泉の女神、懐柔作戦!
「…皆さん、今日も集まってくださって、ありがとうございます」
述べているのは感謝の言葉だが、あまりご機嫌ではない教頭。…もっとも、もともとニコニコしている人ではないのだが。
「…どうかしましたか、教頭先生?」
なんとな~く重たい空気に耐え兼ねたアズラが直接聞いてみる。
「どうもこうもありません!…今回はスティン討伐戦に志願する生徒が少な過ぎるのです。…このままでは、あなたたちがどれだけがんばったとしても、討伐戦が失敗してしまいます…」
半分怒りながら、半分悲しむ教頭。
「……ごめんなさい……」
勧誘部隊を代表してエンカが謝る。
「あなたたちが悪いのではありません…。とりあえず、あなたたちだけで作戦を進めます」
そこまで言うと、学園長に続きを任せる教頭。
「今回の作戦は、自軍の強化を中心に進めたいと思います。テムダさんたちの勧誘部隊は引き続き生徒に呼びかけてみてください。それとカティさん、今日は魔術協会から天界術の専門家を呼びました。カティさんはしばらく、その方に天界術を習ってください」
「えっと…僕たちは?」
残る三人を代表してアズラが質問する。
「今回は比較的安全な任務になると思います。精霊の泉にいる上級精霊、『フィルナ=エリアス』に会いに行って、協力のお願いをしてきてください」
「え?でも、あの人(?)ってその地域に縛られてるのではないのですか?」
たしかに、土地と契約している精霊は、その土地を離れることはできない。
「おや?会った事があるのですか?それなら交渉もうまくいきそうですね。それと、その点は大丈夫です。彼女には精霊の泉を守ってもらいますから」
「?」
なにもわかっていないアズラ。おそらく残りの六人もわかっていないだろう。
「スティンが封印されている『封印の洞窟』は洞窟エリアにあります。彼の配下の魔物は、大半が最短距離で学園を目指しますが、一部は挟み撃ちのために草原エリアに迂回するのです。その際に精霊の泉を通る可能性が高いので、エリアスに協力してもらおうという作戦なのです」
「なるほど」
理解したアズラたち。
「手順はヴァン先生に説明しました。会いに行って、確認しておいてください。それでは、解散です」
「魔術協会からの専門家ってどんな人かしら…」
「……天界術を使うのは…女の人が多い……」
「美人なら一目見てみたいぜ」
「バカ言ってないで、きちんと勧誘しなさい!学園の命運かかってるのよ!」
「わ、わかってるって…」
カティの迫力に押されたテムダ。相変わらず弱い…
「じゃあ僕たちは行くね」
「姉貴もがんばってよ!」
「アズラ様、がんばりましょうね!」
「…普通ほかの人の応援しない…?」
「別にいいじゃない。じゃあね、みんな、がんばってね」
そしてそれぞれの目的地に向かうのだった…