第十章、最後の薬学、開始
「じゃあ今回の薬学では『万能薬』を作ってもらうわね」
ほとんど残っている授業が合わなくなってきた五人。だから最近は授業は好き勝手に一人で受けていた。
ただ、五人とも同じ量だけ受けていた授業がたった一つだけ残っていた。
それが…
「…本気で受けるのか…?」
「何作るか知らないけど、受けておいて損はしないでしょう?」
「今回は真面目に人一人簡単に殺せる薬とか作りそうじゃねぇか!」
「……それはそれで面白いからいいけど……」
「でも薬作るのって面白いよね~?」
「嫌なら受けてから放棄すればいいでしょ?五人で受けよ?」
「そうよ、諦めなさいテムダ」
「はぁ…わかったよ…」
「じゃあお姉さん、薬学4、五人」
「はい、了解いたしました!」
薬学だった…
しかしミランダはいつもと違う。いや、いつも通りと言うべきか?
「なーんのおもしろみもない薬だけど、効果だけは一級品だから、きっと役に立つわ」
「先生…?」
ついに一人の生徒が質問する。
「なぁに?」
「今までとずいぶん違う授業の話し方ですけど、何かあったのですか?」
「え?別にないわよ。…あぁ、そういう事ね。材料は、乾燥させた満月草、できる限り綺麗な水、それと水晶の樹海にある『宝玉の実』です。作成の手順に関しては――みたいなしゃべり方じゃないって事でしょ?」
「あ、はい」
「だって薬学4受ける人なんてここまでの私の暇つぶしに懲りてない人ばっかりだし、そもそもほぼ全員私の地の性格知ってるんだもん。あの授業用のしゃべり方、けっこう疲れるのよ?」
「は…はぁ…」
「ま、そんなとこよ。じゃあ一通りの説明はしたからがんばってね~♪」
手をひらひらと振りながら部屋を出ていくミランダ。けっこう重要な事もさらっと言ったので案外面倒だ。
「あ!?放棄の話は!?」
「きっと無理でしょ?諦めなさい」
「……満月草は自分がいくつか持ってるから…水と…宝玉の実…だけだね……」
「水晶の樹海って森林エリアだよね?それなら水はヴァンのところでわけてもらえると思うよ」
「じゃあ残るは宝玉の実ね。オーケー、行きましょ」