魔術祭!学園バトルロイアル!?6
「それそれそれっ!」
何本もの矢を放つカティ。しかし当然、普通の直線軌道を描くものばかりではない。
「っ!?」
途中で加速するもの、大きく曲がるもの、果てはアズラに向かって誘導するものまである。
「やるわね…でも、そこ危ないわよ!」
「うっ!?」
足元に浮かぶ魔法陣。結界術の基本、束縛の結界だ。
アズラが動けなくなっても容赦なく襲い来る矢の嵐。
「《ハイ・シルド!》《ハイ・シルド!》」
簡易術式で連続で盾を作り続けるアズラ。一撃当てれば勝ち、というルールである以上、カティがあまり威力を優先していない事が救いとなった。
「さすがに、足止めただけじゃ当たらないか…。それなら…」
次の手段、とばかり錬金術で新たな矢を造るカティ。
造った矢は…?
「いくわよっ!」
速度はあまり高くない。ただ…
バキィッ!という音がする。強烈な風を纏う矢が、近くにあったあまり大きくない木を巻き込んだ音だ。
「そんなのあり!?なら…こっちも!」
アズラも錬金術で剣を造る。カティの矢と同じく、風の属性を持つ剣。
その剣を振るうと、たちまち暴風とも表現するべき風が巻き起こる。
暴風対暴風。そんなのに巻き込まれている幼木などひとたまりもない。バキバキバキッ!、と音を立てて、粉々になってしまった。
「《クイック!》」
ちょうどいいタイミングで魔法陣が消える。剣を片手にカティに向かって走るアズラ。
「もらったぁ!」
その間、驚いていたのか、何も行動できなかったカティ。
そのカティに向かって剣を振りおろす。
「…えっ!?」
「ざんね〜ん。バッチリ対策はしてあるわ」
その剣はカティには届かず、代わりに壁の様なものに阻まれた。
「《スプラッシュ!》」
至近距離に水をばらまくカティ。どうにもこの壁はカティの攻撃のみ通すようだ。
水を避けるため、少し後退するアズラ。しかし…
「!?」
後退の最後の一歩を踏んだ瞬間、カチッという音がした。見れば近くの木から三本の矢が高速で飛んで来ている。
「くっ…《解除!》」
剣を消し、その時解放される風で矢を防ぐアズラ。
「カティ、さっきの壁は…?」
「ただの結界術よ。防御結界」
「今の矢は?」
「私が仕掛けた罠よ」
どうにもカティは戦闘前にたくさん罠を仕掛けていたようだ。
「カティ、僕がここに来るの知ってたの?」
「正しく言うなら輝きの森に行くと予想したの。最近、あなたが輝きの森に行くことが多いから、そう読んだだけ」
「もしかして…ヴェクとマリィも?」
「私の差し金よ。あなたはそこまで考えていなかったでしょうけど、あそこには当然、ヴァンさんたちがいるのだから。
…さて、そろそろいいかしら?」
「バレてた?当たり前か」
「えぇ…」
「《メガ・ブラストッ!》」
「《歌唱終了!》」
二人とも会話しながら密かに魔術の詠唱をしていたのだ。
アズラは術式、カティは術歌。双方共に無色の魔法弾を放つ。
ドカン!という音がして、辺りの様子が見えなくなる。
そしてそれが晴れたとき…
「あはは…負けちゃった…」
「大丈夫?」
倒れているカティと、立っているアズラがいた。
「まさかクイックがまだ効いていたなんて…」
「効果時間ギリギリだったよ。危なかったぁ」
先ほどかけたクイックが勝負をわけたようだ。
「素手で殴ってくるのも予想外だったわ…」
「ルールがルールだからね。一番早い方法だよ」
「ふぅ…やっぱり筋書き通りにはいかないものね…。がんばってね…アズラ、優勝してよ?」
「うん、がんばるよ」
そうして失格になったカティは学園に転送された。
「まもなく星1地域が封鎖されま〜す」
「……残る参加者は学園に向かってください……」
「じゃあ、行こうか」
学園に向かって歩きだすアズラ。
「ふっ…遅かったな…君とわたしが最後の参加者だ…」
「ヴァン…」
学園に戻ると、講堂跡にヴァンがいた…。
「残りの参加者は片付けておいた。さて、始めるぞ…」
「…はい」
―最終決戦、開始―
次回は、魔術祭編最終話!
強大な魔術師のヴァンにアズラは勝てるのか?
お楽しみに!