

「はい、実はこの方、田隈さんと仰るのですが、犬を助けようとしてこのようなお姿になられたのです。しかし、この姿のままでは人間として裁きを受ける事が出来ません。なんとか元の姿に戻ることは叶いませんか?」

「う〜む、難しい問題じゃのぅ」

「奪衣の婆様に、閻魔様ならなんとかしてくれるのではないかと伺って参りました。良い方法があったらお教え願いたく存じます」

「なに、あの奪衣婆がそんなことを言っておったか?」

「はい、大王様にくれぐれも宜しくと・・・」

「そうか、あの奪衣婆がのぅ・・・」閻魔はだらしなく眉尻を下げた。

「あの、閻魔様・・・」

「あ、いやこちらの事じゃ」閻魔は慌てて顔面筋を引き締めた。「その方法・・・ない事もない」

「では、教えて頂けるのですね?」

「お前には無理じゃ。やるとなればここでやる。但しその場合、後戻りは出来んぞ」

凛はしゃがんで田隈の目を正面から見据えた。

「閻魔様はああ仰っておられます。田隈さんは宜しいですか?」

「もちろん」

凛は立ち上がって閻魔に言った。

「では、閻魔様、お願い致します」

閻魔は頷いて後方に控えていた鬼達に命じた。「地下の倉庫から、遠心分魂器を持って参れ」

「は、しかし大王様、あれはもう千年ほど使ってはおりません。まともに動くかどうか・・・」赤鬼が言った。

「昔の物の方が、最近の物より丈夫に出来ておる、心配無い、持って参れ!」

「ははっ!」赤鬼は片膝を突いて頭を下げると、素早く踵を返し扉から出て行った。その後を、青鬼と緑鬼が慌てて追って行く。

「閻魔様、遠心分魂器とはどのようなものなのでしょうか?」凛が訊いた。

「うむ、巨大な鯨の髭のバネを使ったカラクリだ。遠心力を利用して、合体した魂を分離する」

「大丈夫でしょうか?」凛が不安そうに訊いた。

「なぁに、千年前は蛇と合体した女を分離させた。ちゃんと成功した筈だぞ」

「それって清姫・・・」能や歌舞伎の演目で名高い、道成寺の清姫である。「あれって悲劇に終わったのでは?」

「そうだったかな・・・ま、まぁ、あまりに昔でよく覚えておらん」閻魔は遠い目をした。

「閻魔様」田隈が口を開いた。「一つお伺いしたい事があるのですが?」

「なんじゃ?」

「先ほど表で騒いでいた男達は、どうなりましたでしょうか?」

「なに、あの五人組の事か?」

「はい」

「あ奴らは地獄へ落ちるほどの悪さはしておらなかった。しかし、人間界に生まれ変わらせるほどの善行もしておらん。まとめて餓鬼道に落としてやったわい・・・それが何か?」

