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現代SAMURAI異世界を斬る  作者: セイホウ
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竜虎合い打つ

 突然話かけて来たので思わず聞き返す。


「喧騒って、分かるのか?」


「兄ちゃん、オレにも聞こえたぜ」


 そう言ってカイが馬車から身を出してきた。


「ウェアウルフは耳ガいい。どノ様な音か分かルか?」


「何やら喚いて怒声も聞こえます。あと剣戟のような音も」


 ウーム、どうするか。迂回しようとすれば馬車を捨てねばならないし、戻るにし

ても先程の狼達と鉢合わせするかも知れない。一応元来た道にも町はある。ここま

で2回野宿したそうだが…


「旦那、ドうすル?」


「日も傾きかけている。夜になる前にはテンペについておきたい。戦闘になるかも

しれない。皆疲れているだろうが気を引き締めてくれ。敵いそうになかったら少々

惜しいが、馬車を捨ててソレを囮に使って森に逃げ込むぞ」


「…分カった、それでイこう」


 子供達を落ち着かせる為、シュガーを馬車に入れて道を進んでいく。すると今俺

達が引いているのよりも立派な馬車を中心に、騎士と思わしき者たちとそれを取り

囲むように如何にも盗賊ですといういでたちの者が見えてきた。


「こりゃマズイですよ。思ったよりも数が多いですよ」


 ソルトが若干声を上ずりながら話かけてくる。だが無理もない。騎士たちが10

名程度なのに対し盗賊共は3~40人位はいる。向こうも此方に気付いたようで何

人かは此方に向かって来る!


「これでも喰らいやがれっ!」 「ハアッ!」


゛シュババッ゛と風切り音がしてミックとトリトスの矢が盗賊共に襲いかかる。2

本共上手く当たったようで馬から転げ落ちる。自分も何か遠距離攻撃が出来ないか

と思い、村雨をバット代わりに適当な小石を拾ってノックの要領で振ってみる。す

ると


゛ゴオッ---゛


 という音と共に刃のようなものが現れ盗賊を切り倒してゆく。いや、なぎ倒すと

言った方が正しいか。グレイウルフが使っていたのが偶然とはいえ発動してしまっ

たみたいだ。因みに小石は当たった瞬間真っ二つになって明後日の方向へと消えて

いった。


「思ったよりも威力が高かった。使う時は味方に当たらないよう注意しないといけ

ないな」


 俺が今の一撃に対して考慮している余裕はあったが、相手方はそうもいかなかっ

たみたいだ。


「気を付けろ!向こうにも魔術師がいるぞ!」  


「あ、足が~っ」


「いてぇ、いてぇよーー!」


 如何やら先程の攻撃で敵は浮足立ったようだ。これならいける!


「オメェら何やってんだ!オイッ、何人かは俺と来い!」


 そう言いながら頭領と思わしき虎の獣人が此方に向かって来た。




 ブラッド  人虎族ウェアタイガー

年齢 29  性別 男  属性 風  Lv 21




コイツ思ったより早いぞ。それに一直線に俺の方に向かって来ている!


「フンッ!」 


゛シュバ゛と音を立て咄嗟にトリトスがブラッドに対して矢を放ったが、少し体を

よじっただけで速度は落ちない。俺も先程の攻撃を試みる。


゛ゴオッ---゛


 再び風の刃が奴を襲うが、まるで予見したかの様に上へ跳躍しそのまま手にした

拳刃カタールで切りつけてくる。だが文字通り横槍が入りブラッドは攻撃から防御に切り替

え、槍を受け止め後方へ飛んだ。ちなみに一緒についてきた連中は何人か巻き込ま

れ地に倒れ伏していた。


「…邪魔しねぇでもらおうか、トカゲ野郎」


「オ前の相手ハこの俺ダ」


 鋭く槍を構え直しトリトスが言い返す。


「ハッ!面白れぇ、直ぐに後悔させてやるよ」


 言うやいなや今度は左右にステップを踏みながら飛びこんで来る。しかし小刻み

ながらも鋭い突きに思うように攻め込めないようだ。


 ギランは両手にメイスを持ち、ミュラはブロードソードと木製のラウンドシール

ドで応戦している。ミックは弓で援護をしてくれる。お、また一人当てた。結構腕

が良いなあいつ。


 そしてソルトは…ショートソードを持ってオロオロしている。まあ仕方ないね、

戦い苦手だと言ってたし。


 かく言う俺も現在3人を相手に戦闘中だ。一人は人間の様だが他二人がオークに

ケットシーという組み合わせだ。先程から何人かは倒してはいるがまだまだ数的不

利は否めない。それに馬車の方には向かわせる訳にはいかないので速攻で片をつけ

るべく動く。


 自分が狙われていると感じたケットシーは回避行動に移る。その間他の二人が左

右から襲い掛かる。


「残念だが遅すぎるぜ」


 直ぐに二人を振り切り相手の剣ごと切り捨てる。血飛沫を上げながら崩れ落ちる

のを確認することなく次の盗賊を攻撃する。


゛ズバッ゛


 胴を切り裂かれ口から吐血しながら2人目も崩れ落ちた。最後に残ったのは足が

遅かったオークだ。コイツは走りながら手にしたこん棒で殴り掛かってきたのだが

如何せん大振りな為軌道は読みやすく容易くかわすことができた。お返しとばかり

にこん棒を持っている手を切り落とす。


「ぐひゃ~!お、俺の腕が~」


 ゛ジワリッ…゛呪いの効果で切断面が黒く変色していく。慌てふためくがただで

さえ遅い動きが更に鈍くなる。


「て、てめぇ何しひゃがったぇ…」


 最後のほうは呂律も回らないようで聞き取りずらい。返答代わりに脳天めがけて

村雨を振るう。゛ズバッ゛と分厚い体のオークですら易々と切り裂く。皆の加勢に

行かねばと思い駆け出すが直ぐに新手が行く手を阻む。


「そこをどけーーーっ!」



       ---ブラッド視点ーーー



「チッ、鬱陶しい槍だな。全然近づけやしねぇ」


 上手く攻め込めず悪態を付くが無理もない。最初はただ単純に獲物が増えただけ

と思っていた。貴族の馬車には劣るがそれなりに立派なうえ護衛の兵士の数も少な

く装備もあまり良さそうにはみえない。そのうえ女までいる。


 ところが襲い掛かってみればどうだ?はじめに送り出した手下は矢と魔法であっ

という間に壊滅。不甲斐ないと思いつつ自身で第二陣を率いるも魔法使いは仕留め

られず逆に此方ばかりが倒されている。


 しかも貴族の方も後一歩というところまで追い詰めたというのに、手薄になった

ため騎士たちが盛り返してきており不利になりつつある。おまけに自分はリザード

マン相手に釘付けにされている始末。


 これ以上被害が出る前に撤退するべきか。しかし目の前の大きな獲物は諦めるに

はあまりにも惜しい。どうにかならないものか。その時


゛ボキン゛


と何かが折れる音がした。


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