父の訪問、運命の選択
「ふむ…やはり狭くなっているな…」
この日、学園を訪れたトリストは、護衛を兼ねる執事一人と共に、草原エリア最南端の『果ての平原』を見にきていた。
「仕方ありません、トリスト様。近頃は失敗が続いているらしいですので。聞いた話によると限界も近いのだとか」
「だろうな。さて、目的を果たすか」
「承知いたしました」
「空間干渉も合格っ!」
同じ日にアズラは空間干渉の授業を受けていた。
「はぁ…すごいわね…私なんか異次元に閉じ込められたのよ…」
この日、五人で空間干渉を受けたのだが、合格したのはアズラだけだった。
ちなみにカティとエンカは異次元に閉じ込められた。
残る二人は…?
「うぅ…ひどい目にあったぜ…」
「ホントだよ〜…」
半分通常空間、半分異次元という中途半端な場所に行ってしまって、教師を困らせた。
ちなみに教師曰く、『よくある事』らしいが、かなり危険な状態の様だ。
「あれ…?」
アズラの生徒手帳が光る。開くと、『学園南門に行きなさい』と書いてあった。
「何かしたのか?」
「わかんない。なんだろう…?」
「でも学園長室じゃないんでしょ?怒られないと思うけど?」
「まぁ、行ってみるよ」
南門に着いたアズラを待っていたのは…?
「父…さん…?」
「久しぶりだな、アズラ」
アズラの父親、トリストだった。
「主人、来たのか…」
「ムスペイル、器としての役割、ご苦労だったな」
「たいした事ではない」
「父さん、なんでここに…?」
「お前の魔術の調整のためだが?」
「そんなことできるの!?」
「できるさ。ほら!」
一本の剣を具現化し、アズラの足元に放り投げる。
「この剣は?」
剣を拾いあげるアズラ。
「簡単な事さ。…構えなさい、アズラ」
もう一本剣を取り出し、戦闘体勢に入るトリスト。
「冗談だよね…?父さん」
「アズラ、レイカの真実を知りたいか?」
「知ってるの!?父さん!」
「知っているさ。しかし教える事はできない。知ったところで力のない者にはなにもできないからな。力が…欲しいか?」
「…うん」
「ならわたしを斬るがいい。お前の魔術は、わたしが奪った!」
「え…?」
「今回はわたしは魔術を使わない。しかしお前は自由にしろ。ただしムスペイルの召喚は禁止だ」
「父さん、訓練だよね…?」
「どうかな?」
そう言うと金属の円盤を投影し、投げるトリスト。
「わっ!」
とっさに剣を振るアズラ。すると…?
刃には傷一つなく、円盤は真っ二つになっていた…。
「わたしのは模造刀だが、お前に渡したのは真剣だ。覚悟は、できたな?」