魔術祭!大武闘大会!?10
「なんだよ!こいつら!」
学園を襲ってきている魔物は、ウルフやリザードといった雑魚ではなかった。堕ちた聖堂の微弱な悪魔祓いを嫌う上級魔族、バイデモンや、竜の墓場で猛威を振るう屍竜、ドラゴンゾンビなどである。
「こんなの絶対に学園に入れちゃダメ!みんな、全力で撃退して!」
学園には、一応魔物に対する障壁がある。しかし、強力な魔物に攻撃され続けると、壊れてしまうのだ。
「くらえっ《エボニー!》」
「行きなさい!《ペガサス!》」
さすがは教師、エリートの集団。最上級の魔術を簡単に発動する。
「《ヘルフ…》うわあっ!」
ヘルフレイムを宣言しようとしたアズラ。しかしバイデモンの暗黒の雷に邪魔される。
「ボサッとするな!相手はかなり強力な魔物だぞ!」
ヴァンが割り込んでバイデモンを撃退する。
「ゲンガー、絶対に通さないように」
「薬の実験台が多くて助かるわぁ~♪」
「ジクス!全力で片付けるんじゃ!」
「幽霊はいないのね…」
本気を出した教師は凄まじく強かった。三年生の方がかなり多かったが、魔物のほとんどを教師が倒したのだ。
「皆さん、ありがとうございました。…大事な話がありますので、全生徒を講堂跡に集めてください…」
「何の話だ?」
「あまりいい話ではなさそうね」
「しっ!始まるよ」
『学園の存亡にかかわる緊急事態ですので魔術祭は中止とさせていただきます』
至る所で「えぇーっ!」という声があがる。
『申し訳ありませんが、学園の危機なのです。…話を進めますが、一般には公表していませんが、この学園には秘密があるのです』
ざわつく生徒たち。
「秘密…?」
「なにかしら…?」
『話は130年前にさかのぼります。その年、学園史上屈指の天才が、三年生になりました』
「ずいぶん昔の話ね…」
『その名はスティン。成績優秀、品行方正、まさしく模範となる生徒でした。しかし…』
神妙な面持ちで話を続ける教頭。
『卒業直前のある日、彼は変わりました…。同級生を無差別に殺し始めたのです…』
再び生徒がざわつく。
『どこで習得したのかはわかっておりませんが、古代禁術を使ったのです。当然、学園はおろか、魔術協会も黙っていません。教師に加え、協会のエリートが彼をなんとかしようと試みました…。しかし、彼は異常なほどの力で、全員を殺害したのです…』
「もしかして…」
『野放しにはできません。しかし最強の魔術師の集団ですら太刀打ちできない彼をどうするのか?という話になりました。その答えが私たち教員の命と、学園の魔力を使って封印するという手段でした。しかし彼もただでは封印されませんでした。彼の封印されている地域、封印の洞窟に制限をかけたのです。その制限が、ただの年齢制限なのですが、それによって教員が手を出すことができなくなってしまったのです』
「…私たちの出番ね…」
『封印も完全なものではなく、10年に一度、封印が弱まるのです。その時に彼は復活を目論んでいるのです。生きていた時と比べると、遥かに弱くなっていますが、復活すれば、大惨事は免れないでしょう…』
続きはとても言い難そうな教頭。
『本来なら、失敗しても、学園の大量の魔力で強制的に封印できるのですが、すでに相当な回数失敗してしまい、強制封印ができなくなってしまっているのです』
「じゃあ…姉さんは…」
『学園を去るなら止めませんし、卒業証も渡します。しかし、どうかお願いします!私たちに…学園に力を貸してください!』
―学園の真実、発覚―