壊れたアズラ、失われた下級魔術
「《風よ、我が導きに応え、そよげ》」
しかしなにも起こらない…。
「あ、あれ?おかしいな。《風よ、我が導きに応え、そよげ》」
「………」
「えっと…調子悪いかな?レム、ウィンドでもいい?」
「構わんさ」
「じゃあ…《ウィンド!》」
しかし風と言うべきか微妙な風が起こっただけだった…。
「な…なんで…?」
「そもそも俺は無理だと思って頼んだのだがな。お前がここでウィンドなんてやったら部屋がめちゃくちゃになる」
「レム…なんで…?」
「とりあえずお前が魔力の封印を受けていた理由から説明しようか。お前の魔力を封印していたのは他ならぬ主人…お前の父親さ」
「なんで父さんが?」
「主人のオリジナルは『魔術の転移』といってな、対象の魔力をほかの対象に移す事で魔力を封印する能力を持つ」
「でも、そんなことしてなにが…?」
「話は最後まで聞け。お前の魔力は量、質共に超一級品だ。それこそ、世界中の魔術師が羨むくらいな」
「ヴァンと比べると?」
「いい勝負じゃないか?もっとも、あっちは特別な訓練をしているようだから、総合的には負けるが」
「そうなんだ…」
「話を戻すぞ。確かに魔力は一級品だが、そんな魔力、ド素人の魔術師に使える訳がない。現に、お前、俺が来るまで体、弱かっただろう?」
「うん…」
「それは体内の魔力を正しく制御できていなかった証拠だ。単純にいうと、普通の見習い魔術師は軽い安物の剣を持っていて、お前は最高級だが異常に重い剣を持っていたという感じだ」
「どういうこと?」
「普通のやつらは扱い安いが威力のない武器―要するに魔力だな、を持っていた。しかしお前は威力があるが扱いにくい武器を持っていた。きちんと訓練していないからとても振れないし、仮に振れても自分や周囲を傷つけるだけだ」
「うん」
「で、魔術師になるうえでこの魔力は成長の妨げになると考えた主人は、お前の魔力を俺にいくら移す事で解決をはかった。実際にそれは成功して、お前は魔術師として成長していた」
「中級とか上級が使えなかったのも?」
「封印の影響だ。主人は中級以上の魔術の扱いも、魔力の暴走を招きかねないと考え、一緒に封印した」
「じゃあさっき自然術とか術式に失敗したのは…?」
「解放された魔力をきちんと制御できていないんだろう。上級にいけばいくほど、良質な魔力は有効に働く。逆に下級は良質な魔力は、正しく制御できないと不利にしかならない」
「つまり制御に慣れないと…」
「おそらく下級以下は使えないだろう」
「…わかった…頑張るよ」
「あぁ、頑張りな」
「おやすみ、レム」
「あぁ…」
「どうなさいました、トリスト様?」
穏やかな顔をした老人が聞く。
「用ができた。明日、出かけるぞ」
「承知いたしました」
昨日の段階でシステム面は完全復活していました。中の人に感謝です!
次回はついに、アズラの父親、トリストが学園に来た!アズラの魔術を取り戻すための衝撃の条件とは!?
お楽しみに!