草原に群れる茶の獣
とりあえず、ごめんなさい。テストが終わって一安心していたら更新を忘れていました。
薬学2の講義を受けた翌日の夜、向上草と月光草を採取すべく、集合した五人。
「んじゃ俺とアズラで月光草を採ってくるわ」
「私たちは向上草ね。わかったわ」
そう言って各々の目的を目指して出発しようとした瞬間…
「あら、今から出発?」
「わぁっ!?」
後ろから声をかけられた。
「あらあら、幽霊にでも…ってあなた達そんなことじゃ驚かないわね…じゃあ私は幽霊以上に怖い存在?」
「…ある意味でな…」
ぼやくテムダ。
「それはそうと、昨日病院室に入院した子の数を教えに来たの。何人だと思う?」
「……受講者…マイナス五人……」
「あらあら正解、正しく言うなら三十九人ね。あなた達だけよ?今日元気な子。この分じゃ薬も期待できるわね。がんばってね〜♪」
そう言って去っていく女教師。後ろ姿を見て呆れながら話す。
「…授業の時の性格が偽物か…」
「…こっちが地ね…」
「…とりあえず、行こっか…」
各々の目的地に向かった。
「《ブラストッ!》」
走りながらアズラが叫ぶ。
この日の始まりの草原はウルフが大量発生していた。振り向けば一面茶色。二人は逃げながら戦っていた。
「《ブラスト!ブラスト!》」
アズラが使っているのは簡易術式。術式より多くの魔力を使う代わりに、詠唱を不要にした魔術グループだ。
「くそっ、どうすんだアズラ!」
「倒してはいるんだけど…《ブラストッ!》減らないよ!」
確かにウルフは倒れている。しかし母数が多く一向に減らない。
「アズラ!広い範囲を攻撃できる魔術は無いのか!?」
「あるにはあるけど…詠唱が間に合わないよ!」
「んじゃ俺が食い止めるからそれを頼む!」
そう言って様々な魔術でウルフを牽制するテムダ。
そして…
「ガルッ!」
「このっ…!まだか!アズラ!」
「…できた!《ハイ・ブラスト!》」
術式4のハイ・ブラスト。ブラストと同じく、無属性の魔法弾を撃つ。もっとも大きさや威力は比ではないが。
ウルフを巻き込み、ばく進する魔法弾。しかし…
「おい!ちょっと!タンマタンマ!」
魔法弾はテムダすら巻き込もうとしていた。かなり遅いが、テムダの詠唱は間に合わない。ただアズラはその程度は想定内だったらしく、次の詠唱をしていた。
「《ハイ・シルド!》」
アズラが叫ぶとドーム状のバリアがテムダを覆った。魔法弾はバリアの部分だけ消え、通り過ぎるとまた復活した。
魔法弾が消えたころにはまわりにいたウルフは消え去っていた。
「ったく…アズラ…お前な…」
かなり怒っているテムダ。当たり前だろう。一歩間違えれば入院だったのだから。
「ごめん…でもあれが一番有効だと思ったから…」
確かにウルフは全員いなくなった。
「…まあいいか、無事だったし。ほら、行こうぜ」
歩き始めるテムダ。その後を追うアズラ。出会って四ヶ月、お互いの信頼はずいぶん深まっているようだ。
月夜の野原で月光草を採り、学園に戻る。南門には三人が待っていた。
「おかえり。大丈夫だった?」
「うん…途中でウルフの群れに襲われたけど…はいこれ、月光草」
「……じゃあ…乾燥させておくよ……?」
「うん、お願いね?」
「頼むよ〜エンカ〜」
女子寮に戻る二人。大量の草を運ぶ三人。寮への道中、素朴な疑問をテムダが聞く。
「エンカ、お前草の乾燥のやり方知ってるのか?」
月光草や向上草のような魔法薬の材料は乾燥が難しい。失敗すると採取のやり直しだ。
「……大丈夫…おばあちゃんの薬屋で…何度もやってたから……」
「サクヤは?」
「……サクヤが…やると思う……?」
「あぁ…そうだね…」
納得した二人。明日は休むつもりだが、体調を崩しては明後日に支障が出る。
話もそこそこに自室に戻っていった。
次回はウルフファングの採取に向かいます。学園の地理をしっかり説明していませんが、まだまだ登場していない地域がたくさんあります。次回はそこを使います。