運命の出会い
「あれれ?もしかして『ロスト』なくなっちゃった?」
「ロスト…?」
聞いたこともない…そもそも、この世界の一般語ではないものがなくなったと言う銀髪の少女がいた…。外見年齢は十代後半くらいだが、十分に女性らしい雰囲気がある。
その少女を見てさっとテムダは考える。
(同時に入らないと別の空間に飛ばされる→一緒に入ったのはアズラとカティだけ→その他は魔物→この少女は魔物!)
…間違ってはいないが、安直な式である。
(なら、先手必勝!)
錬金術で槍を造り、少女に向かうテムダ。
「うおりゃっ!」
「!?くっ、使いたくないけど…《ロストブレイド!》」
少女は寸前で大剣を具現化し、槍を受け止める。カティと大差ない体格のどこにそんな力があるのかわからないが、完全に体育会系のテムダを押し返す。
「やぁっ!」
完全に弾き飛ばされるテムダ。着地点でさっと受け身をとり、速攻で宣言する。
「《メガ・ブラスト!》」
大きな無色の魔法弾が少女に向かう。
「もう、物騒な世界ね!《ロストバリア!》」
少女が宣言すると薄い壁が現れる。その壁は脆そうな見た目とは裏腹に、メガ・ブラストをいとも簡単に防いでしまった。
「なんだこの魔物…」
妙な剣や壁を作り出す少女に疑問を覚えながらも、再び打ち合いに入るテムダ。
少女もそれに応戦する。
「何、この音…?」
テムダを探す二人の耳に、金属の衝突音が聞こえる。
「テムダが魔物と戦ってるのかもしれない!急ごう!」
「えぇ!」
1分ほど打ち合っていると、少女の剣に変化が現れた。具体的には少しずつ透明になり始めている。
「!?『ロスト』がなくなり始めてる!?」
そう言っている間も打ち合いは続き、少女の剣はどんどん消えていく。
そして…
「あっ!」
完全に少女の剣が消え去ってしまった…
「もらったぁ!」
テムダが槍を突き出す。
死を覚悟し、目を閉じる少女。
そこに…
「「《パラライ!》」」
二つの魔術が飛んでくる。
「うおっ!?」
「きゃっ!」
その魔術はそれぞれに当たり、その動きを止める。
「女の子をいじめるなんて、何を考えてるのテムダ!」
「状況を考えろ!魔物だろこいつ!」
「どう見たって魔物じゃないでしょ!魔物ならもっと魔物らしい外見してるじゃん!?」
「あ…もしかして…精霊…?」
「あの…」
言い争いをする三人に対しておずおずと発言する少女。
「「「なに!?」」」
「…私、人間なんですけど…」
「「「………」」」
一瞬の沈黙の後…
「「「えぇーっ!!!」」」