魔術祭!学園バトルロイアル!?7
「さぁ始まりました、学園バトルロイアル最終戦、残ったのは…え〜っと…?」
「……二年生のアズラ選手と…武闘大会優勝者の三年生ヴァン選手です…。…サクヤ、友達の名前忘れないで……」
「ごめんごめん、大会の熱気でど忘れしちゃって…。二人ともがんばって〜!」
「《ハイ・ブラスト!》」
「《シルド》」
「《バーン!》」
「《ウォータ》」
先手必勝とばかりに連続で攻撃魔術を放つアズラ。
対するヴァンはアズラの魔術より低いレベルの術式で防御する。
本来、ハイ・ブラストとシルドがぶつかれば例外なくシルドが消え、ハイ・ブラストが残る。同じくバーンとウォータならいくら相性に分があっても、ウォータが負ける。
しかしさすがはヴァン。一般論を覆す魔術の天才だ。すべて相討ちに持っていっている。
「こっちからも攻めさせてもらうぞ」
錬金術を行い、燃え盛る剣を造りだすヴァン。
「ならこっちも!」
同じく錬金術で、雷ほとばしる剣を造るアズラ。
ぶつかり合う雷の剣と炎の剣。
(くっ…重い…)
一歳年上とはいえ、女性であるヴァンが押している。このままではアズラの剣が弾かれるのも時間の問題だ。
「師匠、何か変じゃない?」
「うん、いつもの剣じゃないし、そんなに力が入っているわけでもない…。どうしたんだろう?」
失格者の転送先―といっても598人の生徒が一同に集まってもそれなりの広さを確保できる場所だが―のモニターで決戦の様子を観るヴェクとマリィ。二人はヴァンの不自然な行動に気づいているようだ。
「あら、二人とも。大丈夫でしたか?」
そこにファルが現れる。
「あ、ファル先輩、大丈夫です」
「それより、師匠調子悪そうなんだけど、どうして?」
それを聞いてふっ、とモニターを観るファル。
「あぁ…ヴァンには今魔力が無いのですよ。わたくしと戦った際、魔力総量の3分の2を封印した挙句、全魔力を使ったのですから。あまり強力な魔術は使えません」
「じゃあ、今なら兄貴に勝ち目があるってこと?」
「うーん…そうですね…。不可能ではない、程度のレベルでしょう」
「アズラ様ぁ〜、がんばってください〜!」
「どうした…?この程度か…?」
完全に優位に立ったヴァン。凄まじい腕力でアズラを圧倒している。
(このままじゃ…、こうなったら一か八か!)
両手で支えていた剣を片手で持ちかえる。当然、加わる力は大きく落ち、一気に抑え込まれる。
「もらった!」
(今だっ!)
ヴァンが全力で押し込んで来た瞬間、後ろに倒れながら、左手を自分の腰にあてるアズラ。
「くっ…」
腰に一瞬目をやると、アズラの行動の意味を知り、後退するヴァン。次の瞬間、ヴァンがいた場所をナイフが閃いた。
「…ルールを利用するな…、君にしろ、ファルにしろ…。学園長、やってくれるな…」
悔しそうに言うヴァン。
その瞬間、ヴァンの剣がバラバラと砕け散った。
「えっ…?」
「ちっ!」
不思議そうにするアズラ。対するヴァンは不満を隠せない。
「もしかして、チャンス!?《ハイ・ブラスト!》」
「ぐっ…《シルド…》。…負けて…たまるかぁっ!!」
ハイ・ブラストを強引に打ち消し、素手でアズラに向かう。元来の身体能力に加え、凄まじい気迫を纏い突進する様子は、まさしく鬼の様だ。
先ほどの魔術の影響で、辺りに煙が立ち込める。
「これで…終わりだぁっ!!」
アズラに向かって殴りかかるヴァン。
バコォンッ!という破壊音が鳴り響いた…。
「なっ…」
拳の先でバラバラと砕け散ったのは無色の盾。つまるところただのハイ・シルドだ。
アズラは…?
「ごめんね、ヴァン!」
ヴァンを背後からナイフで軽く切りつけていた…。
「あらあら…あんなところで使うなんて…見かけによらず鬼ですね…」
クスクスと笑うファル。
「ファルさん、兄貴は何をしたんですか?」
「あのナイフには魔術を貯める事ができるのよ。で、ちょっと前にわたくしが空間干渉を入れてあげたの。まさかここで使うなんてね…」
「でも、アズラ様の勝ちなんでしょ!?」
「わたくし的には納得いきませんが、ルール上は優勝ですね」
「やったぁ〜!」
「まったく…ファルとの戦いで全力を出し過ぎたか…」
「大丈夫?ヴァン」
「まぁ、一応大丈夫だ…。悪知恵の働くやつめ」
「あ…ごめん…」
「まぁ、経過はどうあれ、君の優勝だ。ほら、胸を張れ!」
「今年のメインイベントの優勝者は〜?」
「……二年生の、アズラ選手です……」
「「おめでと〜(う)!!」」
「やったぁ!」
―二度目の魔術祭が、無事に終わった―
次回より第七章。
季節は冬に向かいます。
数話書き貯めしているのですが、戦闘パートの少なさにビックリです…。ごめんなさい…。