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決戦、封印の災厄!9

「あいつ…許さない!」

飛来する紫弾を天界術で防ぎながら、奥に走るカティ。遅れてアズラがカティの真後ろを走る。カティの後ろなら、死の魔術は飛んでこないからだ。






「今回は二人か…。前回よりかは増えたな…」

広い空洞の真ん中、棺桶とも壺ともつかない奇妙な物体の上に、ヤツはいた。


「あんたがスティンね…」


「だとしたら?」


「よくもテムダを殺してくれたわね!」

怒り心頭、烈火のごとく怒るカティ。アズラも言葉にこそしていないが、思い切り怒っている。


「我が何をした?あんな魔術に当たる奴が悪いのだろう?そもそも、貴様らは天界術が使えるのだから、防げばよかっただろう?」


「それは…」

たしかに、カティがもっと早く登っていれば、死の魔術を防ぐことも十分可能だったであろう。そういう考えでいくと、カティに責任があるともいえる。


「ふざけるな!姉さん、テムダ!何人殺せば気がすむんだ!」


「何を言っている?殺したいから殺す、それだけだ。おかしいと思わないか?我は我のやりたいことをやっているだけなのに…」

ふざけているわけではない、本心からの言葉。


「狂ってる…」


「…覚悟しなよ…。姉さんとテムダの悲しみ、十倍にして返してやる!」


「ハッ、ハハッ!いいねぇ、その目!我が絶望に染めてやるよ!」

その発言と同時に、紫色の魔法弾―テムダを殺した死の魔術が三発撃ち出される。射出系の古代禁術は詠唱、それもかなり長時間のもの、が必要だが、スティンはほとんど詠唱をしていない。


「アズラ!私の後ろに!」


「うん!」

カティの後ろに隠れるアズラ。先程から見ていて、誘導性能は軌道変更性能はないと判断したのであろう。


(《女神の盾!》)

カティの願いに応え、光輝く壁が現れる。最高の防御力を持つ盾の前では、いくら即死の魔術でも無力化される。


「…ふうん…貴様が今回の天界術使いか…」


「それがどうしたっていうのよ!」


「なあに、簡単な話さ。《ジゲンユウヘイ!》」


「!?」


「カティ!」

スティンの宣言で、カティ近くの空間が歪む。そのまま空間が口を開き、カティを飲み込んでしまった。


「さあどうする少年?我の魔術を防げる者はいなくなったぞ?」


「異次元に飛ばされたなら…「一応言っておくが、空間干渉では助けれないぞ?」…そんなの、わかってる!《テンペスト!》」

カティが異次元に飲み込まれたことなど気にせず、電撃を放つアズラ。


「…ヤケか?《ゼッタイショウヘキ》」

古代禁術の防御魔術でアズラの電撃を防ぐスティン。天界術には及ばないが、とても強固な壁を古代禁術も作ることができる。


「《ジゲンサイセイ!》」


「…ほう…」

アズラは簡易術式より古代禁術の方が時間がかかることを利用して、カティを助け出す古代禁術の準備をしていたのだ。


「ふぅ…ありがと、アズラ」


「今回は面白いな…。天界術だけでなく古代禁術までいるとは…。…そろそろ切れるか、古代の禁呪エンシェント・バンスペル…」

スティンがオリジナルを発動すると、その身体から灰色の炎が一つ現れた。その炎は瞬く間に五つに増え、再び身体に吸収された。


「…気になるようだな…。我の固有魔術の能力は、古代禁術の詠唱速度を五倍にする。これでこのような連射も可能となる…《コロセ》」

本人の異常な詠唱速度も相まって、再び死の魔術を連射するスティン。


(《女神の盾!》)

今度はアズラの前に壁を作り、カティが後ろに隠れる。


「アズラ!詰め寄って、『あれ』で決めて!」


「わかった、零っ!」

少しずつカティが光の壁を前進させる。その間にアズラがレイカから受け継いだ魔力喪失の剣、零をその手に持つ。


「…零…たいそうな剣を…」


「お前が十年前殺した、姉さんの剣だ!」


「ほう…あの女、かなりの魔術師だったが、あれで本気でなかったのか…。貴様らの身体からエリキシルの匂いもするが、それもあの女のものだな?」


「ああ、そうさっ!」

質問のために一瞬魔術が止まった。その隙をアズラが綺麗につき、スティンを零で斬ろうとするが…?




「っ!?」


「残念だったな…。魔物を一頭、透明にして置いておいた。こいつは…なかなかしぶといぞ?…やれ…」

スティンの合図で、悪魔と龍の混ざったような魔物が現れる。それはアズラを真っすぐに見据える。


「ごめん、アズラ!そいつは自力で…」

肝心のカティは、絶え間無く撃ち出されるスティンの死の魔術を防ぎ続けていた。スティンもその辺り遊んでいるのか、カティのみを狙っている。


「このっ…」

アズラが零で斬りつけるが、硬い鱗に阻まれて、ほとんどダメージにならない。




タイムリミット、スティンの魔物が攻撃の準備を終えた。瞬時に魔力を奪う、黒い霧。それを放出しようとする。


「くっ…《ショウヘキ!》」

古代禁術の防御魔術を使うが、自分でも無理だとわかっている。覚悟して、目を閉じる…。






しかし何秒経っても魔力が失われる感覚がこない。何事かと思い、目を開けると…?


「わりぃ、少し寝過ごした」

あの男が、雷の槍で魔物の心臓を貫いていた…。


「テムダ!?」




―テムダ、復活―

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