ストック・オブ・ナイフ
薬学1編最終話です。第一章通常編はこれを含めて後3話。かなり急いでいますので、この話と次の話は短いです。
「あら、早かったじゃない?どれどれ……うん、上出来ね。合格よ」
薬学教師はそう言って履修完了の印をくれた。
「エンカッ!」
病院室に着くとすぐに弟の名を叫び走りだすサクヤ。病院室で回復薬でももらったのだろう、エンカの体調はよさそうだ。
「大丈夫?エンカ」
「…うん、大丈夫…」
サクヤとエンカが話していると、後ろから保健医が声をかけてきた。
「その子ならもう大丈夫だから、連れて行っていいわよ?」
その言葉を聞いたエンカが動きだす。少しふらつきながらも無言で行動する。もう、いつものエンカだった。
実験場でヒールポットを作る。
材料は実際水と月光草だけだが、それだととてもじゃないが味がヒドイらしく、効果を消さず、味をつけるために果物を入れるのだという。果物はカティが蜜柑を十個買ってきた。
かなりたくさん作ったので、実験場備えつけのビン三十本になった。一人四本とり、一本を提出、九本を購買に売った。購買は回復薬が品薄だったらしく、一本300リムで売れたので、700リムを果物代としてカティが受け取り、残りを400リムずつ分けた。
「そこそこ儲かったな」
「儲けよりも回復薬が手に入った事の方が僕は嬉しいけど?」
「私もよ」
「アタシも〜」
「……うん…」
「………」
どうにもテムダは、果物のアルバイトができなかった事をかなり悔しがっているようだ。
「まぁ、またしばらくは好きな授業を受けましょう。次は…薬学2を五人で受けましょうか?」
カティの提案に同意する四人。そうして解散となった。
で、その日の夜、アズラの自室では…
「ねぇレム、このナイフって普通のナイフじゃないの?」
「あぁ、『蓄積』の能力があってな、魔術を一つだけ貯めることができる」
「どういうこと?」
「例えば『ファイア』の魔術を蓄積すれば、解放した時にナイフが燃えさかるし、『ヒール』なら持ち主を回復できる」
「じゃあこれにはもともと『増大』が『蓄積』されていたの?」
「フッ…たぶんな…。売り手か作り手の遊び心か親切心だろう。まぁ『錬金術』が使えるようになるまでは便利な能力だと思うぞ」
錬金術―金属と自然物質より特別な金属を精製する魔術―特別な属性を持った武器を造る時に重宝する。
「じゃあ何か蓄積しておこうかな?」
「そうしておけ」
「ありがと、おやすみレム」
そう言ってアズラは眠りについた。
「ふう、もう少しがんばって欲しいものだな…」
誰に言うでもなく、レムは呟いた…。
不思議なナイフを手に入れたアズラ君。今後有効活用できるのか?
次回はテムダが暴走します。完全に、無謀です。