鬼が蔓延る世
気がつくと俺は暗闇の中ベッドの上で寝ていた。
どういう状況なのか全く理解できなかった。ここがどこなのか今まで何をしていたのかそしてなぜベッドで寝ていたのか。起き上がってみようとするが、風邪で寝込んだ時のように体が重く、力が入らない。なんとかベッドの脇の柵を掴んで上体を起こし、暗闇の中目を凝らして周りを見た。するとここがベッドが6つ並べられた病院の部屋だということがわかった。そして俺はドアから一番遠いベッドに横たわっていたようだ。人がいる気配もしないので、力を振り絞って立ち上がり、ベッドの柵をつたってドアの方に歩いて行った。そしてドアを開け、顔を廊下へと覗かせるが、見渡しても人の気配は全くしない。少し気味が悪いと思った。廊下の長さから考えると、かなり大きい病院だということがわかる。しかし、院内は秒針が動く音すらせず、廊下を照らすのは窓から漏れる月光だけだった。ハッとして後ろを振り返って部屋の窓を見ると、いくつかのマンションやビルが見下ろせるが、そのどれもが光を放っておらず、ただ月光に晒されてぼんやりと形を写していた。おかしい。景色を見る限り、ここは繁華街に近い場所にある総合病院だ。それなのにこんなにも辺りが静まり返っているのは理由のつけようがない。不審に思いながらも、俺は状況を確認するために廊下に出て、端にあるエレベーターまで歩いた。エレベーターには13階まで階数が表示されていたがそのどれもが光っておらず、試しにボタンを押してみても、反応している素振りは見せなかった。仕方がないので横の階段から下に降りた。