テンプレのテンプレ盛り
「こ、これは回復魔法!?しかもこの光の量は一体…」
騎士団長のフィリップが驚愕の声をあげる。光が収まるとちぎれかけていた腕は
元通りになっていた。
「旦那、アんた回復魔法まデ使えるノか」
「ああ、何とか使えたな。それよりもきちんと治っているか?」
そう言って異常がないか確認する。
「大丈夫ダ。むシろ以前よリも調子がいイくらいダ。旦那にハ幾つモの借りガでき
テしまッたナ」
どうやら問題ないようだ。しかし今回といい前回といい俺が魔法を使える条件は
多分一度見たものを使う事が出来る様だ。他にも何か条件があるかもしれないが装
備と能力は破格と言っても過言ではないだろう。そう思っていると
「無事に治療は終わったのか?」
後ろから今までとは違う気品のある声がした。
「これは伯爵様!まだお出になっては危のうございます。早く馬車の方に…」
「なに、盗賊共はお前たちが追い払ったではないか。無論そちらの冒険者達の加勢
もあってのことだがな。失礼自己紹介が遅れたな、私はこの地を治めるルーカス・
ルゥ・フォッテンだ。力を貸してくれて礼をいう」
騎士団長の言葉を遮って頭を下げて礼を述べる伯爵。周りが少しざわつく、これ
は異例の事なのだろう。
「マサツグ・ミナカミといいます。私達の方も襲われたので応戦したまでです。そ
こまで礼を言われる事ではありません。
それに頭目と思わしき男を打ち漏らしてしまいました。奴らが再び襲ってこない
とも限りません。騎士団長殿が仰る通りまだ安全とはいいきれませんよ」
仮面を付けたままでは失礼だと思い、鬼面を外し自己紹介も済ませておく。
「フフッ、マサツグ殿もフィリップと同じ事を言うのか。確かにここに留まるのは
得策ではないな。直ぐにここを発つぞ、テンペには使者を出し本日の視察は中止の
むねと賊の警戒にあたるよう伝えろ。領から兵士の派遣も忘れずにな。
あと緊急の為、急ぎ帰還することも伝令を頼む。亡くなった騎士たちは後で回収
にこさせよう」
「「ハッ、直ちに」」
テキパキと指示を出す伯爵。何人かは地に倒れ伏しピクリとも動かない。いかに
戦いが激しかったかを思わせる。彼らをこのままにしておくのは忍びないが主を守
るのが騎士の務め、両手を合わせ冥福を祈る。
あと予備の馬具を借りて盗賊共の馬を馬車に繋ぐ。これで馬車を引っ張らなくて
すむのは正直助かった。
「御者は私に任せて下さい。戦いでは役に立ちませんでしたからね、せめてこの位
はさせて下さい」
やる気満々のソルトに御者を任せる。シュガーもできるみたいだが引き続き子供
達の守をしてもらう。
ミックとミュラは馬に乗れたので騎乗してもらい、ギランは御者の隣にトリトス
は後ろにしがみついている。さて俺はどうしようかと考えていると
「ところでマサツグ殿、よければ私の馬車で道中あった出来事を聞かしてはくれん
かね。ここ最近あんな大きな盗賊団等見たことがないのでね」
「それは願ってもない事ですがいいのですか?見ず知らずの私を馬車に乗せて」
正直ありがたい申し出だ。馬には乗れないし最悪走ってでもついていくしかない
かなと思っていたところだ。
「なっ!伯爵様いけません。マサツグ殿なら私の馬の後ろにでも乗ってもらうこと
も…」
「まあまあ良いではないか。馬車の旅は中々長い。彼の旅の武勇伝を聞いてる内に
領内にもつくだろう。主のささやかな我儘を受け入れてくれ」
「ハア~~~。仕方のないことで。マサツグ殿、恩人にこのような事は言いたくは
ないが道中くれぐれも失礼のないようにしてくれ」
「ああ、分かった。ただ伯爵殿が満足のいく話ができるか自信はないが気をつけよ
う」
彼からしたら伯爵の身が心配なのだろう。正直馬車よりも馬の後ろの方が気が楽
だが伯爵に手を取られ半ば強引に引きずりこまれる。
「改めて礼を言わせてもらうぞマサツグ殿。正直もうここまでかと思っていたとこ
ろだ。ところでここら辺では見ない鎧だな。旅の目的はおありかな?」
「いえ、頭部に衝撃を受けて気が付いたら森の中にいたのです。運良く街道に出ら
れたと思ったらグレイウルフの群れに襲撃されている奴隷商人達がいました。
しかし、私が駆け付けた時には護衛の兵士もろとも既にこと切れておりました。
かろうじてグレイウルフを打ち取り助かったのは奴隷達11人のみです」
「ほう一人でグレイウルフを…先程といいかなりの腕前の様だ。どうだ、我が騎士
団に来る気はないか?今なら部隊長の地位も約束するぞ」
どうやらかなり気に入れられた様だ。だだ騎士というだけでなく部隊長という事
から破格の待遇だろう。安定を求めるのであればここに就職するのも1つの手であ
るが、そいつは最終手段だ。
それに世界の事が殆ど分かっていない状況なのでまずは見聞を広めておきたい。
「自分をそこまで高く評価してくださり誠に恐縮です。しかしまずは冒険者を目指
してみようと思います。それと伯爵殿に一つお願いがあります」
願いというところで一瞬伯爵の表情が鋭くなる。
「ふむ、一体どのような頼みなのだ」
「はい。それは11人の奴隷たちの解放です。皆を自由にしてやりたいのですが、
私では力不足でして…。そして可能ならば彼らの仕事も斡旋して頂ければ助かりま
す。ちなみにこれが全員の契約書です」
契約書を伯爵に差し出す。暫く伯爵は書類をパラパラとめくっていたが
「この程度の額なら何とでもなる。職の方も本人達の希望を聞いて紹介いたそう。
もちろん故郷に帰りたいと願う者がいれば責任を持って送り届けよう。それよりも
マサツグ殿自身の望みはないのか?」
そうは言われても急には思いつかない。そもそも今言った事が自分の願いだった
ワケで…う~んと唸って一つ思いついた。
「それでは冒険者を始めるにあたって何か有利になる事をお願いします」
「それならギルドの方へ私から紹介状を書いておこう。本来ならFランクからのス
タートとなるがDランクから開始することができる。無論試験をパスできればの話
だが、君の実力なら問題あるまい」
「有難うございます。無事合格できるよう努力いたします」
試験有りきとはいえ、いきなりDランクからスタートできるのは悪くないかもし
れない。
暫く伯爵領の事や家族の話で時間は過ぎ、特に警戒していた襲撃もこれ以上はな
く真夜中であったが無事領内に辿り着く事ができた。
正月休みも終わり連載のスピードも緩やかになりますが
可能な限り早めに投稿いたします。
次回は伯爵家の内情が中心となります。