新たなる協力者
「ついに!ついにやりましたよ!」
「…どうしました、教頭先生…?」
作戦会議、と言われて学園長室に呼び出された七人。入るとすぐに、教頭が叫び出し、ぴょんぴょん跳びはねて喜んでいるという奇怪な光景に出くわした。
「あなたたちの勧誘のかいがあって、ついに一人、新しい志願者が来たのです!」
「…先生?そんなに嬉しいのですか?」
聞くまでもないことだが、カティが一応聞いてみる。
「よくわかりましたね?えぇ本当に嬉しいのですよ!」
…今の行動、言動に自覚がないのだろうか?
「そりゃあそんなにはしゃぎまくってたら、誰でもわかるんじゃねぇか?」
テムダが冷静につっこむ。会心の一撃…。
「え!?………おほん、皆さん、今日も集まってくださってありがとうございます」
ごまかしきれないとわかっているが、一応ごまかしてみる教頭。後ろでは学園長が苦笑いしている。
「先生…?「今のことは、他言無用ですよ?わかりましたね!?」…あ、はい…」
真剣に口止めする教頭。よほど恥ずかしかったのだろう。
「そ、それより、新しい志願者って誰なのですか!?」
強引に話と空気を変えようとするカティ。この状況では、最善策かもしれない。
「そうですね、呼びましょう。…いらっしゃい!」
別室に呼びかける教頭。扉を開けて部屋に入ってきたのは…?
「ユウ!?」
「あ…アズラくんたち…こんにちは」
完全平凡少女、ユウだった。
「ユウ!大丈夫なの!?」
とりあえず、ユウの能力を一番よく知っているカティが(99%が心配で)確認する。一応、学園三年生徒ではトップクラスの実力を持つアズラやカティ。そんな彼らでも緊急帰還一歩手前のような任務ばかり与えられる場所だ。そこに、普通が取り柄のユウがいるのだ。心配にもなるだろう。さらに、最終目的は最強最悪の魔術師、スティンの討伐だ。危険にもほどがある。
「その点なら心配ありません、カティさん。決戦時の彼女の仕事は、『教師と協力して学園を防衛する』ですから。言っては悪いですが、あなたたちの仕事より遥かに安全です」
「そ、そうなんですか…」
ユウには危険が及ばないとわかったが、自分たちの仕事の危険性を再確認された気がしたカティ。気分はどんより、暗くなる。
「…学園の防衛も、立派で重要な仕事です。いくらスティンを封印できたとしても、帰る場所がないと困りますからね」
「はい!がんばります!」
気合い十分のユウ。その、少し離れたところでは、カティが弟妹に励まされていた。
「…まぁ、今回はこの報告だけです。お疲れ様でした」
で、学園長室の前―
「ねぇアズラくん、スティンの対策チームって誰がいるの?」
何も知らないユウがタブーを質問する。…教頭が聞けば、嘆き、怒り、悲しむ質問だ。
「…僕らと、先生たちだけ…」
「…本当に?」
「…うん…」
「…そうなんだ…」
暗い質問をしたことを後悔したのか、黙りこくるユウ。しかし、次の瞬間…
「よし!やってみよう!じゃあね、みんな!また明日ね!」
出てきたばかりの学園長室に駆け込んだユウだった…
「…帰ろうか…?」
「…そうしましょ…」