最『キョウ』の過去5
『一年目、四月五日
今日、僕はアウレス魔術師養成学園に入学した。夢と希望にあふれた学園だと聞いていたけれど、噂の通りだった。ここで、何が起きるか楽しみで堪らない』
「?普通の日記だな?」
『五月十一日
今日は、魔術の種類について学んだ。十五種類、すべての魔術の概説を受けたが、どうして存在するのか理解できない魔術が一つ、存在した。…古代禁術…』
「悪い人じゃ、なかったのかしら?」
『七月八日
今日、学園長に呼び出された。何か悪いことしたかな?と、思いながら学園長室行くと、とても嬉しい話が僕を待っていた。―君は見込みがある。特別に魔術の履修制限をなくそう―…今考えても身体が震える。これでもっと、強くなれる…』
『九月二十八日
今日は、魔術祭の二日目だった。年変わりのイベント、それで優勝できた!…ただ、運がよかっただけ。そう思うが、優勝には変わりない。興奮して、今夜は眠れそうにない』
「謙虚だったみたいだね?」
『一月九日
…最近、授業が退屈だ。どんな魔術でも、一度で理解し、扱える。…友人も、まったく進歩しない。…退屈だ』
「…おい、おかしくなり始めたぞ?」
『二年目、四月十日
馬鹿みたいな一年生が数人、歯向かってきた。愚かな奴らだ。いくら喧嘩が強くても、魔術に敵うわけがないのに。…しかし、わからない…正当防衛だというのに、学園長は一週間の謹慎を命じてきた。…僕は悪くないのに…』
「…やり過ぎたのかしら?」
『八月十六日
…受けるべき授業はすべて受けた。…やることがない…』
『十一月二十七日
…僕に味方はいないのか?今日、数人の三年生に呼び出された。―二年のくせに生意気なんだよ―…そんなこと知らない。喧嘩をふっかけてきたけれど、全員返り討ちにしてやった。少々ムカついたから、大怪我させたけど、正当防衛だ。でも、学園長は、やり過ぎだ、と言って、僕を無期限謹慎処分にした。…腹が立つ…』
「…三年生も悪いけど、スティンも悪いのよ…」
『二月二十日
今日も自室で謹慎中…。でも今日は、面白いことが起きた。不思議な声が聞こえたのだ。―コノセカイガニクイカ?―…あぁ、憎いさ。―ナラ、ワレニシタガエ。オモシロイチカラヲ、サズケテヤル―…面白い、従ってやろうじゃないか…』
『三年目、五月六日
あの声が聞こえて以来、我はあの魔術を使えるようになった。古代禁術…素晴らしい力だ!』
「…狂ってやがる…」
『十月三十日
あの声が囁く。―ミナゴロシニセヨ―…まだだ、まだ早い。あの声も我の意思は理解するようだ。…卒業前に、一泡吹かせてやる…』
『三月一日
ついに決行の時が来た!次々に死んでいく雑魚ども!しかし、学園側も本気で来ているようだ。魔術協会の力を借りるらしい。楽しみだ…』
「…ひどい…」
『三月三十日
…小癪なマネをする。学園に強大な力があったのは知っていたが、それで我を封印しようとは。魔術協会のエリートどもも、虐殺したが、まだまだ殺し足りない。こんなところで封印されるわけに…』
この日の日記はここで途切れていた。
「あいつ、絶対におかしいぞ!」
「わかってたけど、本当にひどい奴ね!絶対に止めないと!」
「…まだ、続きがあるよ…」
『百二十三年目、三月三十日
今回の討伐隊は活きがよかった。結局、我と戦ったのは、一人の女だったが、そいつの強いことといったら…。天界術のみで我を追い詰める腕前。とてもよくできた戦略。近頃はなかった感覚だ。最後、殺した時の優越感は素晴らしかった!さらに、学園の限界も迫っている。あと一回、それで我は、復活できる…』
「姉さんのことだ…」
「…帰りましょう。…必ず、奴を倒すのよ」
「あぁ、失敗は許されねぇ。学園、ひいてはこの世界のためにも!」
「絶対に…許さない!」
―災厄は、こうして生まれた―