プロローグ、責任者達の悩み
―入学式後―
コンコン、と扉を叩く音がする。
「失礼します。新入生のリストを持ってきました」
そう言って入学式にアナウンスを務めていた女性が学園長室に入った。
中にいた二人の人物―この学園の学園長と教頭だ。
「ご苦労でした」
厳しい顔をした女の教頭は女性に労いの言葉をかけてリストを受け取った。
女性はリストを渡すとすぐに部屋を後にした。
「これが今年の新入生ですか…今年が八年目でしたか?」
優しげな顔をした男の学園長は教頭に聞いた。
「えぇ、この子たちには『あの』過酷な仕事をしてもらわないといけないのですね…」
「『アイツ』はいつまで私たちを困らせれば済むのでしょうか…」
「それこそ、この世界がある限りでしょう。学園が消えても次は地上で暴れると思います。もっとも、次で終わって欲しいと思って百十八年になりますけど」
「もう失敗は許されないですからね…」
「今年の子たちにはがんばってもらわないといけませんね…」
その言葉を最後に、部屋の中は静寂に包まれた…。
―その日の夜―
再び学園長室にノックの音が響く。
「どうぞ」
女性の声が部屋から聞こえる。
「学園案内の報告をしにきました」
そう言って昼間も来た女性が部屋に入った。
「どうでしたか?」
そう学園長が聞くと、
「はい、新入生二百人中、病院室送りになったのは四組、十二人です。そのうち二組は五人全員です。あと…」
女性は少し言葉に詰まる。
「あと?」
教頭が聞き返すと女性は続ける。
「あと…不思議なことなんですが新入生の誰かが『護法』を使ったという報告がありました。十六歳になるか、学園に入学するまで魔術の履修は禁止されていますので、使えるのはおかしいかと」
「別に、無視して習ったとかいうことではないのですか?」
「いえ、それがその組の全員がとても不思議そうな顔をしていて、案内係が言うには全員が違うそうです」
「『シールドリング』などは?」
「無かったそうです」
「そうですか、分かりました。調べておきます」
「以上です」
女性は部屋を出た。
「…後で、確かめるとしますか…」
次回より本格的に学園生活がスタート!?
もしかすると設定の説明をするかもしれません。