吹雪に舞う乙女、雪女騒動4
戦闘パートと会話パートの混ざった話です。
フリーズクイーンが戦闘体勢に入ってから、吹雪がより一層強くなっている。
手のひらにとどめていた炎はとっくに消され、凍てつく吹雪が三人を襲い続けていた。
「あははははっ!始めの元気の良さはどこに行ったのかしらっ!?」
特に何かするでもなく、三人を見て笑う女王。ただ、彼女には存在するだけで強烈な吹雪を巻き起こす能力がある。
「ふっ…ざけんなよ…《ファイア!》」
テムダが簡易術式でファイアを放つが、まわりの低温と猛吹雪で一瞬にして炎の弾が消える。
「あははっ!その程度で私を倒せると思っているの?」
そう言って、フウーッと息吹をテムダに向かって吹きかける。
「クソッ!」
息吹を防ぐため、ポーチから魔法鉄と赤いクリスタルを取り出し、ぶつける。
それで造ったのは盾、しかも普通の盾でなく、攻撃を受ける面が燃え盛る炎の盾だ。
「無駄よ!」
息吹を受けとめる盾だったが…
「な…なにっ…」
盾は水色に変色し、凍りついていた。
「次はあなたの番よ!」
もう一度、凍りつく息吹を吹きかける女王。
「いけるか…?《風よ!我が導きに応え、退け!》」
アズラが寸前で割り込み、自然術で息吹を返す。
しかし相手は氷の女王。凍りつくなんてことが起こる訳がない。
「…凍らせて飾りにでもしようかと思ったけど…面倒ね、殺しましょう」
そう言って、腕を振るう女王。腕の軌跡に鋭い氷の柱が現れ、三人を貫こうと飛ぶ。
「防げないわ!かわして!」
カティがハイ・シルドで阻もうとしたが、そんなもの障害でもないかのごとく、安々と突き破る氷の柱。
三人はなんとか、凍てつく体に鞭打って避ける。
「あーっはっはっ!いつまで耐えられるかしら!?」
次々に氷の柱を作り、撃ち出す女王。三人に勝ち目はあるのだろうか…?
その頃、舞雪の山の別の洞窟では……
「あら…久しぶりじゃない…『ムスペイル』」
ムスペイルと呼ばれた者が、純白の女性と話していた。
「あぁ、しばらく会っていなかったな。どうだ、娘の様子は」
「えぇ元気過ぎて困るわよ。来年はもう『紋章授与』の年だっていうのに、まだまだ子供で…」
「そうか…」
「で、何の用?貴方が世間話をしに私のところに来る訳ないでしょう?」
「あぁ…少し、手伝ってほしいことがあってな…」
「…わかったわ…。最近、あれも良からぬ事を企んでいるみたいだし、手伝える限りの事はしましょう。ただ、私は呪われてるから満足に力、使えないわよ?」
「それなら問題ない。俺の魔力を貸してやる」
「そう、ありがとう。でも、それなら貴方が戦えばいいでしょう?」
「そういう訳にはいかない。俺は今、戦えない」
「わかったわ。では、行きましょう?」
「あぁ…。それともう一つ…」
「わかってるわよ。何年の付き合いだと思ってるの?」
「…すまない、恩に着る」
―もう一人の女王が、動き出した―
今回の相手はかなり強力な魔物で、普通に戦えばアズラくん達に勝ち目はありません。
やっぱり『ムスペイル』と『雪の女王』がなんとかするのでしょうか…?
お楽しみに!