「はい、あの五人は私が殺したも同然。少々気になりましたもので」

「お前が殺したと?」

「はい」

閻魔はマジマジと田隈を見た。「そう言えば、浄玻璃の鏡に映った男の記憶に、赤いマントの犬の姿が一瞬映っておったが・・・やっ!その時の犬の顔が確かに人間じゃった」

「それが私なのです・・・」


その時、部屋の扉が開いて其々に大きな荷物を担いだ鬼達が戻って来た。

「大王様持って参りました」黒鬼が言った。

「ご苦労、そこへ置け!」

「はっ!」鬼達は担いでいた荷物を下ろした。

「組み立てよ!」閻魔大王が命じた、鬼達の担いだ荷物は分解された部品だったようだ。

「御意!」

組み立てが進むにつれ、遠心分魂器はその奇怪な形状を現した。

まず、真ん中に直径三メートル程の円柱形の物体が設置された。その中央から真っ直ぐに太い軸が突き出ている。

軸から腕が左右均等に伸び、両端に金属の皿が三本の鎖でぶら下がっていた。

「その者を皿に乗せよ!」

鬼が、田隈の躰を持ち上げ皿に乗せると、片側がグッと下がった。

「反対側に、分魂石を乗せて釣り合いを取るのじゃ!」

石が乗せられると、皿が持ち上がって高さが安定した。

「分かった、これは大きな天秤ばかりなのですね?」凛が訊いた。

「ふふん、ただの天秤ばかりではないぞ、超高速で水平に回転する」閻魔が自慢げに鼻を鳴らした。

「えっ、想像できません?」

「まぁ、見ておれ」

閻魔大王は、右手を上げた。「回せ!」

鬼達が、反時計回りに天秤棒を押すと、棒は軸を中心にゆっくりと回り始めた。

「そのまま動かなくなるまで回すのじゃ!」

ギギギ・・・と音がする

「あの音はなんの音ですか?」

「鯨の髭のゼンマイが縮む音じゃ。ゼンマイが極限まで縮んだところで一気に力を解放する!」

「それじゃあ田隈さんが振り落とされちゃう!」

「心配無用、石もあの者も、遠心力で天秤皿の底に押し付けられる筈じゃ」

ギギギギギ・・・ギ・ギ・ギ

「だ、大王様、もうこれ以上回りません!」黒鬼が悲鳴を上げた。

「まだじゃ!まだ足りん!」

「し、しかし・・・」

「私も手伝います!」凛が天秤棒に飛び付いた。「さあ、後少し頑張りましょう!」

鬼達は、全身から汗を滴らせ渾身の力を込めた。更に、一周まわす事が出来た。

「その辺で良い!」閻魔大王が言った。「これから一気に力を解放する!息を合わせて同時に手を離せ!それと同時にしゃがむのじゃ!少しでも遅れると、首がふっ飛ぶぞ!それ、ワン・ツー・スリー!」

凛と鬼達は同時に手を離した。

ゴウッ!頭の上で竜巻が起った。それは、いつ果てるともなく続くように凛には思えた。

凛は両手で耳を塞いで床に蹲った。

どれくらい経っただろう、気がつくと遠心分魂器の回転が緩やかになっていた。それに伴って、竜巻も収まっている。

まだ分魂器は回っていたが、凛はそっと顔を上げた。

カタッ、と音がして分魂器が止まった。

「もう良いぞ」閻魔大王の声がした。

凛は、恐る恐る分魂器の下から這い出し、天秤皿に目を向けた。

「あっ、田隈さん!!」皿の上には鎖にしがみついた田隈がへたり込んでいた。その横には人懐っこそうな顔をした、ゴールデンレトリバーが心配そうに田隈を見詰めていた。

「凛さん・・・僕は元に戻ったのかい?」田隈が鎖から手を離し、掌を見つめながら言った。

「ええ、ちゃんと・・・」

「こいつも元に戻った」田隈は右手で犬の頭を撫でてやった。

「どうやら、成功のようじゃな」閻魔大王が大きく頷いた。「それでは、裁判を始めよう・・・」




                    14




「さて、田隈准一。お主の罪状を見て行こう」閻魔は、机の上のテレビのような機械に付いている鍵盤をポンと叩いた。

「閻魔様それは・・・?」

「これか、最新の浄玻璃の鏡だ。驚くべき性能だぞ」

そう言いながら閻魔は、忙しなく鍵盤を叩き始めた。

「ほう、お主なかなか頑張って生きて来たではないか」

「有難う御座います。しかし、振り返ると私はロボットのように生きてきたのでは無いかと思います」

「それはなぜだ?」

「私は、世間の求めに従って自分を作り上げて来ました。人がああしなさいと言えばそれに従い、こうしなさいと言えばそれに従った。これはすべきでは無いと言われれば、どんなに自分がしたくても諦めた。結局自分で考えることをして来ませんでした」

「現世で生きて行く為には、それも必要な事だと思うが?」

「しかし、その為に大勢の人を傷つけました。妻を傷つけ、子供達を傷付けました。友達を傷つけ同僚を傷つけた。今更悔いても詮無い事ですが、もっと早く気づいていればと思います」

「これは最近、亡者に対して行ったアンケートの結果だが・・・」そう言って閻魔は浄玻璃の鏡のマウスを操作した。「これによると、人に評価されたかったという答えが80%を超えておる。それだけ人の目を気にしていたと言う事だ。これでは、お主の言うように、自分はなんのために生きていたんだと、死んでから後悔する事になる」

「その通りです。ですが、生きているうちには、その事に気づかない」

「気付かぬように出来ておる。それも人の作ったシステムだ。今の人間は大地から離れ人工物の中に住んでおる。回りには意味のある物ばかりじゃ、意味の無いものは排除される。だから、人は役に立つ人間になろうとする、評価されることを望む。評価されなければ自分には価値が無いのだと悩む事になる」

