誘拐事件、天才魔術師と究極剣士2
今までに少し登場したあの人物が再登場します。
現在十二時半。タイムリミットはあと一時間半だ。
「ルートは…やっぱり学びの木から獣牙の寝床、死霊の大樹かしら…?」
「いや、今獣牙の寝床には魔物が大量発生しているらしい。あいつらとの戦闘は避けられないだろうし、ここはほとんど魔物のいない輝きの森経由だろ?」
「そうだね。少しでも魔物を避けるなら輝きの森がいいと思うよ。死霊の大樹までだいたい一時間くらいだと思うし、通った事のない輝きの森でも大丈夫だよ」
「…そうね、そうしましょ。じゃあ急ぐわよ!」
学園を出て、学びの木を走る。数匹の魔物と遭遇したが、そんなものは敵でもない。
そして三人は輝きの森に踏み入る…。
「…侵入者…だな…。こちらに向かっている…」
「排除…いたしますか?」
「そうだな…。しかし最近は退屈だったからな、今回はわたしが行こう」
「…あなたが顔を会わせるということは三年生ではないのですね?わかりました、わたくしは影から見ている事にしましょう」
「すまないな。だが一応言っておくが、どんな事があっても手出しは無用だ」
「わかっています。ただ、あなたが呼べば現れます。覚えておいてください」
「では、行こうか?」
「えぇ…」
「本当に魔物がいないわね…」
「道や木も整備されてるし、誰かが管理しているのかもね」
「一本道だし、たまに立て札もある。親切じゃねぇか」
「管理者がいるなら感謝しとかないとね」
話しながらも足は止まらない三人。入っておよそ十分、現在一時過ぎ、時間に余裕はある。
ただそんなに甘くはない…
「止まれ」
急に目の前に一人の女性が立ち塞がる。服装は三年生、不良…ではなさそうだ。
「急いでいるんです!通してください!」
「残念だが、それには応えられない。侵入者は排除する」
「何よ!私たち何もしてないわ!」
「ここに入ること自体が、罪だ」
「そんなこと…学園が認めねぇぞ!」
「残念だが、学園の許可はある」
「あなたは…いったい…何者ですか!?」
「わたしか…?わたしはヴァン。この森の『管理者』だ」
「あら…あの子たちでしたか…。面白くなりそうですね…」
木陰から、もう一人の女性が呟いた…。
―究極の魔術師との戦いが、始まった―
第二章でちょっとだけ登場したヴァンが敵として現れました。名前こそ登場しませんでしたが、第三章にもセリフはありました。