悪夢三たび、恐怖の授業!
薬学―その名の通り薬の扱いや作り方を学ぶ授業だ。普通にやっていればなんの危険もない、普通にやっていれば…。
「薬学…マジで受けるのかよ…?」
「あまり気乗りしないけど、やらなきゃいけないのよ…」
「知ってるのか!?今回は『毒薬』の調合だぞ!」
「でも…さすがに作った薬を飲ませる。なんてオチはないでしょ?」
「ミランダだぞ…?」
「気をつけましょう…?入院したくないわよ…?」
普通にやりたい生徒がいても、普通にやりたくない教師なら、授業は普通ではなくなるのだ…。
「今回の授業では、毒薬を作ってもらいます。作ってもらうのはもっとも基礎的な毒の『ダメージ系』です。
必要な材料は『腐敗水』…これは特別な薬を加えた水なんだけど購買にあります。普通の水でも代用できますが、効力が弱まるので、できれば腐敗水を使ってください。あと、『新月草』と果物です。
作成の手順は実験場にある本を参照してください。作成の期限はありませんが課題を完了するか放棄するまで次の授業の申請はできませんので注意してください。
この場で放棄してもらっても結構ですし、この後でも管理棟の私の部屋に私はいますので、質問なり放棄の意思表示をすれば私もその意思に応えましょう」
そう言ってミランダはさっさと出ていった…。
こうして見るとクールで立派な教師なのだが…。
「よし、行こう」
「えぇ、行きましょ」
「……死にたくない……」
「あら…あなたたち…」
「今回は?」
「いつもよりだいぶんましにしてあげたわ。気をつけることは…新月草くらいね」
クスクスと笑いながら言うミランダ。
「……何か…企んでる……」
「あら、よく気付いたわね?」
そう言って棚から何か取り出す。
「これ、な〜んだ?」
手に持っているのは草。ただ片面はかなり白っぽい緑、もう片面はかなり黒っぽい緑だ。
「なんですか、それ?」
「これは『表裏草』という草よ。効能はいろいろあるけど、代表的なものに『薬の効果逆転』があるの」
「まさか…それを…」
「えぇ、提出した薬に入れて、飲んでもらうわ。ちゃんと毒薬になっていれば解毒薬になるから害はないわ。ただ、失敗して回復薬とか解毒薬になっていたら…?」
「わかりました…では、失礼します」
「がんばってね〜♪」
ひらひらと手を振るミランダ。
「本気で殺す気じゃねぇだろうな?」
「失敗しなきゃいいんだよ〜」
「ほんとに、失敗できないよ…?」
恐怖の薬作りが始まる…。
相変わらず妙なことばかり考えるミランダ先生。実は初期設定には存在しない人でした。どうにも名前のあるキャラが少ないと思ったので、連載中に考えました。