第七章、サモニング・ハプニング
秋休みも終わり、現在十月の中旬―遂に二年生には上級魔術である召喚術、異世術、空間干渉の履修が解禁される―
「どうする?アズラ、受けてみる?」
「うーん…そうだね、適性もあるみたいだし、一応、受けてみるよ」
「じゃあ決まりだな!何にする?」
「……異世術……」
エンカが即答する。
「いや。新学期そうそう憂鬱な気分になりたくないわ。」
「僕も…あんまり気乗りしないな…」
「俺も拒否だ」
「アタシも〜」
「………」
即答を四連否定であっさり返される。
民主主義って怖いね。
「……じゃあどうするの……」
「ヴァンさんの蒼い火の鳥かっこよかったわね?」
「確かにな。あれは…召喚術か?」
「うん、ヴァンやファルさんには契約した精霊がいて、それを召喚術で呼び出してるんだって」
「じゃあ召喚術に決まりっ!」
結局、五人で召喚術を受けることになった…。
「召喚術は、世界に存在する精霊を呼び出し、使役する魔術だ」
そこそこ若い、男の召喚術教師はそう言った。
「召喚術が上級魔術になっているのは、呼び出すことも使役することも非常に難しいからだ。特に、呼び出しに失敗しても大した事はないが、使役に失敗すると、召喚した精霊が自らに牙をむく事がある。今回の授業の最後には、実際にやってもらうが、きちんと使役出来て合格だ。
では、この世界に存在する精霊の種類だが――」
上級魔術で危険ということもあって、非常に長い講義の後、実践の時がやってきた。
「キャアッ!」
「……ッ!」
カティとエンカの二人は、呼び出しこそ成功したが、制御できず教師に助けてもらった。
「ん?」
「あれ〜?」
テムダとサクヤは呼び出しすら出来ていない。
そしてアズラは…?
「はぁ…」
やはり失敗していた。
「あー…残念だけど五人とも不合格だね。もうちょっと魔力の扱いが上手になったらまたおいで」
「あー!難しいんだよ!」
「そうね…ヴァンさんにでもコツを教えてもらおうかしら…?」
「僕はなんとなくわかってたけど」
一気に暗い雰囲気になる。
「ま、まぁ大丈夫よ!アズラ、もう十分強いんだし!」
「そ、そうだぜ!お!もう寮だ!じゃあな!」
何とかフォローしようとするカティと逃げるテムダ。性格の違いが顕著に現れた瞬間だ。
「うん、じゃあね、みんな…」
「アズラ…」
アズラくんの中級、上級魔術の制限はいつまで続くのでしょうか?
いや、私はわかってるんですけどね。