大魔女の答え
「実はお願いが………」
「待った、立ち話もどうかと思わない?」
アズラが話を切り出そうとした瞬間、魔女が遮る。
「応接室に行きましょう。いいわね?」
「は、はぁ…」
ふわふわ浮かびながらどこかに向かう魔女。何があるかわからないので、一応警戒しながらついていく四人。
「で、何の話かしら?」
たどり着いたのは、意味もなく豪華な応接室…アズラたちの寮の自室より広い…だった。
「えっと、スティンの話なのですが………」
「あぁ…そういえば今年はその年だったわね」
「相手への協力をしないこと、お願いできますか?」
「そうね…。ちょっと普通のお話しない?」
返事もせず、いきなり話題を変える魔女。
「わらわの自己紹介もしてないし、あなたたちのも聞いてないわ。いいでしょ?」
「え…?返事は…?」
「…今、わらわが『いいえ』と言ったら、あなたたち敵になるでしょ?それにこの城、お客さんが来なくて退屈なのよ。だから…いいでしょ?」
カティが隣にいるアズラを肘でつつく。
「…相手の機嫌はとらないと…ムダな戦いはしたくないわよ…」
「…うん…わかった…」
ひそひそと相談する二人。
「どうしたの?するの?しないの?」
「あ、はい、話をします」
「あら、嬉しい。わらわは『アークウィッチ』の『ジャラク』。よろしくね」
「僕はアズラといいます」
「カティです」
「……エンカ……」
「マリィと申します」
「それにしてもお客さんなんて久しぶりだわ。なぜか知らないけど、ここには人が来ないのよ」
「学園では星6地域になっているので、相当な危険地域指定を受けていますよ?」
「まぁ!…やっぱりときどき来る調査員に悪ふざけするのが悪いのかしら…?」
「…あの…具体的に何を…?」
「うーんと…ベールちゃんと遊んでもらったり…新しい薬を飲んでもらったり…ほかにもいろいろ…」
「「「「………」」」」
それが原因でこの見かけ上は安全な地域が、星6になっているのか…、ということを考えた四人。しかし口には出さない。出したところで何の意味もないことはあの教師で理解している。
「あと、この外観が悪いのかしら…」
「…あー…それもあると思います…」
そりゃあ外観『魔王の城』では普通は入りたくない。アズラたちのような理由がない限り、近づかないのが妥当だろう。
「今度リフォームしましょう。これで訪問者数アップよ!」
第一優先はリフォームではないことに気がつかないジャラク。そもそも発言がブログの作成者みたいだ。
「じゃあ…そろそろお返事しましょうか…?」
ついに本題に入る。
「「「「………」」」」
つばを飲み込む四人。答えは…?
「やだ。わらわはあっちが面白そうだからあっちにつく」
「…はぁ…」
読めていたのか、それとも呆れているのか、盛大にため息をつくカティ。残りの三人もがっかりしている。
「で、あなたたちはわらわと戦う…くんくん…」
戦うのね?と言いかけたが、途中で何かに気づき、鼻をひくつかせるジャラク。
「…どうかしましたか?」
「…面白い魔術書の匂いがするわ。あなたたち、何か持ってない?」
全魔術を極めた存在だからか、魔術書の匂いすら感じるようになったジャラク。…おそるべし。
「…もしかして、これですか?」
アズラが取り出したのは、あの古代禁術の魔術書。
「それよそれ!やっぱり古代禁術だあ~♪ということはアズラくん、あなたこれ使えるの?」
嬉々とした様子で尋ねるジャラク。なぜそんなに嬉しそうなのかはよくわからない。
「いえ、読めるようにはなったのですが、まったく理解できなくて…」
「ん~、じゃあ教えてあげる!ちゃんと習得できればあっちに協力もしないわ!わらわだって弟子と戦いたくないもの」
「ホントですか!?」
「約束するわ。た・だ・し、失敗したらとりあえずベールちゃんと遊んでもらうから。それでもやる?」
「はい!お願いします!」