帰還…そして調合
薬学2編最終話です。
「あれ…ここは…?」
気がついたアズラ。隣のベットではカティが倒れている。
「あなたたち…なんであんな事したの…。異世の密林なんて三年生でも厳しい場所なのに…」
ハァ、と呆れた様子でため息をつく保健医。
「あ…そうか…ビックベアから走って逃げていたら変な場所に着いたんだ…」
状況を理解したアズラ。
「…ん…んんっ…」
隣のカティも目を覚ます。
「あなたも気がついた?今後はあんな無茶な真似をしたらダメよ?」
そう言ってほかの患者のところに向かう保健医。
「先生?僕たちは…?」
「あぁ、もう勝手に退院していいわよ。あと、そこのテーブルに持ち物は置いてあるから」
テーブルを見れば素材袋や魔法金属の袋が置いてあった。ウルフファングは一つしか採れなかったが、しっかりと置いてあった。
「一つ…ね…。残りの三人に期待しましょうか…?」
「そうだね…大丈夫だよね…」
少々不安な二人であった…。
獣牙の寝床に採取に行った日は帰り次第解散だった。
故に三人は二人が死にかけたことすら知らない。
で、翌日に実験場に集合して……
「わりぃ!」
「ごっめ〜ん!」
「……ごめん……」
どうにも三人は採取に失敗したようだ…。
「…どうして…見つからなかったの…?」
「いや、な、ちょっと…な…」
「……サクヤとテムダが…学びの木で…果物食べまくってた……」
「わあ〜っ!エンカァ!」
「こういう時の保険にエンカを入れたのに…」
「無理だったの?エンカ」
「……うん…無理……」
「ま、まぁ一つはあるんだろ?とりあえず課題分は作れるよな!?」
強引に話を変えるテムダ。
「はぁ…えぇ、提出分と少しはね…」
呆れながらも話題転換に乗るカティ。
「よっしゃ!じゃあ作ろうぜ!」
今が好機と一気に逃げの体勢をとるテムダ。
「うん、今度大変な目に会ってもらうからいいよ」
しっかりと残酷な宣告をしたアズラだった…。
「あらあら…天才の二人+αじゃない。どう?楽しかった?」
着いて早々、思い出したくないことをぶり返す薬学の女教師。
「αって俺たちか!?」
「あなたたち以外に誰がいるの?だってアズラ君とカティちゃん、一年生なのに異世の密林に踏み入る天才(訳:馬鹿な奴ら)よ?今度からもっとしっかりした課題(訳:たちの悪い面倒な課題)を準備しましょうか?」
「やめてください先生…」
「冗談よ(半分くらい)。で、どうして異世の密林なんかに行ったの?」
「あのですね…やたらと足の速いビッグベアに追われて…右も左もわからずに逃げていたらいつの間にか…」
「なるほどね…面白いことを聞いたわ。しばらく獣牙の寝床を中心に採取課題を出しましょうか…?」
遊びのネタを得た女教師。
それを聞いたアズラとカティは…
((早く学生課に報告して討伐のアルバイト出してもらおう………))
そう誓ったのだった。
次回より章末イベントです。2話の会話パートの後、2話の戦闘パートの予定です。ご期待ください。