第十二章章末イベント~決戦、封印の災厄!1
―普通に生きている限り、普通に朝はやって来る―
ある春休みの朝、いたって普通の時間に起きたアズラ。…厳密に言えば、世間一般より少しばかり遅いのだが。
「あ、アズラ様。おはようございます」
二年の頭に張られて以来、ずっとそのままの魔法陣を通ってマリィが部屋に入ってくる。普通に見えるが、特別な朝。寝坊なんて絶対しないように起こしに来たのだろう。
「…あぁ…マリィ、おはよう」
眠い目をこすりながら、マリィに挨拶するアズラ。特別な朝でも、弱いものは弱い。
「…ついに、この日が来ましたね…」
「うん…」
教頭から聞いている。今日がスティン復活の日。つまり、決戦の日。学園を賭けた戦いの日だ。
「マリィたちで大丈夫でしょうか…?」
「…負けるわけには、いかないよ?」
「…そうですね。では、アズラ様も起きたみたいですし、マリィも準備に戻ります」
「うん、また後でね」
そして、部屋にはアズラ一人になった。
「アズラ、大丈夫か?」
猫型のレムが話しかける。
「…大丈夫、調子は十分だよ」
「そうか。当然、俺も戦うからな。必要があれば喚べよ?」
「うん、ありがとう。…行こっか?」
「ああ…」
「みなさん、今日はお願いしますよ」
「負けは許されません。本当に…」
決戦部隊の七人は、学園長室で、学園長や教頭と話していた。
「…わかっています。全力を尽くします」
「大丈夫だ。俺に任せときな!」
「…期待に、応えられるように」
「……勝つ……」
「がんばってくるね~」
「オレがいるから大丈夫だって!」
「学園は、必ず守りますから…」
七人それぞれの返事をする。
「頼もしいわね。…はい、アズラくん。これ、預かり物よ」
部屋にいたミランダが、アズラに一枚の紙切れを渡す。
「これは…?」
そうは言ったが、この紙切れには見覚えがあった。魔術祭の後、学園長から天界術の魔術書を受け取ったときに、『記憶の伝達』の中のレイカが、学園長に渡していた物だ。
「あなたのお姉さんがあなたのために薬を遺したらしいの。それの場所ね。一応、薬関係だから、私が預かってたの。たしかに渡したわよ?」
「はい、ありがとうございます」
「一応、心構えをしておいてください」
「何をですか?」
「かなりの数の魔物を駆除したとはいえ、封印の洞窟内はまったく手をつけていません。魔物がたくさんいることも考えられます。その場合は…」
「私やアズラを中心に進めるために、しんがりを残しながら進め、でしょう?」
「…その通りです。厳しい戦いになるでしょうが…」
「覚悟のうえです」
「…そうですね。それでは、空間干渉で送ります。ファル先生?」
「はい」
今回は『次元』ではなく、空間干渉で送るようだ。
「…がんばってくださいね。学園の命、預けましたよ?」
「…はい、必ず…」
「行きます!」
ファルの合図で、七人の姿が部屋から消えた…。
―決戦の刻、来たり―