決戦、封印の災厄!7
「あと少し!あと少しで!」
苦しい苦しい道のりの果て、スティンにたどりつく。
学園を守るため、アズラにとってはレイカの敵討ちのため、負けられない戦いだ。
「…はぁ、いまさらながら緊張してきたわ…」
なにしろ、相手は即死魔術の使い手だ。自分の魔術に自分の、さらには仲間の命がかかっているカティ。失敗も、一瞬の油断も許されない。
「俺は…何をすれば?」
天界術を使うカティ。古代禁術を使い、『零』で勝負を決めなければならないアズラ。そのような、たいそうな役割を持たないテムダ。明確な役割がないのは考えものだ。
ちなみに、スティンのエネルギーはすべて魔力である。つまり、『零』の一撃で終わる。
「今から何か出たらしんがりの役割よ。何も出なかったら…」
「僕が零で斬れるように、なんとか援護して。カティは攻撃にまわる余裕なんてないだろうし」
「何も出ないことを願うぜ…」
…その願いは、届くのだろうか…?
まぁ、当然無理なわけで。
「なんだこいつ!」
「ケルベロス…?いや、違う!」
天魔の遺跡で戦ったオルトロスや、魔女の城で飼われていたケルベロスに外見自体は似通っている。しかし、頭が四つ、足が十二本とさらに増えている。
「こんなの…聞いたことがないよ!」
家の蔵書には、『世界の魔物大辞典』というものがあったアズラ。それは一通り読んでいるが、ほとんど忘れてしまっている。しかし、これほどまでにインパクトのある魔物は、普通は覚えているはずだが…?
「テムダ!なんとかして!」
カティが先に進むために、テムダを置いていこうとする。
「無理だ!新種の魔物になんかに勝てるか!」
「勝てとは言ってないわ!時間を稼げって言ってるのよ!」
「どっちにしろ無理だ!」
ギャーギャー言い争う二人。ちなみに、謎の生命体は、アズラが適当に相手をしている。こいつは、改造生命体で、オルトロスを二体合成しただけ、というわかりやすい魔物である。故に名前などない。
「何をやっているんだ、君たちは…」
「噂には聞いていましたが…実在するとは思っていませんでした」
「「え!?」」
急に聞こえた声に言い争いを止める二人。聞き覚えのあるこの声がしたということは…?
「まだこんなところにいるのか。さっさと行け」
「ここはわたくしたちにお任せくださいな」
「ヴァンさん!ファルさん!」
空間の裂け目から、ヴァンとファルが現れる。
「先に言っておきますが、『次元』の能力はこの洞窟の制限にひっかかりません」
「あ…そうなんですか…」
たしかに、聞こうとは思っていた。しかし、先に言われるとなんかいやだ。
「アズラ!ここはわたしたちが引き受ける!進め!」
「ヴァン!…わかった、みんな!行くよ!」
再び駆け出す三人。その後ろで改造生命体と対峙する二人。
誰も知らないがこの先はスティンの封印エリアだ。
―最終決戦は、近い―