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死神 凛  作者: 真桑瓜
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水虎

水虎(すいこ)




「師匠、この痕跡は真っ直ぐ谷底まで続いておいもす。芝天の言っておった地蔵岩は、こん近くではありもはんか?」

「そうかも知れぬ、下まで降りてみよう」

ゴツゴツとした岩を伝って谷底に降りた。河原に立つと思ったより川幅が狭い。しかし、その分流れは速く、四級の瀬がゴーゴーと音を立てて流れていた。

「ここに落ちたらひとたまりもあるまい」

「泳ぎの得意なおいでん、こん瀬は御免被りますたい」

その時、川の中に突き出た岩の上に、全身が鱗で覆われた化け物が一匹現れた。

化け物は岩の上で這いつくばって、じっとこちらを伺いながら涎を垂らしていた。

「師匠、あいも妖怪でっしょか?」

「うむ、そのようじゃ」

「あっ、見てくだっせ。あっちにもおりますばい!」

上流の岩に、ひょっこりと化け物が這い上がって来た。

化け物の数は徐々に増えて行き、川から突き出した岩の上は全て化け物で埋め尽くされてしまった。水の中に潜んでいたとすれば、相当泳ぎの達者な妖怪に違いない。

「一体何匹おるのじゃ!」

「十匹以上はおりますたい!」

「友好的な雰囲気ではない。儂らを襲うつもりじゃな」

「そんつもりでごわっそ」

岩の上から、一斉に化け物が消えた。

次の瞬間、目の前にいくつもの水柱が立った。

怪鳥のような鳴き声を発し、化け物が二人に襲いかかる。

躰は人のようだが、手足の指に水掻きと鋭い爪が付いている。銀色の鱗が陽の光を反射して、不気味に輝いた。

素早く動いた熊さんの当身が、化け物の腹を抉る。

グゲッ!と気味の悪い音を発して、化け物が緑色の吐瀉物を吐いた。

「こいじゃ、木の枝から滴っておった粘液は!」

平助の蹴りが決まって、化け物は海老の様に背を丸め同じように嘔吐した。

「お前達か、住職達を攫ったのは!」平助が大喝した。

化け物達は一斉に後退さりして、体勢を整えようとした。

不意に水飛沫が上がって、川から一匹の化け物が飛び出して来た。

化け物は跳ね上がり、熊さんの上に両膝を突き出して落ちて来た。

「膝じゃ!」平助が叫んだ。

化け物の膝には虎の爪に似た突起が飛び出ており、触れれば人間の皮膚など簡単に引き裂かれるに違いない。

熊さんは横っ飛びに身を躱した。途端に化け物の膝が岩を噛み粉々にしてしまった。

「凄か破壊力じゃ!」熊さんが一瞬怯んだ隙に、化け物が熊さんに飛びかかった。

「危ない!」

咄嗟に平助が投げた石礫が、化け物の鱗に当たり金属音を発して弾き返された。

化け物が平助を振り返ると同時に、第二投目が化け物の顔面を直撃した。

化け物はもんどりうってひっくり返ると、顔を抑えて地面をのたうちまわった。

倒れた仲間を抱えて、化け物達が一斉に川に飛び込んだ。

「しまった、一匹捕まえておくべきでごわした!」

「やむを得ん、川に飛び込まれたら儂らになす術は無い」

「こん流れじゃ、上流に向かったとは考えられもはん!」

「そうじゃな、下流に行ってみよう」

「そうしもそ」




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