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吹雪に舞う乙女、雪女騒動5

第三章最終話です。

「…なかなかしぶといガキどもね…」


断続的に氷の柱を撃ち続けるフリーズクイーン。それをアズラたちは紙一重で避け続けていた。


「ぐうっ!」


柱がテムダをかすめる。動きが確実に鈍くなっている三人。直撃は免れているものの、軽い接触程度は先ほどより何度も起きている。


「……フフッ」


女王が何かに気付き、軽く笑った…。


「くっ…はぁっ…」


当然、アズラたちにはそんな事気にすることや、考える余裕などない。


「このっ…。…なにっ!!?」


柱を跳んで避け、着地したテムダが急に凍りついた。テムダの影には一人の少女、フリーズプリンセスがいた…。


「完全に…詰んだね…」


「誰か…助けて…」


カティがそう願った瞬間――




「イタズラが過ぎるんじゃない?クイーン?」


純白の女王―まさしく雪の女神と形容すべき女性が現れた。


「…グレイシャル…。ふん、呪われた身のアナタに何が出来るの?」


「あら、さっき助っ人に会ってね、一時的にだけど力が戻っているのよ」


そう言って指を鳴らすグレイシャルと呼ばれた女性。刹那、周囲で暴れていた吹雪がピタリと止んだ。


「お前ら!さっさと攻撃しろ!」


今までどこにいたのか、急にレムが現れ、怒鳴った。


「え…えぇ!」


カティが錬金術で炎の弓矢を造る。アズラは術式の詠唱を始めた。



一気に形勢逆転。フリーズクイーンたちは炎に非常に弱いため、吹雪で炎を起こせないようにするが、それがなくなった今、炎で致命傷を受けるのは明確だ。


数本の矢が飛ぶ。女王はギリギリで避けるが、連続で飛来する矢で反撃が出来ない。

プリンセスが一度、二人の邪魔を試みたが、グレイシャルに阻止された。


氷と炎の激突の中、アズラの詠唱が終わる。宣言する魔術はもちろん…


「行けっ!《バーンッ!》」


巨大な炎が女王に迫る。矢の回避に精一杯だった女王は炎を避けられない。


「…盾を」


グレイシャルがなぜか雪の盾を作ったが、炎は止まらず、女王に直撃した。


「キャアアァァッ!!」


弱点である炎を受けた女王はその場で倒れた。ただ、あの盾で炎が少々軽減され、絶命には至らなかった。






「どうして…こんな事をしたの…?」


グレイシャルがフリーズクイーンに問う。


「…この子供たちが…学園付近での猛吹雪を私のせいにしたのよ…。そりゃあ、確かに、春になったら学園に猛吹雪を起こして困らせようとは思ったけど…」


「…それは、私の力が衰えたから?」


「えぇ…いつもこの山ではずっとアナタが一番、それを見返してやろうと思ったの…」


「えっと…グレイシャルさん?」


「どうしたの?アズラくん?」


「…?どうして、僕の名前を?」


「そりゃあ私はここを守る精霊ですもの。学園から報告は受けていますわ」


「そうなんですか…。えっと、このフリーズクイーンは魔物じゃないんですか?」


「いいえ、魔物よ。でも今までは平和的に、自己防衛のみで、自分から一切危害を加えないように私と約束していたの。ただ、今年、私が誰かに呪われて、本当の力が使えなくなってからは約束を破っていたわ。クイーン、わかっているわね?」


「えぇ、わかったわよ。これからはきちんと約束は守るわ」


「だそうだから貴方達も彼女を許してあげて?」


「はい、わかりました」


納得するアズラ。


「で、ホントにアンタが地上での吹雪の原因じゃないんだな?」


テムダが女王に聞く。


「しつこいわね!私じゃないって言ってるでしょう!」


「え…ちょっとテムダくん、その話もっとよく聞かせて?」


「ん…あぁ…」






「なるほどね…。犯人は見当ついたわ…。スリート!出ていらっしゃい!」


何もない空間に怒鳴るグレイシャル。すると、その場所に雪が集まり…


「なぁにー、お母様?」


グレイシャルを子供っぽくしたような少女が現れた。


「『なぁにー』じゃ、ありません!また学園の人達を困らせて…。来年は紋章授与の年だと何度言ったらわかるのですか!?こんなのじゃ契約してくれる人がいませんよ!」


「べっつにー、契約なんてしなくていいもん。ずっとお母様と一緒にいるもん」


「駄目です!仕方ありません…紋章授与が終わったら雪山を追い出しますからね!」


「えっ!えぇーっ!そんな!お母様許してください!」


「駄目です!早くその子供っぽい性格を直して、契約してくれる人を探しなさい!」


「はぁーい…、わかりましたぁ…」


渋々と返事し、しょんぼりと落ち込むスリート。


「ごめんなさいね、私の娘が迷惑かけたみたいで…。吹雪は私が責任持って鎮めるから許してくれるかしら?」


「はい、もちろんです!」


「ありがとう。じゃあ山を降りましょう。案内するわ」


山を降りる四人と一匹。




下山中…


「ねぇレム、紋章授与とか契約って何なの?」


「…あぁ…この世界には精霊といった種族がいて、そいつらに魔力を供給する代わりに力を貸して貰う約束が契約だ。で、紋章授与ってのが契約を行うことが出来るようになる儀式だな」


「ふーん、レムって何でも知ってるね」


「…あぁ…お前の助けになるように主人から色々教わったからな…」


「そうなんだ」


「皆さん、着きましたよ」


「ありがとうございました」


「じゃあね、皆さんお元気で」




―こうして、命賭けの雪山探険は幕を閉じた―

次回より第四章、学園も出会いと別れの季節、春に向かいます。卒業式はどうでもいいですが、入学式は重要です。

お楽しみに!

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