「ムスペイル」と呼ばれた者
錬金術1編、最終話です。
「ふん、早かったな…。目的の物は…ほう、採ってこれたのか」
錬金術教師は少し面白くなさそうに履修完了の印をくれた。
報告に行く前、五人は、歩きながら会話していた。
「ねぇアズラ、さっきの剣って結局なんだったの?」
「わからないよ…僕は普通に魔法銅で錬金術をしようと思っただけで…」
「後であのいけ好かねえ爺さんに聞けばいいだろ?」
「……アズラ…何か隠してない……?」
「何も隠してないよ…僕だってもう一度やりたいし…」
そうこう言っている内に錬金術教師の部屋の前に着いた。
「先生、質問よろしいですか?」
「なんじゃ、ワシは忙しいんじゃ。どうでもいい事を聞いたら承知せんぞ!」
不機嫌そうにアズラを睨む教師。
「えっと、さっき命の洞穴で錬金術をしたんですが…」
「なんじゃ?できなかったとかなら知らんぞ?」
「あ、いえ、そうじゃなくて、えっと、なんて言うか、変な属性が着いたんですよ」
「ほぅ…?どんな属性じゃ?」
少し興味を持った教師。
「それ以前に先生、銅の剣に『斬った相手を溶かす炎』を付与しても大丈夫なんですか?」
カティが横から質問する。
「あぁ?一流の魔術師なら造作もない事じゃが、お前らみたいな半人前にはそんな温度は出せんし、付与したところで剣が溶ける」
「先生、僕が造った剣は金色の炎を纏っていたんですが…」
「ふん、そんなことじゃろうと思った。夢じゃ夢。嘘をつくのは良くないぞ」
そう言うと机に向かい、何か書き物を始める教師。
「先生、嘘なんかじゃ…「もういいだろアズラ。聞いても無駄だ」…わわっ!」
アズラをつかんで引っ張り、部屋を出るテムダ。見ればほかの三人も部屋を出ていた。
「ったく、あの爺さんに聞いたことが間違いだったな?」
「うん〜、駄目だねあのおじいさん」
「アズラ、もういいだろ?あの爺さんは聞いても教えてくれねぇ」
「うん…」
「じゃ、解散だ!」
各人各々の部屋に戻る。
―その日の夜、錬金術教師の部屋―
「おや…あなた様は…?」
「あぁ…俺だ…」
「これはこれは、よくぞいらしてくださいました。大したもてなしはできませんが、おくつろぎください」
「いや、その必要はない。一つお前に言っておくことがあってな…」
「はい、なんでしょうか?」
「今日の夕方、『金色の炎を纏った銅の剣』を造ったという奴が来たな?」
「えぇ、半人前の魔術師が何を言うのかと思えば…冗談にも程がありますよ…「あれは事実だ」…え?」
「事実だと言っただろう?錬金術をしたのはあの小僧だが、付与属性を混ぜたのは俺だ…」
「で、ですが『ムスペイル』様ともあろう方がどうしてあのような半人前に…?」
「契約だからな…仕方ない…」
「さ、左様でございますか…」
「それだけだ。じゃあな…」
呆然とした錬金術教師を残して、ムスペイルと呼ばれた者は部屋を出た。
「ムスペイル様と交わした契約…一体あの小僧は何者なんだ…?」
すみません…、まだテストの最中でして…。実は落第しそうなくらい英語が悪いんです…。幸い片方は乗りきれたのですがもう片方が待ち受けているわけで…。数学の課題も山積みで時間があまりありません。