魔術祭!大武闘大会!?7
「……行け…《屍騎士》……」
エンカが速攻でゾンビの戦士を呼び出す。かなりおぞましいゾンビが三体、カティに向かう。
「…それ、本気でやってるの?《浄化して!》」
カティの指先から一筋の閃光がほとばしる。それは容赦なくゾンビを貫き、消し去る。
「《浄化して!》《浄化して!》」
同じ要領で残る二体のゾンビも消し去る。エンカの先兵はいとも簡単に倒されてしまった。
「……そうか…相性悪いのか……」
「ツイてないわね!《トルネイド!》」
「《ハイ・シルド…》…どうしよう……」
エンカの十八番は異世術。対するカティは術歌、結界術、そして護法と続く。その内の護法の能力はほとんど異世術対策みたいなものなので、天敵と呼んでも過言ではない存在なのだ。
「……とりあえず…《侵入禁止…》」
時間稼ぎのために侵入禁止の結界を張るエンカ。相手に解除できる能力があると、自分がひどい損害を被るが、さっきのヴェク戦でその能力はないと判断したのだろう。それなら最良の手段である。
「ヴェクといいあなたといい…術歌の的になるだけよ?」
ヴェクの時と同じく、術歌を溜め始めるカティ。解除の能力はないが、これでも十分に対策となる。
しかしエンカが安直に張ったとは考えづらい。
そして結界が消える…。
「《歌唱終了!》」
再び巨大な魔法弾が放たれる。
「……甘いよ……」
「!?」
「……開け…異世の門……」
―時間の流れが遅くなった―?
考えることはできる。身体に命令も出せる。でも―動かない―どうして…?
ステージ全体に影響しているようで、カティが放った魔法弾も、エンカ自身もなかなか進まない。
―唯一の例外を除き―
「キャアアァァ!」
唯一の例外、それは門から這いでた怨霊の集団だ――
凄まじい恐怖。それに動きを止められた瞬間、妙な光に包まれた。そして――
「……除霊の剣……」
いつの間にか、カティに接近していたエンカがオリジナルを放つ。左手にはあのアクセサリーがある。
「!?《防いで!》」
間一髪で防御魔術が成立した。しかし、エンカの右手は確実にカティにダメージを与えた。
「…ううっ…オリジナルの話はアズラから聞いていたけど…霊体対象じゃないの…?」
「……霊体対象だよ…。…これでそっちを霊体にしただけ……」
エンカが見せたのは左手のアクセサリー。
「……改良して…自分以外も対象にできるようにした……」
「…厄介ね…」
残り少ない魔力で弓を具現化するカティ。
「……これがあれば物理耐性は完璧……」
「…どうかしらねっ!」
弓から数本の矢が放たれる。
「……無駄なのに……」
霊体になって矢をかわすエンカ。宣言通り、矢はエンカをすり抜け、障壁で落ちる。
「……終わりにする……」
実体に戻り、カティに突進するエンカ。
「このっ…!」
矢を乱射するカティ。狙いはバラバラだが、数本はしっかりとエンカを狙っている。
「……無駄だって……」
回避と攻撃準備を兼ねて両方を霊体にするエンカ。
「……除霊の…うっ!」
「かかったわね!」
さきほど外したはずの矢が数本、エンカに刺さっていた。見れば矢は銀色。物理耐性を持つエンカに普通の矢は当たらないはずだが…?
「……動けない……」
「霊を縛る矢よ!意外なところで役に立つものね…とりあえず、滅霊矢!」
「ううっ…」
その場に倒れるエンカ。完全に戦闘不能だ。
「…対邪に惹かれて買ったけど…対霊も役に立つわね…」
『勝者、カティ選手!続きまして第2試合、アズラ選手VSテムダ選手!両者ステージにどうぞ!』
「アズラとやり合うのは初めてか?負けねぇぜ…?」
「…僕も負ける気はないよ…」
―第6試合、開始―