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行きて埋まりし物語  作者: お前の水夫
第5章 最後の一人
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第11話 モチキンと少年



2021年10月4日:青空氏の『ブラバするけど勿体ないなと思うケース』を読ませていただき、自作を振り返ってみました。この作品は「○○○た」で終わってばかりの実に下手な文章が多過ぎます。その為、最初から修正することにしました。更新は遅くなりますが、上がった時にはお読みいただけるとありがたいです。







 ワカリースは奇跡的なタイミングと事象により、何とか危機的な状況を脱したらしかった。


 彼は何と言っても12歳の少年に過ぎない。5人の実戦で鍛えられた大人の男に対抗するにはあまりにも経験が足りていなかった。


 彼は第8階梯までの魔法を修めているが実戦に関わる訓練は受けたことが無く、相手を殺すことにためらいを覚える子供らしさも当然ながら持っている。


 さらに相手の方は、少なくとも幼少期の彼の面倒を良く見てくれたし、かつては幼い彼が(あお)ぎ見る頼り甲斐(がい)のある兄たちでもあった。


「何だ……何が起こった。目が見えない……ワカリース……生きているか? 計画がバレたのか……俺はこんなところで……」


 彼を養育し、そして追いかけていた男はそのまま静かになった。






 モッチーが艦隊からもらったバンガロール・ブレード(有刺鉄線除去用の爆薬筒)は、南東街区の中層スロープを護る門を半分ほど吹き飛ばした。 


 南東街区は、北東や北西街区と比べて地下の生物の密度と危険性が高い。それ(ゆえ)に上層に続くスロープは石を積んで(ふさ)がれる計画も在ったが、駆除業者にとっては便利だったので門で塞がれることになった。


 普段は門番が居るのだが、現在は大繁殖の影響で閉められており、人気(ひとけ)の全く無い場所になっている。

 駆除業者は、現在はもっと南の港側から中層に下っているのである。


「…………」


 モッチーとしては今の爆轟(ばくごう)は期待した通りなのだが、もう少し離れた場所からその瞬間を見れなかったことは残念だった。モッチーにとって良い思い出になったに違いない。


 何やら木の(さく)の内側で、誰かの話している声も聞こえる。

 モッチーは門の内側を(のぞ)いてみることにした。






 ワカリース・ギル少年は、倒れている追手の男たちの間を通って門を調べるため、自分の居る(くぼ)みから通路へと出た。まだ耳がジンジンしている。


 これからどの道で行くべきかワカリースは考えた。中層地下からなら中央区の領主館は比較的に近くだが、先ほどのとんでもない爆発を起こした相手が不明のままである。


「すまない。僕は行くよ……それにしても何が起きたんだ? 魔法じゃ無いみたいだし」


 こちらから見て右側、つまり都市に近い側の門扉(もんぴ)がボロボロになっている場所に少年は目を()らした。


「こんな時に不謹慎だけど、一体どんな力が働いたんだろう? え!?」


 ワカリース少年の視線の先にある、残骸の様になった門扉の隙間から()()がこちらを見ていた。それを『誰か』と言わないのは、どう見ても相手が人間では無いからだ。


 ()()は、妙に爪先の短い高さ15ドーメン(≒㎝)くらいのブーツを履いていた。肌はツルンとしてやや太く、服は全く着ていなかった。使いやすそうな背負い袋を背負ってただそこに立っている。

 色は毒々しい紫色で、首の無い頭は丸長く、頭上には耳の様な突起が2つ後ろに垂れていた。身長は152ドーメン(≒㎝)の少年よりも低い130ドーメン(≒㎝)ほどしかない。


 ワカリース少年が黙って見ていると、やがてその生き物はトコトコと歩いて来た。そのまま倒れている男たちの(ふところ)(あさ)り始めたのだ。


「ちょ、ちょっと何をやってるんだ君は! 彼らはもうすぐ亡くなるんだぞ!」


 ワカリース少年から見ても全員の容態(ようだい)は絶望的だった。今はしてやれることも無い。倒れているものは身体中から血を流しており、しかも衝撃波で柔らかい内臓はボロボロで全員が虫の息である。

 その生き物は、そんな人間たちから身ぐるみを()ごうというのだ。


 結局その生き物は、5人全員から硬貨の入った袋を盗むと背負い袋に全部しまってしまった。






「君は地下に住んで居るんだろう? お金なんかどうするんだ……」


 モッチーは困惑した。先ほどから少年がやたらと話かけてくる。

 お金をどうするかなんて決まっていた。半分は製錬して艦隊司令部に賄賂(わいろ)を送り、半分はテルテルに頼んで上層で食料に代えてもらうのである。


 巨視的に見れば、艦隊は超巨大な自然分解者であると言える。つまりモチキンにとっては同族の上位者でしかなかった。

 そしてモッチーの送り届ける色々な物と、モッチーが最近興味を持った『爆発物』とを交換してくれるありがたい姉たちでもある。


 モッチーは、何か拾えるチャンスを不意にしたくはなかったので手早く硬貨だけを回収し、先ほどから興味深い視線と(おび)えの両方の雰囲気をまとう少年に向き直った。


 ワカリース少年の方はと言えば、ここでグズグズしていると人が集まって来そうであるし、自分にはこれからやらなければいけない事もあって早く移動した方が良いと思っていた。

