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行きて埋まりし物語  作者: お前の水夫
第1章 ケコンスティアーノの遺産
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第14話 準備とつまずき


 アプデスタ参謀の提案は、テルテルが中途半端にゴーレム化されたケコンスティアーノ氏の遺体を完全にゴーレム化した物に入って、上層の都市へ(もぐ)()むというものだった。


 テルテルとしてはこの案はちょっと避けたかった。遺体は文句は言わないだろう。それでもテルテルには精神的抵抗は大きかった。彼としてはここに眠る者だけはそっとしておいた方が良いような気がしていたのだ。


 仕事としては現在の支配的な体制を確認すると共に、可能であれば有力な宗教勢力とお近づきになり神とコンタクトを取る必要がある。

 また重量が15トンあり、凄まじく強固な装甲を持つダトールが獣人側に捕獲されたのは考えにくかったが、ひょっとすると有力な情報が得られる可能性もあった。


【テルテルさん、どのみち都市に溶け込まないといけません。義体を用意する手もありますけど、デカケティ氏の技術の研究を進めてスリープモードを搭載する手がかりを得る必要はあります】


 参謀にそう言われては、テルテルも最後には折れるしか無かった。デカケティに対して何となく後ろめたさを感じたとしてもである。

 コアの搭載が無理そうなら、新規作成の義体で何とかするということで話はまとまった。


 それは良いとして、デカケティの遺体を送るのが大変だった。


「これ重いな。8トンはあるんじゃないか。床から持ち上げるのは良いとして台車が必要だ」


 遺体の収まった直方体の箱は、棺桶(かんおけ)ではなく魔法的な施術装置であるらしい。是非とも一緒に送れという提督の意向にしたがって運ぼうとしたのだが、取っ手もないおかげで上手く行きそうになかった。


【台車ね。どんなのが良いのよ? 何でも送るわよ】


 ここは珍しく、テルテルの発案により『スケボーを横にして大きい車輪付けた』ような台車が製作され送られて来た。

 これはスケボーを横にしてエアレスタイヤを4個取り付けた物が3台、側面がワイヤーロープで連結されたもので計12輪でこの棺桶を運べる様になっていた。

 床の石をはがし、そこに棒を突っ込んで棺桶を持ち上げ、隙間から台車を押し込みようやく運ぶことが出来た。

 台車から降ろすのも大変だった。






 新しいフレッシュゴーレムと呼ぶべきボディが完成する間に、テルテルはケコンスティアーノ邸とデレッダ邸を拠点として有効活用するべく動き出していた。

 彼の身に何かあって今のボディが破壊されても、戻って来れればいくらでもやり直しが効くし、薬草や道具や武器など作れればいざというときでも助かるに違いない。


 とテルテルが考えていたところでまたも横槍が入った。デカケティの遺体を獣人に偽装するにあたり、新たな問題点が提示されたらしい。


「やっぱりスムーズには行かないか。参謀、現時点で浮上した問題点は上層の獣人が500年前のヤツと同じ人種かどうかってことだけなのか?」


【当時のデータはあるのです。実は遺体も回収し、彼らの生物学的な分析は終了してます。問題は上層を現在占拠している種族が、同じ人種かどうかということだけです】


 地球人にも欧米系・アフリカ系・アジア系という違いがあるように、獣人にも違いがある可能性があった。


【大見得を切っておいてお恥ずかしい限りです。ですが無視できない可能性ですし、彼らの社会において被差別的な存在になっては活動の難易度は高まるでしょう】


「そうだな。それは厄介かもしれない。何とか調べられないかやってみるよ」

 

 テルテルに当ては全く無かったが、それでも出来る限りのことをやってみるしかなかった。


 言語については問題は無いと思われた。収集していた言語データを(もと)に盗み聞きで集めた分も加えて、日常的な会話は可能であろうレベルには達しているはずだった。

 ただ話している連中の社会的地位を想像するに、収集出来た会話は上品であるとは言えないだろう。敬語については難ありといったところであった。






 そんなわけで、今後の先行調査計画については一応の方向性が出来たわけなのだが、やることと言えば今までと大差無かった。多少は創造的になったかなという程度である。


 ケコンスティアーノ邸は、物資のやり取り以外は完全に空けることにした。ここには転移魔方陣と集めた書籍、製錬で出来た金属、及びゴーレムコア6体を保管し、それ以外の動かせる物は全部デレッダ邸に移した。

