決戦、封印の災厄!5
「この洞窟…ひたすら戦力を削るつもりね…」
「僕とカティはスティンと戦わないといけないから…」
「次に足止めが必要になったらテムダ、お願いね」
「冗談じゃねぇよ!」
ただ、それが十分にありえるのが怖いところである。
「…扉、ね…」
それからしばらく走ると、かなり頑丈な石造りの扉に突き当たった。
「堅いけど…簡単に開きそうだよね…」
コンコン、と軽く扉を叩いたアズラが言う。
「つまり…この奥には…」
「凶暴だけど、頭が悪い魔物がいるってことだよね…」
「そんな奴なら、共食いとかしてるんじゃねぇの?」
「…考えられないことではないわね…。…行きましょうか?」
「そうだね、単体なら撃破して通れるかも」
そうして、運命の扉が開く…
「さて、と、帰り道確保すると言った手前、本当にこいつ倒しておかないと後で娘からクレームがくるわ」
のんきに言ってはいるが、その表情は真剣そのもののグレイシャル。
「エット…飛行能力はあった方がいいでショウカ?」
「そうね。常に溶岩を凍らせることはできないから、飛べた方がいいわね」
自分の能力の改造を考えるジクスと、それに答えるジャラク。全員、ラヴァを倒す準備をしているようだ。
「ところでジャラクさん」
「ん?なに?」
「あいつってどうやって倒すの?」
精霊とはいえ、雪や氷のことしか知らないグレイシャル。知識の豊富そうな大魔女、ジャラクに質問する。
「あ…わらわも知らない…」
知っていたのは名前だけだったようだ。ちなみにジャラクは、獣や悪魔に関する知識をたくさん持っているが、それ以外はからきしである。
「溶岩魔ラヴァ。溶岩に生息し、溶岩を自在に操ることのできる魔物だそうデス。本体は、溶岩の中のどこかにある核だそうデス」
なぜかかなり詳しいジクス。ただ、『だそう』の部分から、伝聞であることが窺い知れる。
「…詳しいわね、ジクスちゃん」
「今解析しまシタ。以前、マスターに解析能力を付与してもらいましたノデ」
要するに、あの錬金術教師の改造のおかげらしい。
「じゃあ…溶岩を適当に攻撃しろってこと?」
「それも一つの手だけど、もっと簡単な方法があるわ」
そう言うと魔術を準備するジャラク。
「《カオス!》」
溶岩の中に、巨大な混沌を叩き込む。さすがは大魔女ジャラク。ヴァンのカオスすら上回る威力と範囲だ。
「あ、今わかったのデスけど、核を壊すとその溶岩が大きく膨張するそうデス」
「「え!?」」
重要な事実が少し遅れて発覚した。もうカオスは、溶岩の中に潜り込んでしまい、停止不能だ。
「ヌ、オ…オ…」
あっさりと消える溶岩の化身。それはつまり、ラヴァの核が壊れたことを意味する。
「《ジゲンワイキョク!》」
「《フリーズウォール!》」
「水大砲デス!」
後ろのヴェクたち、前のアズラたちに被害が及ばぬよう、必死で溶岩が流れ出ないようにする助っ人たち。少なくとも、しばらくは動けなさそうだ…
その頃、学園―
「調査の結果が出ました!」
研究員風の男性が、最前線にいた、ある人物に駆け寄る。
「ご苦労様、結果はどうでした?」
話しかけられた人物は、片手間とばかりに魔物を片付けながら、報告を聞こうとする。
「やはり、睨まれた通り、あの洞窟には、空間干渉の禁止と、古代禁術属、次元干渉の制限がかかっておりました!」
「…つまり?」
「予測通り、可能かと」
「わかりました。戦況も安定してきましたし…。許可を取って…」
そう言うと、前線を離れ、学園の中心部に向かう報告を受けた人物。なにか、重大な目的があるようだが…?
「うそ…だろ…」
開いた扉をくぐると、その先には大量の魔物が待ち受けていた。つまり、賢い魔物が、構造を利用して待ち伏せしていたのだ。
「仕方ない!レム!」
「任せておけ」
「じゃあ私も…」
「「召喚!」」
「黄金の雷帝」
「舞い踊る吹雪」
「レンドラーク=ムスペイル!」
「スリート!」
二人がそれぞれの契約精霊を呼び出す。この状況で、出し惜しみはしていられないと判断したのだろう。
「派手に読み違えたようだな、アズラ」
「大丈夫、ボクが解決して見せるよ!」
「ギャアアアァァ!」
魔物の指揮官的存在が雄叫びをあげる。天井が、ミシミシと音を立てて、小さな石の粉を落とした。
―最『キョウ』は、遠い―
変な時間の更新ですが、気にしないでください。活動報告に理由を書いておきますので、気になる方は見に来てください。