「私もそうでした。評価されるためにライバルを蹴落とし、自分から功をアピールする事で、なんとかその悩みを回避して来ました」

「親子ででもなければ、人は決して心から人を褒めたりはせぬ。褒める時は自分になんらかのメリットのある時だ。さもなければ、上から目線で相手を見下している時か・・・」

「馬鹿でした、それに気付かないなんて・・・」

「お主は、死ぬ直前にそれに気づく事になった。ある娘の言葉によって・・・そして、新ためて人生をやり直そうと決意した時に事故に遭った」

「その事は心残りです」

「心残りがあれば、あの世には旅立てん」

「私は偶発的とはいえ五人の命を奪いました、地獄行きは覚悟の上です」

「さて、その事じゃが・・・」閻魔はまた電脳装置の鍵盤を叩いた。「浄玻璃の鏡にはそのデータが残っておらん」

「それは何かの間違いです、私は間違いなくあの事故を引き起こしました」

「だが、浄玻璃の鏡にデータがないという事は、お前がやったという証拠が無いという事だ」

「しかし、五人組のデータには私が写っていたのではありませんか?」

「あれは奴らのデータだ、お主のものでは無い」

「しかし、閻魔様・・・」

「これは儂の推測じゃが、お主が犬と合体しておった間のデータは、お主の記憶としては保存されておらなんだ、という事では無いかと思う。犬の意識と混じり合って純粋なデータとしては認められなかったのだな」

「そ、そんな・・・」

「とは言え、それではお主の気持ちが収まるまい。そこで提案なのだが・・・」

「はい」

「お主は、ここから直ぐに人間界に生まれ変われ」

「えっ!」

「但し、今の姿のままでは無いぞ。そんな事をしたら人間界は大混乱だ」

「では、どうやって?」

「これから宿る命に転生するのだ。そうして、修行をやり直して参れ」

「では、もう一度やり直せるのですか?」

「喜ぶのはまだ早い。これまでの記憶は一切持って行けぬ。新たに生まれ変わってやり直すのは並大抵の努力ではない」

「は、はい、あ、有難うございます・・・ですが」

「何、まだ不足があるのか?」

「いえ、そうではありません。この犬はどうなるのでしょうか?」

「ふむ、この犬は一度畜生界に戻すしかあるまい」

「やはり・・・でも、人は畜生界に生まれ変わる事も出来ます。犬は人間界に生まれ変わる事は出来ないのでしょうか?」

「畜生界の生命が人間界に生まれ変わるのは至難の技じゃ。しかしこの犬には一縷の希望みがある」

「希望みとは?」

「この犬は、たとえ一時的とは言え人間の頭で考えたのじゃ。その頭に知性が芽生えた可能性がある」

「では・・・」

「その知性を、大事に育てることが出来れば、ごく稀にじゃが人間界に生まれ変わる事がある」

「そうですか、現世に戻ったら、ぜひもう一度会いたいものです」

「運が良ければな・・・」そこまで言って閻魔は威厳を正した。

「田隈准一、判決を言い渡す!」

「はっ!」

「その犬と一緒に、今すぐ現世に転生せよ!」

閻魔大王が大声で判決を言い渡すと、田隈と犬の姿は一瞬で消えてしまった。


「閻魔様、あの二人は現世で会えるでしょうか?」凛は田隈と犬の消えた空間を見つめて訊いた。

「さあな・・・そこまでは儂にも分からん」

「でも、本当に有難うございました」凛は深く頭を下げた。

「礼には及ばん。儂は依怙贔屓はしておらん、いつもの裁きをしただけじゃ」

「閻魔様、素敵です・・・」

「そ、そうか?」閻魔は照れたように髭を扱いた。「634号、もうそちも帰れ」

「はい、そう致します。では、閻魔様お元気で」凛はそのまま後退さり、部屋の外でもう一度お辞儀をした。

「待て!」閻魔が凛を呼び止めた。「奪衣婆によろしゅう伝えてくれ」

凛は、ニッコリ笑って扉を閉めた。




                    15




「そうか、ご苦労じゃったな」凛の報告を受けた平助が言った。

「今頃二人とも、どこかのお母さんのお腹で、新しい生命として育ち始めている筈です」

「良かった、田隈さん今度は幸せになれますね?」香澄が顔を綻ばせる。

「じゃっど。今から十月十日後に生まれてくっ赤子が田隈さんたいね」

「大きくなったら、熊さんの弟子になるかも知れませんよ」敦が言った。「十年後、犬を連れた子供が来たりして」

「そんときゃ、おいは爺さんたい」

「その時、私はここにいるでしょうか?」凛が呟いた。

「なんば言いよっとね、そいば見とどくっとがおはんの仕事じゃなかか!」

「儂はもうあの世に行っとるかもしれんな」平助が言った。

「無門先生は大丈夫です、私が太鼓判を押しますわ!」凛が胸を叩いた。

「死神の太鼓判じゃ、まだ死ねそうにないの」

「僕、槇草さんを呼んできます。今夜はお祝いでしょ?」

「ああ、美希さんと小太郎も連れて来るのじゃ。今夜は盛大に祝おうぞ」

「行って来ます!」


敦は嬉しそうに玄関から飛び出して行った。





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