吹雪に舞う乙女、雪女騒動2
「じゃあ行ってくるから、万が一私たちが帰って来なかったら捜索、よろしくね」
「……うん…わかった…。…でも……」
「どうして〜こんな吹雪の中、舞雪の山なんかに行くの〜?」
「俺の金を!」
「乙女の肌を!」
「「ないがしろにした奴を懲らしめに行くのよ(んだよ)!!」」
相変わらず見事なシンクロだ。
「……つまり…アズラは…その巻き添えと……?」
「そんなところだね…」
「……頑張れ……」
「うん…頑張るよ…」
雪山に向かう三人。それを見送る二人は…
「さっむ〜い!早く部屋に戻ろ〜!」
「……うん…それにしても…カティ…変わったね……」
「そうだね〜、ここでアズラたちと出会ってからじゃない〜?元気はいいことだよ〜」
「……うん…でもサクヤみたいに…ならないでほしい……」
「ひどっ!」
少しだけ昔の感傷に浸る二人だった…。
で、雪山組はというと…
「うがっ!やっぱ寒っ!」
「うう〜、意気込んで出てきたからのこのこ戻れないよ〜」
幼き荒野で寒さに震えていた。
「で、雪山ってどっち?」
一人、なに食わぬ顔でいるアズラ。
「…俺を忘れるな」
…訂正、一人と一匹。
「「というかどうしてアズラは平気なのよ(なんだよ)!」」
やはり二人で叫ぶカティとテムダ。
「あぁ、これだよ」
そう言ってアズラが見せたのは魔術祭で買った指輪――だが、石の色が赤くなっている。
「なんだこれ…?」
「この指輪、石を付け替えれて、いつもの無色の石は魔力の扱いがうまくなるんだ。で、この石は火山で採れる『炎石』と言って、まわりの温度を上げるんだけど…効果を高めるために指輪をしてる人にしか効かない構造になってるんだって」
ちなみに自然術2の授業の時、アズラの指輪は無色だった。それのおかげで術式5のグランドを使っても魔力が乱れなかったのだろう。
「うう…ずるいわよアズラ…」
「そりゃ雪山に行くんだから、用意はしっかり…ってもしかして二人とも何も用意してない!?」
当然、勢いで出てきた二人が用意などしてる訳もなく…
「ハァ…わかったよ…この石、指輪から外してレムに持たせるから…。レム、寒そうにしてたら近くに行ってあげてね?」
「…まったく…世話のやける友人たちだな…」
文句を言いながらも二人のそばに寄るレム。
「はぁ…あったかぁい…。えっと…雪山はここから南ね」
思い出したように雪山の場所をアズラに教えるカティ。
「…南って…ここもひどい吹雪だけど、南なんかと比べられないけど…?」
それを聞いて南を見る二人。
「「………」」
そして絶句。南の吹雪はもう何も見えないとかいう次元だ。
「ね…、帰ろう、二人とも…」
たしなめるアズラだったが…
「キャハハハッ!」
またあの女の子の声が聞こえた…。
最悪な事に、それが二人の理性を叩き壊してしまった………。
「…テムダ…?」
「…おう…」
「ちょっと二人とも!」
「…行くぞ…」
「…えぇ…」
「ま、待ってよ〜!」
全速力で南に駆けて行くカティとテムダ。それを追うアズラとレム。
―遭難必至の、雪山大捜索が始まった―
えーっと、感情に任せて準備もなく猛吹雪の雪山に向かう二人でしたが、皆さんは『絶対に』真似しないでください。最近は山での遭難事故とかも多いですし、なにより命が一番大事ですから。