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いざ行かん果物の樹へ!

今回は新しい魔術グループ『強化術』が登場します。あと、術式とそれの上位にあたる簡易術式以外のグループは適正こそあれど内容は実際自由です。

現れたのは三匹のウルフ。対するこちらは五人。いくら五人が素人魔術師だとしても…


「{《《ブラスト!》》」」


遭遇と同時に詠唱を開始していたアズラとカティが叫ぶ。

二つの無色の魔法弾が一匹のウルフに向かう。


「ギャウッ!」


的にされたウルフが悲鳴をあげる。そのままウルフは倒れた。


「ガウッ!」残った内の一匹のウルフが飛びかかる。


「《守れ》」


エンカが短くサクヤを指さし宣言する。

そしてサクヤがウルフの攻撃の盾になる。

その後ろからテムダが飛び出し、


「《拳に力を!》」


魔力を帯びた拳でサクヤに弾かれたウルフをぶん殴る。


強化術―物質に魔力を通すことで物質の特徴をそのまま『強化』する魔術だ。


「ギャウン!」


普通ではありえない強さで吹き飛ぶウルフ。

残り一匹のウルフはかなわないとみて逃げていた。




「確かに強化術とか護法がないと厳しかったかもな」


「うん、今のも無傷じゃ無理だったと思う」


「かなり無茶してると思うけど、ここに来るには必要な準備だったわね」


それぞれ午前中に好きな授業を受けて『学びの森』に来た。

目的はもちろん…


「果物まだ〜?」


果物だ。


「果物の樹はまだ先だね」


アズラの答えに対してサクヤは…


「じゃあもっと急ご〜」


タタタタタ、と走って行った。

道中数匹のウルフに遭遇したが、『強化術』を使えるテムダとサクヤが速攻で倒した。




現在午後二時、五人は無事に果物の樹にたどり着いた。


「うわぁ〜果物がいっぱい〜」


「{{………?」」」


喜ぶサクヤ。

しかしそれとは対称的な不思議そうに首をかしげる三人。それもそのはず。見た目こそ林檎のようだが、何故か虹色。購買に売っていた果物は普通の林檎や蜜柑だった。


「…この果物…おいしい…」


いつの間にかエンカが果物を一つとり、かじっていた。


「ほんとにおいし〜」


サクヤはすでに三つ目の果物を食べていた。テムダも二人が賞賛したことで果物を食べ始めた。

馬鹿みたいに食べなければ問題はないがテムダとサクヤに個数の概念があるかどうかは謎だ。

が…


「もう食べられない〜」


もう五個を食べきったサクヤが意外な言葉を口にした。


「……?」


サクヤが満腹を表明した時、エンカが二重に不思議そうにしている。

片方は底無し胃袋のはずのサクヤが、満腹を表明していることだろう。

もう片方は…


「…満腹…」


二つほどしか食べていないはずのエンカも満腹になったことだ。

不思議に思い、アズラとカティも一つずつかじってみる。


「{……?」」二人は大して満腹感は感じない。


「少しくれ」


レムがそう要求したので果物の残りを半分に割ってレムに渡した。


「ふむ…」


食べてすぐにレムは結論を出した。


「これには豊富な魔力が含まれている。あいつらは『腹』がいっぱいになった訳ではない。『体内の魔力』がいっぱいになったんだろう」


「なるほどね。…あ、そうだアズラ、アルバイトの分を確保しましょう?」


「うん、そうだね」


アズラ達は密かに購買でアルバイトを受けていた。

内容は『学びの木での果物の採取。種類は問わない。』

さらに支給物として林檎一個ほどの大きさの袋をもらった。見かけは小さいが空間に干渉する魔術がかかっていて、容量の五倍ほどの物が入る袋だ。

アズラ達はそれぞれ五つずつ果物を入れた。


「これだけ食えば十分だろう?帰ろうぜ」


テムダが言うと、サクヤやエンカも歩き出した。アズラとカティもついて帰る。




しかし…


「ガァオッ!」


帰りに学びの木近辺でもっとも注意するべき魔物『レオ』と遭遇してしまった。数こそ一頭だが、強さはウルフの倍以上だ。

五人が戦闘態勢に入った瞬間凄まじい速さで飛びかかってきた。


「《守れ!》」

「《守って!》」


エンカとカティが同時にテムダに護法をかける。

さらに、


「《シルド!》」


術式の詠唱をしていたアズラも攻撃することを諦め、防御に入った。

しかし…


「ぐわっ!」


三つの防御魔術の対象になったのに、テムダが思い切り吹き飛ぶ。


「このおっ!《足に力を!》」


サクヤが足に強化術をかけてレオに突っ込む。


しかし…


「《シルド!》」


再びアズラが防御に入る。刹那、レオが腕を振るう。


「わっ!?」


サクヤが吹き飛び、地面を転がるが、アズラのおかげでレオの爪の速度が落ち、魔力切れになるほどのダメージではなくなった。

だがプロテクターで魔力を失ったサクヤはもう戦闘不能だ。


「みんな、少し時間を稼いで!」


アズラはそう言うと術式の詠唱を始めた。


「{《《ブラスト!》》」」


カティとエンカが宣言する。だがレオは少し怯んだが、すぐに攻撃態勢に戻る。


「《足に速さを!》」


テムダが凄まじい速さで走ってくる。そして、{《体を硬く!》」そう宣言してレオに体当たりした。


「ガルッ!?」


これはかなり効いたらしく大きく態勢を崩す。

その瞬間、アズラが{《サンダー!》」と叫ぶ。手のひらから放たれた電撃は一直線に走り、レオを穿つ。


「ガガッ!?」


急に筋肉に電撃が走ったレオは動けなくなる。


そして…


「《ファイア!》」


火の玉が駆ける。その一撃はレオを襲い…


「グガッ!」


レオを燃やしながら息の根を止める。


「よかった…」


アズラが一息ついた瞬間、


「!!!」


エンカがサクヤに駆け寄る。


「サクヤ!大丈夫!?」


いつものエンカからは想像出来ないような取り乱し方だ。


「…うん、大丈夫…」


肉体的な外傷は無いが、魔力切れと衝撃によるダメージは大きいのだろう。


「これ、食べて」


カティが袋から果物を出す。一つまるごとサクヤが食べる間に、残りの四人はアズラが取り出した一つを四等分にして食べる。そうして歩けるようになったサクヤを気遣いながら、一同は学園に帰った。







で、アズラとカティのアルバイトはと言うと…


「あら、珍しい!今日はレインボーアップルが取れたの!これ年に数日、さらに一日の内二時間しか取れないのよ!報酬は…一つ350リムで一人1400リムね!」


入学式にもらったリムはたった100リム。林檎でも一個200リムするので大儲けだ。


「やったね!アズラ!」


「うん!やったあ!」


思ってもない幸運に恵まれた二人だった。

本編で分かると思いますが、各々が履修したのは、アズラ…術式2。テムダ、サクヤ…強化術1。カティ、エンカ…護法1です。アズラ君が使わないものもありましたが術式レベル2はファイア、ウォータ、サンダー、ストーン、ウインドの五つです。

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