狂犬の待つ部屋
「やあっ!」
普通にその辺りをうろついていたアブソーバーを零で斬る。
「アブソーバーなんかがうろうろしているなんて…なんて地域なんだろう…」
「…もう慣れたけどね…」
今までにも、溶岩地形の近くにいるフリーズプリンセスや、アルバイトで討伐したものの二倍程度の大きさのビッグベアなど、もはや悪夢としか形容できない魔物ばかりと戦ってきた四人(三人?)。
慣れたということにもうなずける。
「ごめんなさいね…私が戦えないばっかりに…」
とても申し訳なさそうに謝るソフィア。確かに今まで、ソフィアを守るために何度か非効率な行動をとった三人。当然、負担も大きい。
「大丈夫よ。悪いのはソフィアちゃんのおじいさんなんだから。帰ったら『今度から実験台にするなー!』とでも言ってやりなさい」
「はい!ありがとうございます!」
「んおっ!あれは!」
「なになに?」
落ちていた一つの魔法武具に駆け寄るテムダと、それを追いかけるカティ。
「槍の魔法武具じゃねぇか!よっしゃあ!」
嬉しさのあまり踊り出すテムダ。
しかし調子に乗った事が完全に悪い方向に状況を傾けた。
「テムダ!転移のワナよ!」
「なにっ!?」
調子に乗ったテムダは近くにあった転移のワナを踏んでしまった…。しかも、普通の転移のワナではない。
「えっ!?もしかして…私も!?」
ワナは意外と広範囲に及び、近くにいたカティも巻き込んだ!
「アズラ!ソフィアちゃん!」
「カティ!」
「カティさん!」
そして二人の姿は消えてしまった…
「ソフィア、二人を探そうと思うんだけど…、大丈夫かな…?」
「…はい、たぶん大丈夫です」
「まぁ、いざとなったら俺を呼べ」
レムが猫型になる。
「わあーっ!とってもかわいい猫ちゃん!」
「………」
レムを思いきり抱きしめ、かわいがるソフィア。
「…ソフィア、やめてあげて。レムが嫌がってるから…」
「あれ?そうなの?」
素直に離すソフィア。
「まったく…何がしたい…」
「まぁそう言わないで。ほら行くよ」
「はい!」
「あぁ…」
…しかしその出鼻もそうそうにくじかれる事になる…
カチッ、というおなじみとなってきた音が鳴る…
「しまった!ワナだ!」
二人と一匹の足元にワナが浮かぶ。転移のワナの様だが、少し様子が違う。
「ちっ…厄介なワナを踏んでくれたな…」
「レム、このワナは!?」
「親玉転移のワナだ。強力な魔物の部屋に飛ばされるんだよ」
「えぇっ!?」
「ほら、覚悟しろ!」
その場から消え去る二人と一匹。
飛ばされた先の部屋には…?
「ガルルルル…」
学園内でも屈指の強力魔物ケルベロス。それの下位種、オルトロスが待ち構えていた…。