7.見舞い(下)ーロバートー
ロバートがマリアンヌを見舞ったのは、三日後のことだった。
妹も行きたがったが、病人を見舞うのが目的だったため、今回は留守番となった。
まだ、田舎では馬車が当たり前の中、チェスター伯爵家の所有する自動車で、あまり整備されていない道を通りながら、ロバートは静かに景色を眺めることができた。
ブルック男爵家が持つのは、農業中心の小さな領地だった。
長閑な田舎町といった雰囲気で、特に貧しいというわけではなさそうだった。
男爵家は領地の管理のみで、他に収入はなく、貧しくはないが、裕福とは言えないだろう。
ただし、貴族としての話で、一般の領民から見ると充分に裕福と言える。
男爵家に到着すると、執事に出迎えられた。
応接間で待つと、
「わざわざお越し下さり、ありがとうございます」
男爵が挨拶に現れた。
「いえ。マリアンヌさんのお加減はいかがですか?」
ロバートは男爵に向けて、会釈をした。
「今日は調子もいいようで、ぜひ見舞ってやって下さい」
男爵は穏やかに微笑んで、それから、
「案内を頼む」
執事に向けて促した。
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「失礼します」
執事に案内されて、マリアンヌの部屋に通されると、
「まぁ、ロバート様!お会いできて光栄です!」
ベッドボードに背を預けたマリアンヌが、両手を広げて待ち構えていた。
隣には、ジョセフィーネが寄り添っていた。
美しい姉妹だった。
二人とも顔の作りは違ったが、どちらも共に美しく、ロバートには一対の月の女神のように見えた。
「こちらこそ、光栄です」
ロバートはマリアンヌに歩み寄ると、その両肩に軽く手を置いた。
ふと、視線を下げるとジョセフィーネと目が合った。
ほんの一瞬だったが、見つめ合うような感じになってしまい、お互いに照れた。
三人でお茶を飲みながら、長い時間とはいかなかったが、楽しい時を過ごした。
ジョセフィーネのマリアンヌに向ける優しい顔、自分に向けるものとは違うジョセフィーネの顔が見れて、ロバートはそれも楽しかった。