決戦、封印の災厄!3
「マリィたち…大丈夫かな…」
「大丈夫よ。だって私の弟と妹だもの。それより前!」
「《いけっ!》」
「《ハイ・ブラスト!》」
ヴェクとマリィを残してひたすら突き進む五人。二人の心配はあるが、進まないと、学園を守れない。
「…なんだか暑くなってきてない…?」
「走ってるからだろ?」
「うう~…でも暑いよ~…」
「……たしかに…これは異常……」
四人が妙に暑くなってきたことを話しながら走っていると…。
「見て!あれが原因よ!」
急にカティが叫び、正面を指差す。
その指の先には、グツグツと煮えたぎる溶岩の海があった…。
「マジかよ…」
「冷やして…渡る…?」
「…やってみよっか、無駄だと思うけど…《スプラッシュ!》」
大量の水がばらまかれる。一時的に溶岩は冷えて固まったが…。
「…やっぱり無理だよね…」
すぐにもとの温度に戻り、熱を発し始めた。
「……どうしようか……」
「「「「さあ…?」」」」
解決策が出るまで、立ち往生しそうだ…。
「カッコつけたけど…やばいよな…」
アズラたちを逃がして数分。強力な魔物との時間稼ぎで、ずいぶんと消耗してしまった二人。
「でも、この身に代えても、ここは通さない!」
「行くぜ!マリィ!」
「うん!お兄ちゃん!」
「「結束の絆!」」
前回使用したのは、果ての平原崩落事件の時。実は複数の効果を持つ二人のオリジナル、結束の絆。
前回は『パートナーの近くに移動』を使った。ちなみに、常備発動の効果として、『魔力の共有』と『ダメージの伝達』がある。
「《統べる力を!》」
マリィが自らを強化する。その瞬間、『状態変化の共有』が発動した。それにより、ヴェクにも同じ効果が与えられた。
「絶対に!通さないっ!アイギスッ!」
神々の王女の防具の名を持つ盾、アイギスを具現化するヴェク。今までその強度が存分に発揮されたことはないが、強力な盾であることは十分に証明されている。
「《アースクエイク!》」
自らを強化したが、簡易術式で攻めるマリィ。広範囲への攻撃なら魔術の方がいいのだが。
「ヤミノ…チカラ!」
最上級の悪魔、トライデモンが暗黒の魔法弾を放つ。ただ、アイギスの防御力の前では完全に無力だが。
「お兄ちゃん!後ろ!」
「なにっ!?」
地面から現れたモグラのような魔物に、思い切り吹き飛ばされるヴェク。『ダメージの伝達』でマリィもダメージを受ける。
「お兄ちゃん!…祈れば…」
吹き飛ぶヴェクを受け止めるべく、『パートナーの近くに移動』を使うマリィ。
「悪い!マリィ!」
尖った岩盤にぶつかる寸前で、マリィがヴェクを受け止めた。このままぶつかっていたら、二人ともアウトだったかもしれない。
「お兄ちゃん!手伝って!」
「おう!任せろ!」
ヴェクに手伝いを要請すると、術式の詠唱を始めるマリィ。
ヴェクは、自分とマリィをアイギスで守りながら、『詠唱の補助』の能力で詠唱の加速をする。
「「これで…倒れて(れろ)!《グランス!》」」
辺り一面を、光が包み込む。その直後、様々なところで閃光が魔物たちを貫く。
「やった…か…?」
「ダメよ…まだまだ残ってる…」
渾身のグランスは、かなりの数の魔物を倒したが、それでもまだ大量の魔物が残っていた。
対する二人には魔力が残されていない。
「グガアッ!」
「くそっ!」
襲いくる魔物になす術なくやられると思われたが…?
「凍りなさい!」
冷たい息吹が吹く。二人に襲いかかろうとしていた魔物は氷像と化した。
「甘いデスよ!」
さらに銃弾が飛ぶ。氷像になった魔物を含め、たくさんの魔物を蜂の巣にした。
「《クウカンチエン!》」
あげく、時間の流れが二人を除いてゆっくりになった。のろのろと動く魔物など怖くない。
数十秒もすれば、辺りの魔物は消え去っていた…。
「二人とも、お疲れでしょう?休んでいきなさいな」
「そうデスよ。ワタシたちが、先に行ったヒトたちを追いますカラ」
「どうせ、動けないと思うけどね」
「ごめんなさい、みなさん。…アズラ様たちを、お願いします」
マリィたちは、強力な魔術と、大きなダメージのせいで、魔力をほとんど失っていた。動けないし、ついていっても、足手まといになるだろう。
「大丈夫。私たちに任せて」
そうして、『助っ人』たちは洞窟を進んでいった…。
―助っ人、登場―