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行きて埋まりし物語  作者: お前の水夫
第1章 ケコンスティアーノの遺産
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第6話 取りあえず情報と掃除

取りあえずマッタリ。艦隊は彼以外の人員を送り込みません。侵略では無いので。そして神からの監視は脅威なのです。








 テルテルはまず、この隠れ家の中をもっとよく調べてみることにした。

 最初の部屋は天井もさることながら、壁の穴も(ふさ)がねばならない。


 そして正規の出入口も見つけなければ。デカケティには他に3人の仲間がおり、彼らは全員が自宅を都市上層部を支える構造物の一部として偽装していた。物凄(ものすご)く神経質というか変質的な()(かた)だったが、お陰で400年以上の歳月を見つからずに過ごしたのだ。執念である。


 使えそうな物はある程度は地下の倉庫で見つけた。まずはセメント。これは壁の穴の修理に使えそうだ。それから銅、鉄、銀のインゴットを始め、アルミまで何故かあった。

 さらに成分不明の薬品が多数、クロスボウが10(ちょう)、剣と盾がそれぞれ10づつ、梯子(はしご)と工作道具に大工道具、理科の実験にでも使うようなガラスや陶製の器具、そして大量の銀貨と金貨もあった。


 また、テルテルが使っているゴーレムコアの部品とおぼしき物が20組もあった。コアをあと20個作れるということだ。


 肝心のゴーレム本体もあった。たった5体であるが人間型で、鉄製であろう鎧におおわれ、身長は2m程もあり、たくましく分厚い感じの胴体に太く力のありそうな比較的長い手足がついている。






 テルテルたちは頭部の部品と書斎にあったゴーレム・コアの設計図から、艦隊のメンバーがこのコアを遠隔操作出来ない理由を知った。ろくでもない理由だった。


【まさか制御用の部品が人間の脳の一部とはね! これが無かったら行けたんだけど、これのおかげで小型化してるわけか。にしてもエグいわねぇ……】


 テルテルが見ているのは、設計図に並んで描かれた人体解剖図である。彼は頭蓋骨の断面に嫌悪感を覚えたがしかめる顔も今は付いて無い。


「これさちょうど後頭部のところだと思うんだけど、この頭蓋骨の内側に張り付いたレンズみたいな平たい石はなんだ?」


【魔法器官ですね。この頭部のと肩甲骨の間の辺りの脊椎(せきつい)にも同じ物があります。これがこの星の人間の器官なのでしょう】


【収集と貯蔵と放出をこれでやって、制御は脳でしてるのね。うちのは機械式だから円筒形で300m✕700mくらいあるんだけど、制御はうちらも思考部位でやってるわね】


 艦隊もここの人間も、力の扱い方はよく似ているらしい。魔力を()める場所と制御する場所がある。

 機械式と生体式の違いがあるようだ。


「俺のこのコアと人間ではどう違うんだ? この体も一応機械みたいなもんだと思うんだが」


【収束と貯蔵は驚くべきことに機械式です。球体の斜め上からはまっている7㎝くらいの円筒が2本ありますが、これが艦隊にある円筒と同じ働きをします。命令を記憶し、決まった動作を記録してあるのは中心の石です】


 アプデスタ参謀の説明を聞く限りでは、全部が機械式であるかのように聞こえる。


【テルテルの体は中心の石から出た命令を体に伝える部分にこの人間から取り出した魔法器官を使ってるわけ。つまり放出をこれで制御してんのね。周辺の脳組織まで防腐処理して一緒に突っ込んであるわね】


 この頭蓋骨の内側の石と脊椎の石の4枚に加え、その周辺の神経組織と脳の一部が防腐処理されて使われているらしい。処理は完璧できちんと力を伝達していた。

 これらが誰の体から取り出されたのかと言うと、敵の体から……つまり獣人の体から取り出されたものらしかった。


 デカケティ・ツカマッティ・ケコンスティアーノという男はだいぶんマッドだったようだ。

 ただし、相手側にこれらの魔法器官の発育の良いやつが少なく数が造れなかったと書いてあった。






 追い詰められていたらしいデカケティのことは取りあえず置いておこう、とテルテルは思った。ずいぶん昔のことだし、今は使えるボディもこれだけしか無くやるべきことは多い。


「取りあえずどうしたら良いだろう。俺的には最初の部屋を何とかすべきだと思うんだがどうかな。見つからないようにするのが先だって気がする。時間はあるし」


【テルテルは魔法の修行をしなさいよ。そんでもってここにある物資をこっちに送るわけ。そしたら私が、改良版の魔法器官と丁度良い構造材を送ってあげるから】


「それはここに()め込んである7㎝の円筒のことかい? あとは天井を支える構造材だよな……先に送ってもらうのはどうかな」


【受け取りにもそれなりの手順がいるのよ。今度は物体で、適当にどっかに下ろせば良いってんじゃ無いんだから】


「どうやって修行をするんだよ。教科書も何にも無さそうだし」


【そこの棚にあるわよ。翻訳はやってあげるから。初級が3冊、中級が3冊、上級が3冊で最後の導師級が1冊。取りあえず初級だけで良いから。出来ることが増えると楽よ】


 というわけでテルテルは魔法使いとしての修行をするはめになった。






 テルテルは自身でも意外だったが、割とこうしたことが好きなタイプである様だった。自分でも驚くほど夢中になって、魔法の修行に精を出すことが出来た。


 それだけでは無く、毎日のようにテルテルはスライムを着込むと都市の中央を流れる河であるニコンデル河の近くまで歩いた。そして何匹かのスライムを連れて帰ってきた。

 真っ直ぐ行くのでは無く、デカケティの家から西北西に向かうルートである。地下街の地図ではその辺の道が狭いからというのが理由だった。狭い道なら人は避けて通るに違いない、というわけだ。


 (ちな)みに(くだん)のスライムであるが、この地域での名称は『モチキン』であることが判明した。たまたま日記にそう書いてあったのである。


 下水道の浄化のために、かなり早い段階からモチキンたちは導入されていた。そこでテルテルは隠れ家の周辺の水路と池をこのモチキンできれいにしようと考えたのだ。


 下水が()まれば人が来てしまう可能性が上がる。出来ることからやってみようというつもりで試したのだが、これが意外とうまく行った。テルテルに着られているモチキンは仲間を呼ぶことが出来るらしく、やって来たモチキンはおとなしく抱えられていた。


 モチキンたちにとってもこれは良かった。元々隠れ家周辺にはモチキンが少なく、競争相手が少ないため彼らにとっても良い餌場だったのだ。

 テルテルは近づいてきたモチキンを(かつ)いで、隠れ家とそれ以外の場所を毎日何回か往復した。






 魔法の修行は実践あるのみである。最初は地下の作業場で行っていたのだが、これだけではどうしても足りない様に思えた。そこでテルテルは自分の思いつきを実行に移すことにした。

  

 テルテルはモチキンを着て、魔法制御の訓練を行うことにしたのだ。この状態では、制御が雑で甘いと全身がブルブルするわけである。


「おるるろろろ、ダメだこれじゃ。もうちょっとこう工夫しないと……」


 最初に比べればだいぶんマシにはなってきた。最初に比べて振動が細かく早く、そして強くなってきていることにテルテルは気がついた。出力は上がってきている。

 あとはモチキンにまで影響を与えないように、自分のボディの内部にだけ循環させるようにすれば良いのだ。






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