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逆転の二重詠唱

「うわぁ…」


「きれい…」




おもわず感嘆の声がでるほど美しい森がそこにはあった。光が差し込み、はじけて散る。さながら光の手品を見ているようだ。

そんな感慨などどこ吹く風とばかりに、まわりを見るテムダとサクヤ。


「ん?これはなんだ?」


テムダが足元の薄い水色に輝くビー玉のような物に気がつく。


「この地域の特産物の石とかかな~?」


サクヤも興味津々だ。…賢い三人は、まわりの風景に夢中で、二人の疑問は聞こえていない。


「拾って…おっとしまった」


ビー玉?を拾おうとした際に、足元にあった別のビー玉?を踏んでしまったテムダ。

すると…?



バッゴオオバゴンバゴオオォン…

踏んだビー玉がすさまじい音をあげて爆発し、近くにあった二個ほどにも誘爆した。


「!?どうしたの!?」


さっと爆心地を見る三人。近くで見ていたサクヤがガタガタと震えている。


「テ…テムダが…爆発した…」


ちなみに爆発したのはビー玉である。


「……宝玉の実の…種を踏んだね…。…色は何色だった……?」


「え、えっと、きれいな水色だったよ!」


「じゃあ音と煙だけよ、きっと。乾燥してなくて助かったわね、テムダ?」

煙に向かって問いかけるカティ。


「ゲホゲホッ…なんなんだ…あれ…?」


大爆発は本当に音と煙だけだったらしく、テムダにダメージはない。


「宝玉の実の種よ。理由は知らないけど、強い衝撃を与えると爆発するんだって。乾燥してなかったから威力はなかったけど、乾燥してたら簡単に吹き飛ぶわよ?」

リアルに怖いことを言うカティ。


「お、おう…わかった…」






「これで三個目だな」


「…なかなか見つからないものね…」


歩きまわって二十分ほど。見つけた宝玉の実は三個。かなり少ないと言える。


主な原因は二つ。一つは宝玉の実の性質である。木になっている間は常にみずみずしいが、何らかの理由で地面に落ちてしまうとかなりの速さで枯れて種になる。種の危険性はさっきのやりとりでわかっているであろう。それを恐れた先人は一本の木には一つの実しかならないように改良?したのだ。

もう片方も宝玉の実に原因があるといえばある。単純に、美味いのだ。その味を求めて、様々な魔物がやってくる。

その二つの理由があってなかなか見つからないのだ。


「……三個あれば十分だろうし…帰ろうか……」


「そうだね…ってわわっ!」


「キャキャッ!」


猿が一匹、目の前に現れる。


「わあ~、面白そうなお猿さん~」


「…アズラ、わかってる?」


「うん…《ライトニング!》」


ヴァンに言われた通りに、猿を速攻で撃退しようとするアズラ。雷が猿めがけて落ちる。


「ギャッ!?」

感付いたのか、寸前で雷を避ける猿。


「ギャーッ!ギャーッ!」

大声でわめく猿。その声に反応してたくさんの猿が集まってきた。


「ちょっと…やばいわね…」


「それは…言わなくても…」


「キィーッ、キッ!」


集まった猿たちがリーダーっぽいやつの号令で、一斉に何かを手に持つ。


「ちょっと待て!あれさっきの爆弾じゃねぇか!?」


猿たちが手に持ったのは、まぎれもなく宝玉の実の種だ。しかも乾燥している。

この猿たちはワイズモンキーと呼ばれる魔物で、かなりの知能を持つ。爆弾の扱いなど朝飯前だ。


「ギャギャッ!」


猿の内数匹が種を投げる。


「「「「「《メガ・シルド!》」」」」」


五人はメガ・シルドで対応する。


「うえっ!?《メガ・シルド!》」


種爆弾の威力は鮮烈で、数発で盾を壊す。五人全員が盾を作り続けないと防ぐことができない。

消費するものなので耐えれば解決…とはいかず、猿たちは入れ替わり立ち替わりで常に投げてくる。近くに巣でもあるのか、投げきった猿は一時撤退し、またすぐに戻ってくる。

かなりのピンチだ…






「くうっ…このままじゃ…《メガ・シルド!》」


戦闘が始まって数分。未だに圧倒的な劣勢に立たされている五人。簡易術式でもわずかに詠唱が必要なので、ほかの魔術で反撃もできない。


「はぁっ…アタシ、もうダメかも~《メガ・シルド》」


サクヤの限界が近づいている。一人でも欠ければ一瞬で全滅の危機に陥る。


「なにか打開する方法はないの!?」


(願いを、叶えよう…)


「え!?」


(奏でるは二つの旋律、歌唱も、詠唱も、同じもの…)


「はい…」


(力を望め!そして奏でよ!力の名は、二つの歌!)


「守ってみせる…二つのデュアル・レシーテ!」


「《メガ・シルド!》…カティ!?」


「大丈夫よ、《メガ・シルド!》」


「俺も…そろそろやべぇかも…」


「……ッ…《メガ・シルド》」


「…《メガ・シルド!》《サイクロン!》」


「!?」


カティが二つの術式を同時に宣言した。しかし、サイクロンの属するのは術式8。カティはまだ簡易術式は7のはずだ。

しかし今重要なのはそんなことではない。両方完全に宣言に成功している。つまり、防御しながら反撃に成功したのだ。


「ギャアッ!?」


強い風のせいでいくつかの種爆弾が猿たちのもとに返った。衝撃を受けた種が一つ、爆発し…


ドガバガンズドーン!と、大量に誘爆した…


その煙が晴れた時には、猿たちの姿はもうなかった…

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