ヒビワレユクダイチ
現在地は精霊の泉。そこまでは空間干渉で来て、残りは一応調査を兼ねて歩く四人。
「先生…面白いとかの理由でふざけたりしないでくださいよ…」
「そんなのは当然でしょ?今回のはオフザケじゃなくて、真剣な仕事なんだから」
…授業も教師として真剣に取り組むべき仕事だと思うが…。
「とりあえず、さっき中断した説明の続きをお願いできますか?」
「えぇ、わかったわ。シルバーウルフはウルフキングと同じように集団での戦闘を好むわ。ただ、単純な戦闘力は当然比べものにならないくらい高いわ。さらに護衛のグレーウルフもかなり強い。そして、これが最大の特徴であり、もっとも厄介な特性で…やつらは『仲間』意識が強いの」
「?どういうことですか?」
「簡単な話よ。ウルフキングたちが仲間を呼ぶと家来のウルフたちが来たわね?」
「はい、確かにそうでした」
「でもやつらは違う。助けを呼ぶとほかのシルバーウルフが来るの…群れを引き連れて…」
「えぇっ!?」
「それが果ての平原の星が6の最大の理由よ。…まぁ暗い話はこの辺にして、明るい話でもしましょうか?」
「そうですね。何か話題でもありますか?先生?」
「そうね…別にないのよね…」
「そういえば先生って薬学の担当でしたよね?」
今まで黙っていたマリィが聴く。
「えぇ、そうよ。何か薬の質問?」
「はい…実は…」
ミランダにひそひそと言うマリィ。
「あぁ…それなら簡単よ。材料は…実験台提供費としていらないってことで」
「ありがとうございます!やったっ!」
「カティ、猛烈に嫌な予感がするんだけど…」
「そう?私はしないわよ?」
「オレもしないぜ?」
「………」
おそらくその原因であろう、マリィを見るアズラ。
「アズラ様…そんなにまじまじと見つめないでください…。…照れてしまいます…」
「…また何か人を使って変なこと企んでるんでしょ…?」
「えっ!?いや、その…「何もないわ。それより本当に果ての平原何かに行って大丈夫なの?」…ふぅ」
話をそらしたミランダ。
「わりと不安ですけど…調査が目的ですから、いざとなれば逃げることもできますし、先生もついているので大丈夫だと…」
そこまで言った瞬間に、ミランダが遮る。
「あら?私は魔術はそこまで上手くないのよ?変な期待されても困るわぁ」
「「「「え………」」」」
急に黙る四人。
「大丈夫よ、私があまり上手くないのは魔術だけ。代わりに私にはこれがあるから」
そう言って空間干渉で異世界への裂目を作るミランダ。その中に手を入れて何かを取り出す。
「この通り戦闘用の薬はバッチリ準備してあるわ。火炎薬に激毒薬。…挙げ句は自己強化用のドーピングの類もあるわ」
手に持ったオレンジ色の薬ビンを軽く振りながら言うミランダ。
「その薬は…?」
「さっき言った火炎薬よ。外気に触れると燃え上がるの。…やってみましょうか?」
「だめです!絶対にやめてください!」
全力で止めるアズラ。
お忘れかもしれないが、ここは草原エリア。広大な野原は火の海になるには絶好のロケーションだ。冗談抜きで死にかねない…。
「冗談よ。私だって死にたくないもの。…ほら、見えてきたわよ」
指し示す先にも大差ない風景が広がっているが、やはり違いはあるらしい。
「ここが果ての平原よ。…やっぱり調査が必要みたいね…」
「何かあるんですか?」
「魔物がいないわ。さっき言ったシルバーウルフ以外にも、この地域にはたくさんの魔物がいる。それらが姿を見せない時点で絶対に何かあるわ」
「でも先生?」
「何よ?」
「銀色の狼がこっち見てるんだけど?」
「早く言いなさい!《グランド!》」
シルバーウルフと判断した瞬間、魔術で対応するミランダ。
しかし隆起した大地の槍は簡単にかわされる。
「ワォーン!」
遠吠えで仲間を呼ぶシルバーウルフ。即座にシルバーウルフ二頭と、グレーウルフ八頭が現れた。
「全員、戦闘準備!」
ミランダが一喝する。
「わかってます!召喚、黄金の雷帝、レンドラーク=ムスペイル!」
「召喚、舞い踊る吹雪、スリート!」
アズラとカティが契約精霊を呼び出す。
「ボクの出番だね!?」
元気に現れるスリート。
「…アズラ、まずいぞ…」
対するレムは何かに感付いたようだ。
「!?みんな!全力で学園に向かって走って!」
ミランダが叫ぶ。
「どうしました!?先生!?」
叫ぶアズラの足元にヒビが入る。
「学園が…落ちるの!」
次の次の回より章末イベントなのですが、横の文字数表示が9文字未満の方っておられますか?
トーナメント表を図で書いたので、横が9文字未満ですと、確実に読めません。一言書いてくだされば、あとがきに文字で書こうと思いますので、あてはまる方は一言よろしくお願いします。