果てへ向かう話
「失礼します」
コンコン、と扉を叩きながらカティが部屋に呼びかける。
「アルバイトの募集を見たのですが…」
「あぁ、わかりました。入りなさい」
「失礼します」
そう言って入る四人。
「あなたたちですか…アズラとカティは大丈夫として、ヴェクとマリィはどうでしょうか…?」
「…いくらヴァンたちに教えてもらってるからといっても…まだ二年生ですしね…」
「それなら心配はいらない」
見計らったかのようなタイミングでヴァンが現れる。
「ヴァン!?あなたたちには森林エリアの警戒を指示していたはずですが!?」
「定時報告だ。森林エリア一帯、特に問題なしだ。…で、この二人の何が心配だと?」
「いえ、少し調査を依頼しようと思ったのですが、この二人には少々難しいかと思いまして…」
「なんだ、そんな話か。言っておくが、この二人はその辺りの三年生と比べると遥かに強いぞ?それでも心配だと?」
「…まぁ、ヴァンがそう言うならきっと大丈夫でしょう。では今から同行者の先生と共に、調査の内容について説明します。…先生、いらしてください」
奥の応接室に呼びかける教頭。
その部屋から現れたのは…?
「それでは今日はよろしくお願い…なんだ、あなたたちですか」
「え…ミランダ先生…?」
「何よ、私じゃ不満?」
「だって…「…話が盛り上がっているところ、悪いのですが、調査の説明をしてもよろしいでしょうか?」…あ…ごめんなさい…」
さっさと説明したいらしく、話を無理矢理中断させる教頭。
コホンと一つ、咳払いをして、説明を始める。
「今回の目的は、草原エリアの最南端の『果ての平原』の様子を調べてくる事です。…本来なら、教師の仕事なのですが…今はとても忙しくて、手のあいている教師がミランダ先生しかいなかったのです。いくらミランダ先生が優秀とはいえ、失敗は許されませんし、最悪ミランダ先生が緊急帰還になったとしても、資料を持って戻れる様にとの判断で生徒を数人募集しました。
…説明は以上です。何か質問はありますか?」
最後の言葉は言いながら四人を見回していた教頭。
「先生、果ての平原の特徴を教えてください」
カティが教頭に言う。
「わかりました。果ての平原、通行可能地域は精霊の泉と風の大地。レベルは6、極めて危険です。魔物は当然とても強いですが、もっとも警戒するべき魔物にシルバーウルフがいます。その特性は…「教頭先生、残りは道中、私が説明いたします」…そうですか」
教頭の言葉を止めるミランダ。
「急を要するのですし、もう出発したいのですが?」
「…そうですね。あなた方もよろしいですか?」
「はい、準備は出来ています」
「では、よろしくお願いします。…学園の命運にかかわるかもしれませんので、失敗などしないように」
「はい、教頭先生、学園長。行って参ります」
学園長室を出て、学園南門から果ての平原に向かう五人だった…