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決戦、封印の災厄!6

「さすがに俺でも、これは無理だぞ?」


「うう~、カティたちも手伝ってよ?」


精霊二人であっても、大量の魔物にはさすがに勝てないようだ。とりあえず、アズラたち三人も、魔物の撃退を手伝うハメになった。


「ある程度数が減れば、俺たちが道を作る。そのタイミングで奥に進め」


「うん、わかった」


「くるわよ!《雪風!》」

戦闘態勢に入るよう警告すると同時に、グレイシャルにもらった指輪の力を使い、緩い雪混じりの風を起こすカティ。これだけでは魔物を撃退することなどできないが…?


「みんな!温度上げる真似だけはしないでね!」


「…俺に戦うなと?」

カティの発言に少々の疑問を抱くレム。炎ほどではないが、雷も温度上昇に一役買ってしまう。上級精霊ともなれば、自分の属性以外もある程度扱えるが、やはり自分の属性が一番強い。要するに、カティの発言は、レムに対して「本気を出すな」という意味になる。


「レムくん強いでしょ?私たちの戦いやすいように配慮してよ」


「…仕方ないな…《純正強化!》」

お得意の雷を使わず、強化魔術で格闘戦を始めようとするレム。かけた魔術も、その名の通り基礎能力の向上だ。


「カティ!もういけるわ!」


「わかった!お願い!」

カティがスリートになにかを頼んだ瞬間、ウルフのような魔物がカティに襲いかかった。


「《凍結!》」


「………」

悲鳴を上げる間もなく、カティを襲った魔物は氷像と化した。先程の準備完了の合図は、相手を凍結させる魔術の発動可能のそれだったのだ。一応、氷の女王の娘とはいえ、まだ半人前のスリート。まわりの温度がそれなりに低くないと、相手を凍りつかせる魔術などは成功しないのだ。


「ありがと、スリート。《サイクロン!》」

今度はカティが、スリートに襲いかかろうとしていた魔物を撃退する。マスターと精霊同士、協力し、助け合う。理想的な戦闘スタイルだ。


「なんだ、グレイシャルの娘、ずいぶんとやるじゃないか。…俺も仕事しないとな」

一連の連携を見ながらも、適当に魔物たちの相手をしていたレム。二人の実力を確認したところで、本気で排除にかかる。


「ギャオワッ!?」

「グガッ…」

レムが雷なしで出せる本気を出したことで、様々なところで断末魔の悲鳴が上がる。やはり、格闘戦でもレムは十分強かったのだ。


「おい…さっきから全く減ってない気がするんだが?」


「…やっぱりテムダもそう思う?《メガ・ブラスト!》僕たち、倒してるよね?」

実は、この場所の近くには、魔物の巣があり、減ってもすぐに新しい魔物が現れるのだ。アズラたちは気づいていないが、このままではジリ貧である。


「…そこかっ!」

巣の存在に気づいたレム。少々の温度上昇など構わず、雷撃一閃、出入り口を狙うが…


「グギャアッ!」

魔物が数匹盾になり、出入り口を無理矢理守った。さすがは知恵のある魔物の集団、というべきだろうか?


「おいグレイシャルの娘、今俺が電撃で狙った場所を凍らせろ!」


「ボクにはスリートって名前があるの!」

文句を言いながらも、巣の出入り口(スリートには何かはわかっていない)を狙って凍りつかせるスリート。しかし、再び魔物が盾になる。


「…あそこになにかある…「!?アズラ、危ない!」…えっ!?」

レムやスリートが一点を狙い始めたことが気になり、自分の付近の戦闘がおろそかになっていたアズラ。カティに言われ慌てて防御に入るが、すでに相手は腕を振り上げ、攻撃態勢に入っていた。




その腕が振り下ろされる瞬間…


バゴオンッ!と洞窟内に大きな音が鳴り響いた。アズラが顔を上げると、目の前に巨大な岩盤が落ちてきており、攻撃しようとしていた魔物はぺちゃんこになっていた。上を見れば、曇った空が見える。


「な?やっぱこっちの方が早かったろ?」


「まぁ、そうね。降りた場所に魔物の群れってのは少しいただけないけど」


「「「「「………」」」」」

一同絶句。天井に急に穴が空いたと思えば、そこから精霊が二人降り立ったのだ。


「…エリアス、ルケノ、何をやっている…?」

呆れたような口調でレムが聞く。さすがに今回は魔物たちも、不自然な侵入者に呆然としている。


「あら、ムスペイル。まだこんなとこにいたの?…ってことは…」

ささっと辺りを見渡し、お目当てのものを見つけるエリアス。当然、簡単に見つかるわけで…。


「アズラく~ん!会いたかったわ~!」


「ちょ、ちょっと待ってください、エリアスさん!」

戦場のど真ん中なのに、平然てアズラを抱きしめるエリアス。…時と場合をわきまえろ。


「久しぶりだな、アズラ。…大丈夫か?」


「ル、ルケノ…。助けて…」


「わーってるよ。ほらエリアス、まわりは魔物だらけだ。んなことやってる余裕はねーよ」


「野暮な魔物ね。倒したら…また抱きしめれるのかしら?」


「知らねーよ。それより、苦戦してるみたいだな、レム?」


「あぁ…こいつら三人、先に進ませたいのだが…」


「なんだ、そんな話か。じゃあ適当に道作りゃいいんだな?…おいエリアス、聞いてたか?」


「えぇ一応。せっかくアズラくんに会えたのに…」

ふざけた話をしているが、表情は真剣なエリアス。すでに辺りには霧が立ち込め始めている。


「んじゃさっさと行きな」

その台詞と同時に、ルケノのまわりには炎が昇り、エリアスのまわりには霧が立ち込める。すぐに双方共に消え、龍と一角獣が現れた。


「ほらよっ!」

思い切り一直線に火炎を吹き、奥に向かう道を作るルケノ。


「はいっ!」

さらにその道の両端に、水のバリアを作るエリアス。これで安全に奥に進める。


「ありがとうルケノ!エリアスさん!みんな、行くよ!」


「えぇ!」

「おう!」


「あと少しのはずだ。…がんばれよ」




―最深部は近い―

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