寝ている人にヒップドロップはメッ!ですよ
自然術2編、最終話です。
スリープフォックスを倒した五人(三人?)の次の仕事は…
「カティ…起きてよ…」
体をゆさゆさと揺らし、カティを起こそうとするアズラ。
「…ん…ふわぁ…アズラ?」
結構あっさり目を覚ましたカティ。
「あれ…キツネは…?」
「僕たちが倒したよ」
「うん…ありがとうね…」
ふわぁともう一度あくびをしながら立ち上がるカティ。
そのいくらか離れた場所では…
「……起きろ…テムダ……」
エンカとサクヤがテムダを起こそうとしていた。
「……あと…五分…」
寝坊のお決まりの台詞を吐き、起きないテムダ。
「さっさと〜、起きろ〜!!」
「うぎゃほっ!!!」
意味不明な言葉を発させられ、無理矢理起こされたテムダ。サクヤが思いきり腹にヒップドロップしたのだ。
「何だよ!つか重い!降りろ!」
「女の子に重いはタブーだよ!」
再び猛攻を始めるサクヤ。マウントを取っているのでかなり有利だ。
「ごふっ!うがっ!し…しぬ…」
「……プロテクターあるから…死なない……」
助ける気のないエンカ。
「必殺〜、パイルバンカー!」
いつの間にかテムダを抱え上げていたサクヤ。
「ちょ、待て!悪い!俺が悪かった!」
「せ〜の〜!」
次の瞬間、ドカンという音がしましたとさ……。
「助けろよ…お前ら…」
何とか緊急帰還にならなかったテムダ。
足元には空のビンが三本転がっている。
「悪いのはテムダでしょ?女の子に重いは絶対駄目よ」とカティ。
「なかなか起きないテムダが悪いんだよ。カティはあっさり起きたし」とアズラ。
「……自分は…常に…テムダより…サクヤの味方……」とエンカ。
「俺が悪いのか!?」
当然三人は…
「「「うん」」」
「まじかよ……」
がっくりうなだれるテムダ。
「で〜、課題は〜?」
「あ、そうだ。テムダ、カティ、どうする?」
あの状況の中、アズラ、エンカ、サクヤは維持し続けていた。奇跡というかなんというか……。
「湖まで戻らないと、ね?」
「……自分たちの…水を…わけるのは……?」
「どうなんだろう?」
「アタシたちがちゃんと証明するから大丈夫だよ〜」
「まぁ駄目ならもう一度来るからいいわ。アズラ、もらえる?」
「うん……はい、カティ」
「ありがと」
「……はい…テムダ……」
「…わりぃな」
学園に戻る五人。帰りはもう魔物とも出会わず、楽な道のりだった。
で、五人は自然術教師の部屋にいた。
「あぁ、早かったね。君たちが一番だよ。じゃあ水をそれぞれこの器に入れてね」
五人とも器に水を入れると、教師が話し始めた。
「うーんと、アズラくん、エンカくん、サクヤさんは文句なしの合格だよ。カティさんとテムダくんは…ほかの人の魔力が混ざってるね?どうしたんだい?」
「えっと…帰りにスリープフォックスに遭遇して、私とテムダが催眠術にかかってしまいまして、水の維持ができなくなりまして…アズラとエンカから水をわけてもらったんです」
「なるほどね…。どこでもらったんだい?」
「鏡の湖と始まりの草原の境界ぐらいです」
「そうですか、では二人とも合格です。生徒手帳を出してください……はい、これで終わりです。お疲れさまでした」
「相変わらずいい先生だねぇ〜」
「あぁ、融通も利くし、まともな先生だな…あれも少し見習って欲しいぜ」
「あれってだあれ?」
「ミランダだよ…って先生!?」
いつものごとく後ろから登場のミランダ。
「テムダくん…いまから私の部屋にいらっしゃいな♪ちょっと教えたいことがあるから♪」
笑顔を顔に貼り付けてバッチリ死刑宣告した…。
「いや、ごめんなさい先生!頼む、お前らからもなんとか言ってくれ!」
「……帰ろう…みんな……」
「そうね、また明日ね」
「バイバ〜イ」
「うん、バイバイ」
「無視かぁ!!」
「うふふふふ〜、じゃあ元気でね〜。四人とも」
その夜……
「ぎゃあああぁ!!!!!」
凄まじい絶叫がミランダ教諭の部屋から聞こえたのは言うまでもない。
ちなみに、テムダはそれから一週間、部屋に引きこもったという……。
今回はテムダくんにひどい目に会いまくってもらいました。理由はほかの人は物理的制裁に耐性がなさそうだからです。
次回から章末イベント。ポカポカと晴れた冬のある日、学園に異変が!?お楽しみに。