キツネに人を化かす能力があるってホントなのかな?
自然術2編、戦闘パートです。
「ここが鏡の湖か…」
「きれいね……」
五人はさしたる問題もなく、鏡の湖にたどり着いた。確かに、始まりの草原や月夜の野原も美しい場所だが、それと比べても遜色ない――いや、それ以上の眺めだった。
「えっと、ここの真ん中にある湖の水を持って行けばいいんだよね?」
「えぇ、それも自然術で維持しながら。やっぱり一番怖いのは帰り道、魔物に遭遇することね」
「んじゃここから最短距離で魔物けちらして進んで、帰り全速力でこの地域抜けようぜ。始まりの草原なら大した魔物いねえだろ?」
「……それがいいと…思う……」
「じゃあ行こ〜」
で、道中。
「《スプラッシュ!》」
アズラが宣言すると、大量の水しぶきが撒かれる。しぶきといっても、結構な大きさの塊で相手をそのまま吹き飛ばすくらいの水圧がある。
それに…
「グガッ!」
「ガギッ!」
「ガオッ!」
ウルフ二匹とレオ一頭が巻き込まれる。それらはそのまま地面に叩きつけられ、絶命した。
「ふう…これで一応終わりかな…?」
「えぇ、ウルフ九匹、レオ三頭、ブラッドウルフ一匹、かなりの数だったわね」
「さらにここに来るまでにウルフ五匹にレオ二頭だろ?どうなってんだここ?」
「……湖が近づいている…証拠……」
「そうか!なるほど!…だから魔物がまた出るんだな…?」
「魔力、持つかな…?」
結局、湖にたどり着くまでに、ウルフ二十匹、レオ八頭、ブラッドウルフ二匹を撃退するハメになった五人。魔力を失って動けない…かと思いきや、
「まったく…マジックゲイン持って来て正解だったな?」
グビグビと液体を飲みながら言うテムダ。
マジックゲインとは、魔力回復薬のことである。
「ほんとに…課題どころじゃなくなるとこだったね…」
「材料も簡単だったし、今後も持っておきましょうね」
「……課題…始めるから…《水よ、我が想いに応え、固まれ》」
一番に始めたエンカ。水は氷のごとく、カチカチに固まっている。
「じゃあ僕も…《水よ、我が想いに応え、集まれ!》」
アズラも水を維持し始めたが、エンカよりふわふわしていて、とても大きな雨粒みたいだ。
「……あ…そっちの方がいい……」
集め直したエンカ。雨粒の方が維持が楽だと判断したのだろう。
五人とも水の維持に成功したところで、全速力で道を戻る。
しかし、そう甘く行く訳もなく…
目の前に一匹のキツネが現れた。魔物にしては結構かわいい。
「ごめんね、通してキツネくん」
キツネを見ながら謝って通ろうとするカティ。
しかし、その目を見た瞬間…
「あ…れ…、急に…眠…く……」
その場でパタリと倒れ、眠るカティ。
「おいてめぇ何をした!」
テムダもキツネを見るが、カティの二の舞になってしまった。
「サクヤ、アズラ、スリープフォックスだ。目を見ると催眠にかかるよ!」
「ええ〜、相手見ちゃダメなの〜?」
「とりあえず…《ブラスト!》」
感覚だけでブラストを放つアズラ。結構正確にキツネに向かうが…
「《…シルド》」
それを盾で防いだキツネ。魔術の世界、当然魔物にも魔術を使う者もいる。
「《…サンダー》」
今度はキツネの攻撃。あまり上級の魔術ではないが…
「《シルド!》」
こっちに向かうバチバチという音を聞いて、防御魔術を使うサクヤ。
しかし相手は切者で……
「わぁっ!」
途中から雷が弧を描いていた。盾を避け、サクヤに命中した。
「《ヒール!》」
怪我はなさそうだが、アズラが一応回復しておく。
相手を見れないうえ、相手は賢い。そのうえ二人が眠らされているので逃げられない。かなりの苦境だ。
「こうなったら……」
アズラが詠唱を開始する。キツネも負けじとサンダーを放つが、双子のシルドに阻まれる。
アズラが詠唱を完了した瞬間、指輪が光った。
「《グランドッ!》」
アズラが叫ぶ。刹那、地面が鋭く隆起し、キツネを襲う。大きなダメージを受けながら、高く打ち上げられるキツネ。それをサクヤが飛び上がって踵落としで地面に叩きつけ、エンカがストーンでプレスした。
二人はすやすや眠ったまま、スリープフォックスは絶命した……。
第三章通常編も後一話。章末イベントは雪山探険っぽくなりました。