不穏な動き
魔法銀編、最終話です。
「ここに来るのも久しぶりね…」
命の洞穴には命玉という特産物があるが、かなり希少で、なかなか見つからない。また、ここの湧水は薬の効果を高める能力があるが、不要な成分も多く、精製が面倒で、鏡の湖の水の方が楽なため、大多数の生徒は鏡の湖の水を使う。さらに、雪山や火山に行くために通る必要もないという、様々な要因があるため、あまり来る人がいない地域なのだ。
事実、この三人がここに来るのも、一年のとき魔法銅を採りにきた後、一度だけ命玉を探しに来て以来だ。
「鉱脈は…中央辺りらしいぜ」
「急ぎましょう。大々的に広まってるみたいだし、いきなりの出現だからあまり量もないはずよ」
「そうだね…二人とも、ちゃんとはぐれずに着いてきてる?」
「はい、大丈夫です」
「面白そうな場所多いのに…。残念だなぁ…」
「走るぞ!」
「ふぅ…なんとかなくなる前に着いたわね」
五人は無事に魔法銀の鉱脈の前にたどり着いていた。大きな岩のような鉱脈だったらしく、まるまる銀の山がそこにはあったようだ。
…もっとも、もうずいぶん採り尽されたようで、とてもこぢんまりとした山になっているが。
「そうね…私たち五人分とエンカとサクヤの分…ちょうどくらいしかないわね…」
「いいじゃねぇか。こんなの早い者勝ちだろ?」
「そうだね、じゃあ採ろうか?」
「待ちな!」
採掘を始めようとしたアズラたちの後ろから、の太い声がした。
「その銀は俺たちがいただく」
「ガキどもは引っ込んでな!」
声の主は二人。三年生の不良のようだ。
「こんなの早い者勝ちだろ?お前らが帰りな」
「んだと…?少し痛い目に会いたいようだな…?」
「覚悟し…「《パラライ》」…がっ!」
不良が言い切る前にカティが麻痺魔術を詠唱し終え、不良二人の動きを止めた。
「なにしやがる!」
「ただの麻痺魔術よ。アンチで解けるわ」
「なんだよ!アンチって!」
「さ、採掘して帰りましょう?」
不良を完全に無視して銀を採る五人。大した量でもなかったので早々と終わった。
「じゃあ行きましょ?」
「じゃあね、変な人たち。バイバ~イ」
麻痺が解けた二人…
「…くそっ!あのガキどもバカにしやがって…」
「復讐、してやりましょうか…?」
「そうだな…。ただ奴らはおそらく俺たちより強い…。普通にやったらおそらくかえりうちにされるだろうな…」
「俺にいい案がありますぜ…。『アイツ』を使うんです」
「『アイツ』か…、そうだな…。よし!その作戦にしよう」
不良二人が何かを企んでいる…。
次回より章末イベント。遂に『アイツ』が登場します。この小説でかなり上位に入る力の持ち主です。
お楽しみに!