 それにあと1ニテル(≒時間)もすれば日が沈んでしまう。普段通りに生活して、相手の目を(くら)まそうとしたのが裏目に出た格好だ。


「何かすごい色だし……普通に歩いてるけど、君はひょっとしてモチキンなのかな? ちょ、どうしたの?」


 ワカリース少年は突然に、相手の変な生物に服の(すそ)を引かれた。そのままスロープを下って中層地下に降りるコースを引きずっていかれる。

 その変な生き物は、倒れている男の腰からちゃっかりランタンを奪うと、ワカリース少年に差し出して来た。


「ああ、分かったよ。分かったから離してくれ。自分で歩くから……まさか地下を通り抜ける羽目になるなんて……」


 少年が妙なモチキンに連れられて中層に下ったその後で、ようやく大きな音に驚いた役人たちがスロープにやって来た。

 都合の良いことに、どうやら例の爆発はディーコンの仕業(しわざ)と間違えられたらしい。






 実はこの時、不良騎士のマルッキ・リアホーは南東街区外縁部で飲んでいたし、魔法院のソレヤンノ・ヨセ教授は自分の研究室に(こも)っていてこの騒ぎを知らなかった。

 彼らがニドとノンダに叩きのめされるのは、この日のしばらく後の事である。


 旧ワガラシ伯領の者たちの企てている陰謀について、少年が自白を決意したことが都市反攻組織側に知られていないのは幸いだった。

 ワガラシ伯領復活派にとっては、自分達の不手際を彼らに知られるのもバツが悪い事だった為に、この事件に関しては両者とも全く連携が取れていないようだ。


「ちょっと、本当にこっちで良いのかい? 僕は中央街区に行きたいんだ。すぐそこだと思ったんだけど……1ザイト(≒㎞)無いよね」


「…………φ(゜゜)ノ」


 目の前にいる奇妙な生物は、自分のことを指して『モッチー』であるとワカリース少年に名乗った。器用なことにわずかに土のある場所で、地面に文字を書いて指し示したのである。


 ついでにサンダルの様な物しか()いていないワカリースに、背負い袋からブーツを出して彼に渡してきた。少し大きかったが(ひも)をきつめにすれば問題ないし、しっかりした上等な造りでワカリースの初めて見る縫い方がされている。


「ありがとう。色々と持っているんだね。えーと僕はワカリース。ワカリース・ギルだ。追われていて、どうしても行きたいところがあるんだ」


「( ・_・)ノΞ●~*」


 ワカリース少年の言葉に対し、モッチーは意味のよく分からない絵を地面に描いて答えた。何にせよ危険な生き物では無い様で彼はホッとした。

 モッチーは、大繁殖の影響で発生したモチキンの特殊個体であるように見える。


 それは良いのだが、先ほどから先導するモッチーはワカリースが行きたがっている中央街区とは違う方向へ彼を誘導している様な気がして仕方がない。

 もうとっくに到着してもおかしくない時間が過ぎたころ、モッチーはおもむろに立ち止まるとワカリースを壁の窪みへと導いた。






 モッチーはそこへ腰を落ち着けると、背負い袋から水筒と3個のパニーニを取り出した。水筒と一緒に1個をワカリースに渡すと、自分は2個を体に刺して消化し始めた。もう1本の水筒からは体内に水を流し込んでいる。


「本当にありがとう。何か悪いね、こんなに。これは見たことが無いパンだけど美味しそうだね。パネーナっていうのかい? それじゃあいただきます」


 ワカリースは地下生物が差し出して来たパンを食べてみることにした。包装を剥がすと、表面に焼き目が付き切れ目の中には刻んだ野菜と肉が入ったパンが出てきた。冷めていても匂いは良いし、腐ってもいなさそうなので彼は遠慮なく食べることにした。


「……! 美味しい! こんなパン食べたこと無い……」


 彼はモッチーのくれたパンの意外な美味しさに驚いた。肉は味がよく染み込み、野菜は歯ごたえが良く、パンはそれだけでも上等な焼かれ方をしている。長さは25ドーメン(≒㎝)くらいあって少年には充分だった。


 地面に置いたランタン(盗んできた)の投げ掛ける灯りの中での食事は、研究室に引きこもりがちな少年に野外の楽しさを一時もたらした。






 ワカリースが水を飲みながらボーッとしていると、いつの間にかモッチーが壁の窪みから出て通路側で何かしている。


「何をやってるんだい? モッチー」


「 【 三☆;'.・;'.;'.・;'.;'.;'. 」


 モッチーは地面に絵を描いて説明してくれている様だが、さすがのワカリースにもよく分からない。

 

 どうやらモッチーが通路に設置中の『薄い箱型の物』を表しているらしい。

 この箱は(ゆる)く湾曲して、横から見ると真ん中が(くぼ)んでいた。しかも箱の下から彼が普段使うコンパス(※)の様な足が出ていて、立てて固定出来るようになっているようだった。

〔※呼び方は違う道具ですが、似た形状と役割の道具を訳したモノであるとお考えください〕


 モッチーは、その薄い箱状の物体に長い(ひも)を取り付けると反対側をスイッチにつないだ。


 モッチーはワカリース少年と出会った際に、彼に何か近しいモノを感じた。その理由を考えると、どうも彼の居た場所が関係している様だ。バンガロール・ブレードが爆発した際、ワカリースは確かに石壁の(くぼ)みに避難していた。

 モッチーがここから導きだした答えは一つ。ワカリースはどうやら「自分と同じ趣味の人間なのではないか」という事だった。普通の人間には、被害を避けつつ爆発を経験するあの位置取りは無理である。


 ワカリースは口では「中央街区へ行きたい」などと言っているが、感情的には行きたくないと思っているのは丸分かりだった。モッチーは普段から「無理は良くない」と思っている。


 モッチーは考えた。ここは一つ、姉たちから大量にもらった爆発物で彼を元気付けてあげるべきだろうと。


 『M18 クレイモア地雷』はモッチーのお気に入りの一つである。ちょっとこの起爆スイッチを押せば、ワカリースの心配ごとも吹き飛ぶに違いない。

 それが『同好の士』に向けたモッチーの思いやりだった……。






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