第四章、アズラ、初めての挫折
今日から第四章。季節は春です。
冬休み明けの一月――それぞれの生徒が現在の学年でいられる最後の季節が始まった――
そして一年生は遂に中級魔術の履修が解禁される――
「やっぱ投影だ!投影!」
「私は術歌がいいのっ!」
「……結界術……」
三者三様の意見が聞こえる学生課。
「あの~…どうなさいますんでしょうか…?」
壮絶に困っている受付のお姉さん。
「「「少し待ってください!!!」」」
「は、はぁ…」
受付も大変である。
「…ねぇ~、五人で受けなきゃダメなの~?」
「そんな事はないと思うけど…それの方が楽しいからじゃない?」
「こうなったら…アズラ!」
「アズラ!」
「……アズラ……」
三人がアズラを見る。
「「「決めて!!!」」」
「えっ…えぇっ!」
どれをとっても角が立つ状況に陥ったアズラ。
「えっ…えっと…そうだね…」
答えると二人が敵になる。
しかし…
「んじゃアタシが決める~。投影、五人、申請よろしく~」
サクヤが勝手に決めた。
「はい、わかりました」
満面の笑顔で受付をするお姉さん。面倒な状況から抜け出せたことの喜びが表情に出ている。
アズラもほっとしている。
「ありがと、サクヤ」
「へっへ~ん。今度何かおごってね」
ちゃっかりしているサクヤだった…。
で、翌日、五人は投影1の授業を受けていた。投影――錬金術と同じく、武具の精製を行う魔術。違いはほかの物質を使うか、全てを魔力で補うかである。中級魔術だ。
「基本はわかったな?なら実践だ。投影を使って目の前の的を『破壊』しろ。何を造っても構わんが、投影でないと壊れないので気をつけな」
おじさんと呼ぶべき外見の投影教師はそう言った。
テムダは槍。中心を突き、バラバラにした。
カティは弓。テムダと同じく、中心を射抜いた。
エンカは鎌。的を真っ二つ。
サクヤは銃。数発の誤射の後、的に当てた。
そしてアズラは…?
「………」
武具が造れていなかった…。
「どうした?アズラ」
「わからない…。魔力が集まっている感じはあるんだけど、投影しようとイメージすると、魔力が…なくなるんだ…」
それから十分、投影教師が五人のところにやって来た。
「うーん…カティ、テムダ、エンカ、サクヤ、君達は合格だ。ただ…アズラ、君だけは残念だが…。まぁ人には調子の波がある。また今度、挑戦したまえ」
そう言って、四人の生徒手帳に印を押して教師は去って行った…。
少し落ち込んでいるアズラ。彼は今まで、授業の履修に失敗したことはない。
「あの先生の言う通りよ。きっと、調子が悪かっただけよ」
「そうだな、ホラ、元気出せよ?」
二人が励ます。
「…そうだね、ありがとう」
少し元気になったアズラ。
「うん、また受ければいいよね!うん!」
その後すぐ開き治ったアズラ。
―ただ、これは単なる調子が悪いという訳ではないことに、今は気付くはずもなかった……。
えっと、アズラくんの投影失敗は調子が悪いだけなのでしょうか?それとも…?