 ゴーレムコアは万が一の場合の保険であるので起動させないままだ。


 デレッダ邸には作業用の高温炉はあったので荷物だけ持ってきた。各種工具と金貨2000枚、テルテルとゴーレム14体と装備品、大量の土と肥料、送られてきた傷薬1トン分と獲物のなめした皮、セメントの残りその他もろもろがこのデレッダ邸に収まった。

 仕方のない場合でも、こちらのデレッダ邸だけを公開すれば良いのだ。


 さらにテルテルはこの地下の邸宅で農作業を始めた。デレッダ邸の一番広い部屋(間取りとしては最初にテルテルが覚醒した部屋と同じ)に大量の土を運び込んで、小さな畑にすると邸にあった薬草の種をまき、邸にあった『太陽灯』を天井に設置して浄化された水をやった。


【何かまた田舎暮らしみたいなことを始めちゃったわね。これはアレなの? 教会かなんかに納めるヤツ?】


「そうなんだ、提督。おそらく宗教勢力は金に困っている。実利を与える神様が本物ならば、上層部は慈善事業に手を出している可能性が高い。金かそれに準ずる物はいくらあっても良いはずだ」


【まあ……勢力が大きすぎて困ってない場合もあると思うけど。そうね、そんなシノギもあって良いかもね】


「ヒカリキノコも育ててるんだ。これも熱病やケガの薬になるからな」


【あのキノコは便利だわね。一応調べたんだけど、木材やら有機物を分解してるみたい】


 テルテルは流木や木材ゴミで詰まっている水路を掃除すると、これらをある程度乾燥させデレッダ邸の台所に運んで、積み上げたり立て掛けたりしてヒカリキノコの胞子を付着させた。

 台所にあるのは流木などに汚物が付着した物だから、臭いは乾燥させてもひどいものだったに違いない。テルテルは水も食事も必要ないことに感謝した。


 結果は良好でヒカリキノコは爆発的に増えた。キノコが育つと臭いもおさまった。もうすぐ収穫が可能だろう。薬効成分が変質しないように、よく乾燥させて提督からもらったバケット(植木鉢と交換)にしまう予定だった。 






 テルテルとゴーレムたちが行っていたのは、それらのことだけでは無かった。


 ケコンスティアーノ邸やデレッダ邸の階下の貯蔵庫は、どちらも防腐効果があるらしかった。死骸を置いて検証したところ、10日間は変質の兆候が少しも見られなかった。

 提督と参謀によれば、おそらく分解菌の働きが阻害されるだけでなく、タンパク質の変質まで抑制されている可能性が高いようだった。


 そこでテルテルはチクワーブとガーンモーを可能な限り狩ると、それを貯蔵庫に放り込んで貯めておき、一気に送ることにしたのだ。


「この辺からはチクワーブも大分居なくなったな……そうするとガーンモーも減るか」


 テルテルは刺突短剣(スティレット)をチクワーブの死骸から引き抜きながらひとりごちた。

 眠りの霧を使い、延髄にこれを刺せばチクワーブはいくらでも()れた。


 そんなテルテルの頭の横を太矢(ボルト)がものすごい勢いで通りすぎた。太矢(ボルト)の行き先でドサリと、何か重い物が倒れる音がした。チクワーブの死体の臭いに釣られて来たガーンモーである。


 テルテルとツボニハイルたちは、最早ガーンモーですら敵では無かった。


「アッターレ・アァァァタァァァレェェェ」


 テルテルが『魔法の太矢(マジック・ボルト)』を唱えた瞬間、腰にまとめておいた太矢(ボルト)が、勢いよくガーンモーに飛んで行った。例の空対空ミサイルじみた太矢(ボルト)である。

 『魔法の太矢(マジック・ボルト)』は初級魔法であるが、応用が効き何でも飛ばせるために恐ろしい術でもあった。手裏剣や投げナイフでも飛ばすことが出来たし、手榴弾でも飛ばせるだろう。しかもある程度微調整が効いた。

 太矢(ボルト)はガーンモーの眼球を貫いて、脳ミソまで簡単に達した。


 テルテルたちはこれらを棺桶を運ぶために作った台車に()せて、怪力のおかげもあって楽に持って帰って来れた。






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