新任講師、姉の足跡2
『えー、ただいまより、卒業式を開始いたします!』
ヴァンたちが普通に卒業するという話の翌日、講堂で卒業式が行われた。
結局、アズラ、カティ、テムダの三人は卒業式に出席したが、ヴェクとマリィの姿はなかった…。
「あの二人、ほんとに来ないつもりかしら…?」
現在、式は学園長講話で、退屈な話が続いている。
現に、卒業生の中にもあくびをしたり、居眠りしている者がいる。
「朝、一応声をかけてきたけど、返事はなかったし…」
「マリィの方はヴェクを説得してみるって言ってたわ。…でも、たぶん無理でしょうね…」
そんな話をしているうちに、式は魔術協会の会長祝辞となっており、話のつまらなさはますます増していた。
「ふわぁ…眠たくなってきちゃった…」
「僕もだよ…でも起きとかないと…」
「そうね…」
もう一度眠そうなあくびをしながらも起きていようと努力するカティ。アズラもがんばって睡魔と戦っている。
ちなみにテムダは学園長の時から熟睡している。時折いびきをかいているので迷惑極まりない。
「…はっ!」
アズラが気がついた時には卒業式の全プログラムが終わり、卒業生が退場していた…。
幸か不幸か、招待客は一切式に関わらず、立ったり、礼をしたりしないため、それほど目立つ事はなかった。
「ちょっと、二人とも起きて…」
隣の二人を起こす。カティは普通に座っているかの様に見えたが、テムダはふんぞり返ってよだれを垂らしながら寝ていた。
ちなみにアズラの寝相はカティと大差ない行儀のよいものだった……寝ている事に変わりはないが…。
「ん…どうしたの…」
やはりカティはさっさと起きた。そして素早く状況を理解し、普通を装い始めた。
「…ふごっ…ごばぁっ!」
対するテムダはアズラが揺するとバランスを崩したのか、座っていた一人掛けのパイプ椅子ごと転倒した。端の席だったのが不幸を呼んだようだ…。
数人の来賓や教師がテムダを見たが、何もなかったかのごとく、卒業生の見送りを続行した。
で、退場も終わり、卒業式も終了するかと思いきや…?
『えーっと、今年は数人の教員の希望があった様で、着任式も卒業式と同時に行う事になりました。来賓の皆さま、もう少しお付きあいください』
そんなアナウンスが流れた。ちなみに着任式といっても、関係者などしか出席できないため、基本的に生徒には関係のない行事である。
「なんでまとめてやるんだろう…?」
「先生にも都合があるのよ。きっと」
『…術式講師………。空間干渉講師………』
次々と新任講師の紹介が続く。
そして、衝撃の事件は最後に起こった…。
『最後に、森林地域管理者、ヴァン講師とファル講師です』
「え!?」
「うそ!?」
「んなっ!?」
「「「えぇーっ!!!」」」
―新任講師、登場―
えーっと、サブタイトルの新任講師ですが、ヴァンとファルの事ではありません。
それは次回で明らかになる事ですが…。