表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/12

5.願いーマリアンヌー

 漠然とではあるが、死というものを感じてはいた。

しかし、11歳の少女であるマリアンヌにそれを想像することは恐ろしく、また、理解することは出来なかった。


朝が訪れないかもしれないと、恐ろしくて眠れない 、そんな夜は幾度もあった。

声を殺し、独りで泣くこともあれば、独りでは堪え難く、


「怖い夢を見そうで、眠れないの」


と、ジョセフィーネに溢すこともあった。

そうすると、ジョセフィーネはそっと頭を撫でてくれ、


「一緒に眠る?」


と、優しく微笑んでくれた。

マリアンヌが縋るようにジョセフィーネを見て頷くと、


「内緒よ」


と、より一層目を細め、この上なく優しい顔で微笑んでくれた。

そうして朝までジョセフィーネは、マリアンヌと大して変わらない小さな体で、精一杯手を伸ばし、まるで母鳥のように暖かく包み込んでくれた。


「大好き!ジョセフィーネ」


口ではそれだけしか伝えられないが、言葉では言い尽くせない、胸いっぱいの溢れる愛情があった。

だから、自身の未来を思い描くことは出来なかったが、代わりにジョセフィーネの幸福な未来を願った。

万が一自分が居なくなった未来でも、ジョセフィーネが笑っていられるよう願った。



マリアンヌはベッドの中で、微かに届くピアノの音に耳を傾けていた。

ソフィアとジョセフィーネが、ピアノのレッスンを受けているようだった。

ソフィアが弾くには難し過ぎる曲なので、きっとジョセフィーネが弾いているのだろう。


(アームストロングって・・・確か)


マリアンヌは、ジョセフィーネから聞いたロバートのことを思い出していた。


(お隣の伯爵様だったわ)


アームストロング家は、隣接するチェスター領を治める伯爵家だった。

チェスター領はブルック領とは違い、大変豊かで大きかった。

伯爵家の現当主は事業家で、その資産も相当なものだった。

誕生会に招かれて、アームストロングを名乗るのであれば、その伯爵家の子息に違いないはずである。


不意に、マリアンヌは目を輝かせた。


(いい考えだわ!)


マリアンヌは自分の思い付きに、胸を躍らせた。

一刻も早く行動に移したくて、落ち着かなくなって、近くに居た侍女に声を掛けた。


「お父様がお帰りになったら、お話があると伝えて」


「すぐよ!」


マリアンヌは興奮して、掛け布団の端をギュッと握った。


程なくして、マリアンヌの元をサイモンが訪れた。


「お父様、お願いがあるの」


滅多にない娘の願い事だ。

きっと叶えてくれるだろうが、僅かに不安はあった。

ソフィアに関心が向いている分、マリアンヌには向けられなくなった愛情。

決して無くなった訳ではないが、以前とは異なる疎外感があった。


「何かな?」


しかし、父の優しい問い掛けに安堵した。


「チェスター伯爵様のご子息、ロバート様にお会いしたいの」


マリアンヌは、両手を組んで真摯に頼んだ。


「それはまた、どうして?」


一度も話題にしたこともないロバートに会いたいなど、不思議に思われるのは当然だろう。


「ソフィアのお誕生会にいらしたでしょ?お見かけして、一度お話してみたいと思ったの」


サイモンはマリアンヌを暫く見つめ、


「わかった。手紙を出そう」


そう言って微笑むと、


「あまり期待しては駄目だよ」


優しくマリアンヌの頭を撫でた。


「ありがとうございます。お父様」


小さな頃に戻ったようで、マリアンヌは嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